第89話

マロミさんはホースの水を止めながら、そう言ってくれる。


「ええ。優しいのよ、みんな」


 婚約者の一人だけれど、早く結婚する人を決めないとと、わたしは内心焦っているのだけれど……。

 あまり時間が、なさそうだわ……。


「姫様のお決めになったお相手でしたら、わたくしは応援致しますよ、姫様」


「……ありがとう、マロミさん」


 マロミさんはわたしにとって、お母さんみたいな人だ。 マロミさんは優しくて、お料理が上手で、家事も上手くて、本当に尊敬することばかりだ。


「ねぇ、マロミさん」


「はい?何でしょうか?」


「今度、シフォンケーキを作りたいのだけど」


 前に作ったチーズケーキも美味しくてよく出来たけど、今度は違うものに挑戦してみたくなった。

 わたしはあまり料理が得意ではないけど、何か一つ得意な物を見つけておきたいなあ、とは思う。


 もちろん、将来のために。素敵な旦那様に、美味しい食事を作ってあげたい。

 

「シフォンケーキですね。かしこまりました」


「ありがとう、マロミさん」


「いいえ、何なりとお申し付けくださいませ」


 マロミさんは、本当にお母さんみたいだ。

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