第56話

「あ、お父様?夕食が出来たって〜」

 

「おう、そうか。今行く」


 夜になり夕食の時間になって、わたしはお父様を呼びに行った。


「待たせたな、カルティナ。 食べようか」


「うん。 では、いただきます」


 わたしとお父様は、いつも一緒に夕食を食べるけど、この屋敷では二人では広すぎるなぁと常々感じている。  

 無駄に広いとは、こういうことを言うのだと思う。 


「ん、これ美味しい」  


「美味いな、これ」


「焼き加減がいい感じね」


「そうだな」


 わたしとお父様の食事は、いつも大体こんな感じだ。

 ただ黙々と美味しく食べることが、わたしとお父様の食事の日常なのだ。


「お父様、今日のパンすごく美味しいよね」


「そうだな。美味いな」


「今日のパンは、焼き立てでございます」


「焼き立て?だからこんなに美味しいのね」


 食事はいつも、家政婦のマロミさんが作ってくれる。 マロミさんはもう十年以上もこの屋敷の家政婦をやってくれていて、とても素晴らしい家政婦さんだ。

 料理も美味しくて、家事もスムーズにこなしていて、何でも出来る大ベテランだ。


 本当、お母さんみたいな存在になってる。

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