第28話

この味噌汁は何?


焦げた味がするけど。


マスターとは大違いだ。


この味で、みんなおいしいって思っているの?


それか、私の舌がおかしいの?



「…………………凛。箸が止まっている。食べないと外には出さないからな。しっかり食べろ」



兄から言われたその言葉。


出さない?


なぜ、そんなこと言うの?


私は、あなたたちを守るために動いているのに…………………



器を置いて真っ白なご飯を食べようとしたときだ。


ブーッブーッと私の携帯が鳴った。


朝から誰だ?


まさか、裏から?


朝からだなんて珍しい。


緊急?


食事中だがしょうがない。


それに、この場から逃げれるかもしれない。


携帯の画面には非通知の表示。


公衆電話から?


怪しいとは思ったがあまり気にしないで出ると『いつまで待たせるんだ!!』という罵声が聞こえてきた。


急な大声に少し思考が止まってしまったが、なんだか聞いたことのある声だ。


誰だ?


男性の声ではあるが…………………


その怒鳴り声は、兄達にも聞こえたらしく箸が止まっていた。



「凛。いったい誰からだ?」



兄に聞かれたが、私は答えなかった。



『何も言わないのか?いい度胸だな』



あれ?


この声って…………………………



『………クスクス………………………いつもの場所で待ってる』



さっきと違って、優しい声が聞こえた。


やっぱりこの声はマスターか。


演技も上手ね。



「はい。今、行きます」



電話を切ってご飯をそのままにして立った。



「凛。まだ、残ってる」

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