第4話

閉鎖感に少し緊張しながら 

振り返り

閉ボタンに伸ばしかけた 

指先が寸で止まる

 

階指定ボタンが一つしかなく 

階表示も、どこにもない

 

戸惑っている間にドアが閉まり 

再び開けようかと迷っていると

ふとメールの「直通」という文字を思い出し 

バネ式の丸ボタンを押した 

 

モーター音が聞こえ 

振動しているのが伝わる 

暗闇から急に昼光照明を浴びたものだから 

まだ慣れない目をしばたかせ 

反射する四方の狭い壁から 

目を逸らす様に携帯を取り出した


「そのまま、しばらくお乗り頂き、開いた階の廊下を進んで下さい 

 

部屋があります」 

 

タイミング良いメールを見て 

反射的に筋肉が硬直する


アナログボタンのくせに 

天井には 

最新のセンサー型監視カメラが備わっている


その為 

リラックスしようと努めるのだが

心の何処かで意識してしまい

独り言を我慢し 

姿勢を正してしまう 


無意識に出た溜め息が

不気味に反響し 

少し驚いてしまった

僅かながら胸騒ぎで 

お腹が縮こまる


外から聞こえる 

起動音が静まり 

片開きドアが開くと 

壁に囲まれた廊下が続いていた

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