第85話

カルナさんからそう聞かれ、わたしは「はい。この子、すごく好きです」と答えた。


「ホワイトタイガーの赤ちゃんも可愛いですけど、カルティナ姫の方が可愛いですよ」


 カルナさんはさり気なく、わたしにそう伝えてくる。


「えっ!?……そ、そんな。そんなこと、ないですよ!」


 カルナさんってば、冗談ばかり言うんだから……!


「いえ。僕にとってはあなたの方が、何倍も可愛いです」 


「……あ、ありがとうございます」


 素直に喜んでいいものなのか迷うけど、ここは素直に嬉しいと思っていいのかな?


「あの、カルナさん」

 

「はい」


「カルナさんは、何が見たいですか?」


 カルナさんが動物が好きだと言っていたから、カルナさんの好きな物を見たいな。


「そうですね。全部見たいですけど……僕はあなたの笑ってる顔が見れれば、それで充分です」


「え?……でもカルナさん、動物がお好きなんですよね?」


 だから今日、動物園に来たんですよね……?


「好きですよ? でも今は、あなたの笑ってる顔を見てるのが好きなので、それを見てるだけでいいんです」


「あ、ありがとうございます」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る