第32話
「久しぶりだな。誠也」
来店してきた人の中で一番容姿が整っている男性が声をかけてきた。
黒髪で高級そうなスーツ姿の男性はマスターにゆっくり近寄って来る。
「久しぶりです。悟さん」
入って来た人は、全員で12人だ。
「バイトの子か?」
黒髪の人は、私に視線を向ける。
「まぁ………そんなとこですかね。今日は、人も多いので。お手伝いみたいなもんです」
「へ~ぇ。で?話ってなんだ?」
「あぁ。奥の部屋に行きましょう。凛ちゃんあとはよろしくね?」
私はコクリと頷く。
マスターと黒髪の人は奥の部屋に行ってしまった。
「こんにちは。ねぇ?ビールくれるかな?」
カウンターに片手を置いてビールを注文した男性を見る。
茶髪でマスターより若く見えるな。
この人も先輩なの?
男性はニコッと微笑み席に戻って行った。
ビール…………………
すぐにビールとコップを持ってテーブルに行く。
「どうぞ」
「ありがとう。君、名前は?」
垂れ目で、なんだか甘えん坊な感じがする。
マスターより年上って感じが本当にないな。
失礼な考えかな?
「獅堂凛と言います」
「凛ちゃんだね?バイト?」
「はい」
「へ~ぇ…………………嘘ついちゃ駄目だよ」
えっ?
嘘?
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