第60話
~麻矢・竜矢~
「寝たか?」
「うん。余程、疲れてたみたい」
「だな。しかし、親離れできんのか?社会人になる時、ヤバくないか?」
「その頃には、凛も普通だから大丈夫!でも、今は駄目。親から離れるべきじゃない。不安定なんだもの。お兄ちゃんだって分かるでしょ?」
「あぁ。でも、見ない間に雰囲気が柔らかくなったな。会ったばかりの頃と全然違う」
「そうでしょう」
「順調なのか?」
「うん。大丈夫みたいよ。でも、凛に知られて。全く!あの馬鹿な奴等が!」
「まぁまぁ。あっちの奴等は必死みたいだな」
「うん。本当は大事にしてたんだね」
「…………でも、俺は許せねぇ。人としてやっちゃいけないことをしたんだ。その罪は何よりも重い」
麻矢の兄である竜矢はハンドルを握り締める。
麻矢は、そんな竜矢をじっと見ていた。
【その罪は何よりも重い】
彼らがしたことはかなりの罪だ。
罪の意識がない彼らにとって今回の行動は滑稽にも思える。
「お兄ちゃん」
「あっ?」
「少し私も寝ていいかしら。緊張してたみたい」
「あぁ。いいぞ」
「ありがとう」
麻矢も凛が近くにいるのに安心したのか力が抜けた。
「着いたら起こすから。安心して寝てろ」
「うん。安全運転でお願いします」
「任せろ」
麻矢もゆっくり目を閉じて凛の手を握る。
【大丈夫。私たちが守るからね】
~麻矢・竜矢end~
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