第44話

「うん。裏にいなくてもいいよ。そこに、何がある?凛ちゃんにとって、裏は鳥籠だよ。凛ちゃんは道具として必要で、一人の人間としては必要とされていない。それでも、その場所にいたい?」



道具として私は必要とされている?


私は、人間としては不要?


なら、マスターは?


私を、人間として必要としているの?


マスター達と行くというのは、家を出るということだ。


あの家から。



「俺は、長くここの町にいた。もう、時間がないんだ。凛ちゃんを、ここに残して行ってしまう。死に対して恐怖がないことも知ってるけど、俺がいなくなったら絶対死ぬよ」



マスターがここを離れる?


じゃぁ、この喫茶店はなくなるってこと?


そう。


もう、完全に裏に行くしかないってことだよね。


完全に裏に行くのは別にいいけど。



「………………私は、道具として必要されていて。人としては不要で。裏にいてはいけなくて。ダメなことで。普通ならこのままではダメなの?」



………………なぜ?



「うん。駄目」



「マスターなら、それが分かるの?正しい道というものが」



「分かるよ」



「………………私を連れて行く気でしょう?断っても」



「あれ?分かったんだ」



「前に……………………約束してくれた。私に、笑顔を取り戻す方法を教えてあげるって。その約束が、まだ」

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