第18話

物干しと室外機の設置されたベランダに出て 

手摺を強く掴みながら片手を伸ばしてみると 

肘から先が暗闇に溶け込み見えなくなった

 

物干し竿を使い 

闇の奥を突いて確認してみるが 

隣壁に届く気配がなく

身を乗り出し上下左右から 

別の部屋が見えないかと試みるが  

何も見えない   


新宿の夜がこんな暗い訳がないので 

絶対に地下空間のはずだ 


階段をどれだけ上っても 

地上階に出れないトリックは説明出来ないが 

多分 

エッシャーの騙し絵みたいな階段構造に 

なっているのだろう 


室外機の音が全然、反響していない 

 

音が返って来ないほど 

だだっ広いという事か 


そんな場所が 

地下鉄の包囲網に引っかからないのも 

不思議だ

  

助けを求めて叫んでみたが 

声すら闇にかき消された 

 

もし誤って落ちたとしたら  

永遠に落下し続けそうな 

深い深い闇 

考えただけで心臓が高まり胃がすくむ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る