第3話

アルコール消毒し 

中央に置かれたクリップボードの九列目に  

名前を記入すると

脇のミニカレンダー前に積まれた 

ポケットティッシュを拝借する  


わざわざ呼び出しベルを鳴らすのも 

気が引けるので 

天井監視カメラを意識しながら  

辺りを見回す仕草をし

受付係が来る事を願った 


受付左奥にトイレへ続く通路があるが 

まだ気分ではなく 

左向こうの非常階段に並ぶ自販機で 

冷飲料を買うほど 

もう暑くもない

  

せめて会場が何階か分からないかと 

案内板を探しに右側奥の通路を覗いてみるが 

薄暗い先には機械室の扉が 

あるだけだ


まさか右のバルコニーで 

調査もあるまいし 

そもそも誰もいない


時間が気になったが 

時計が見当たらないので 

自分の携帯で確かめると 

会場からのメールが届いていた 


「本日は会場調査アンケートにお越し頂きありがとうございます 

 

受付で名前を記入したら 

右の通路からお入りになり

直通エレベーターをご使用下さい」


機械室だと思ったドアがエレベーターなのかと首を傾げ 

非常灯で淡い薄緑に染まる廊下を進むと  

暗くて気付かなかった脇道を見つけ 

すぐにソファの置かれた 

エレベーター前に到着する 


運良く開いていた為に 

駆け込んで中へ滑り込む

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