第25話

「椎名ちゃん。先生が呼んでるけど」



「そうなんだ」



「いや、そうなんだって……………………さっきのナイフの件だと思うけど」



「あら?ナイフ?私、ナイフなんて投げたかしら?」



「えっ?」



「早くお風呂に入りたいな。だから、早く部屋に戻りましょう」



「えっ、あっ、うん」



一応、教師なんだから。


そのくらい、自分でなんとかできるでしょう。


助けるためにナイフを投げたわけではない。


ただ、食事中で……………………



「椎名!この状況はお前しかなんとかできない!この馬鹿な男を!なんとかしてくれ!今、柚月達はいない!別室で食べてる!ここで頼りになるのはお前だけだ!頼む!!お前が欲しいもの買ってやるから!!!なんでもするから!!俺を見捨てないでくれ!!」



別室?


だから、見かけないのね。


それはすぐに助けに来ないね。


だけど、トップだから別室ってこと?


特別扱いってどうなのよ。




「し、椎名ちゃん!あわわわ。ちょっと本当に大変なことに」



白井の声が慌ただしくなり私の前に飛び出してきた。


そして、私の腕を掴んでクルッと方向転換させる。


意外と力があるのね。



「やめろ!馬鹿!んなとこ触るな!」



……………………。



「おっ!いい感じだ」


「言うなよ!」


「俺の方がデカイ」


「威張って言うな!」



アホらしい。


いつの間にかレストランには私達だけになっているし。


みんな逃げたみたいだ。


または、トップを呼びに行ったのか。



「椎名ちゃん。どうする?並木先生が泣きそうだよ。必死で助けてって顔してる」



「そうね。でも、柚月達が来るでしょう。あの人達に任せましょう。こういうものはトップに任せるものなのよ。ほらっ。戻るわよ」


「確かに。そうかもしれない。うん。柚月さん達なら大丈夫だね。そっか。でも、来るまで時間かかるよね?ここで来るのを待つ?いや、それよりも……………………」



何をそんなに悩むの?


お人よしなのかしら。


みんなみたいに行動すればいいのよ。


ブツブツ何かを言っている白井の手を掴んでレストランから出て行く。


そして、エレベーターに乗る時レストランから叫び声が聞こえた気がした。

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