第4話

「あいたたたっっっっ!」

「おじいさんおばあさん、大丈夫ですか?!」



相次いで夫妻が時を同じくギックリ腰を患ってから。


本格的に15歳の誕生日を迎えた若いレダが、新しく宿屋の主として、レダ亭を切り盛りすることになった。


「いつも済まないねぇ……」

「お前には感謝しているよ?」


「おじいさんおばあさん、それは言わない約束でしょ?


私には命を助けていただいた大恩が、お二人にありますから気にしないで下さいな」


ビシッと明快な明朗会計

キチンと耳を揃えて税も払う


遅延していた借金返済も全部支払い終える


〜不正の痕跡は全くなく誰が見たってクリーンそのものの経営


儲けはどんどんザクザク……!!


幾らだって慎ましく善良な二人に入るにもかかわらず、何故かレダは給金を過分にはとろうとはしなかった。



「!いちばん働いているのはレダじゃ無いか」

「本当にこれだけでいいのかい?」


「では尊いお気持ちだけ戴いておきます

正しい正規の給金では『雇われ店長』はこれ位がこの辺りの相場ですわ?

ですからもう十二分です」



その後も、顔に似合わず超しっかり者の遣り手なレダの発案で、それはもうビシバシ資産をためまくった。


これを元手に、更に腕利きの正直者の料理人を雇い入れる。


ベッドメイクの仕事を担当する働き者の明るいメイドも数人新しく加える


宿は賑やかに〜益々儲かる一方ウッハウハ状態


クルクル働く給仕担当のお陰で、二人のズキズキ痛む身体も随分楽になった


全くーーー!!

明るく優しくかわいい天使のレダが、自分達の元にいなかったらどうなっていたか!!



「じいさんや、こんなにしあわせでいいものでしょうか」

「ほんに幸せじゃのぅ、なぁばあさんや」


老夫婦はまさか自分達が、こんな物心共に芳醇で豊かな老後を送ることが出来るなど全く考えもしていなかった。


幸せで、こんな生活がいつまでも続くといいと涙を流し、子どものように喜ぶばかり




…ーーそんなある満ち足りた、幸福な夜のことだった



2階に住む、レダの部屋の外


窓辺


暗い深い闇の中より、自分を呼ぶ小さな囁き声がした



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