第52話

「僕は姫、あなたのことが好きだ」


「……えっ!?」

 

 映画のワンシーンみたいなその演出に、わたしは終始、戸惑うばかりだった。


「あ……アレンさん?」


「僕はあなたを心から愛せると思っています、他の誰よりも」


 そう言われるとわたしは、なぜかドキッとして……。


「……あ、ありがとう、ございます」


 そう思ってもらえると……やっぱり女だから、わたしも嬉しいと思ってしまうのだ。

 

「だから姫、僕を選んでほしいんだ」


「……あ、あの、アレンさん?」


 何を言ったらいいのか分からなくて戸惑っていると、アレンさんがわたしの右手の甲にキスをした。


「っ……へっ!?」


「フフッ……可愛いですね、カルティナ姫。早く僕のものにしたいです」


 そして身体をグッと引き寄せられて、そう囁かれたことを思い出すと、なぜか恥ずかしくなってしまう。


「……ダメダメッ!」


 アレンさんに惑わされちゃダメよ、わたし!

 

「カルティナ、どうしたんだ?」


「え?あ、ううん!……なんでもないわよ、お父様!」


「カルティナ。お前の幸せを一番に願っているのは、母さんだぞ」

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