第47話

「何?」



使用人が、私の前に立つ。



「隼人様が、お待ちです」



「お兄様が?こんな夜遅くに?」



「はい。お嬢様が帰るのをずっとお持ちしておりました。ずっと」



「………………分かった」



自分の部屋に戻らないで兄の部屋に行くと女の喘ぎ声が聞こえた。


このタイミングは悪い?


でも、呼ばれたし。


行かないと後で絶対に怒られるし。



「お兄様。凛です」



そう言うと、小さい悲鳴が聞こえてゴサゴサと音がした。


多分、あやめが着替えている音だ。



「入ります」



中に入ると乱れた布団と、顔を真っ赤にしているあやめがいた。


兄は、服が乱れたままの姿で私を見つめる。


ふ~ん。


いい時ではなかったらしい。


始めてばかり?


それは、よかった。



「…………………夕食は食べたか?」



「はい」



「そうか。1週間後、俺の作品の発表がある。凛にも、手伝ってもらいたい。いつものように。裏方での作業だ」



一週間後?


これは……………………



「無理です」



「無理?」



「はい。もう、裏方でも表には出られません」



「なぜだ?」



「私の手は、血で染まっています。綺麗な花を触る手はもうありません。この手で、たくさんの人を血の海に陥れました」



「まさか……………………殺したのか?殺すまではやらないはずだぞ!そんな情報はもらっていない!お前、やりたくないから断っているのか!?」

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