第23話

家の中に入ると、使用人がいた。


いつもいる。


いつ帰って来るのか分からないはずなのに。


時には、外に立っていることも。



「お嬢様。明日の朝食の件で隼人様がお呼びです。今すぐにとのことです」



「そう。分かった。もういいから。もう、休んでいいから」



「千那様が電話で、お昼ご飯を食べていないと。そのことについても隼人様からお話しがありますので。しっかりとお叱りを受けて下さいね?いつも、ご飯を食べないからそんなに痩せてしまうのです。身体検査の結果を隼人様にお渡し致しました。その件の話もあるかと思いますので」



使用人は、それだけ言って去った。


千那から聞いたこと、丸々兄に言ったのか。


余計なことをする使用人だ。


黙っていればいいのに。


もっと違う仕事をすればいいのに。


兄の部屋に行くと、電気がまだ付いていた。



「今、帰りました。凛です」



「入れ」



障子を開けると、着物姿で妙に色気を醸し出す兄がいた。



少し中に入って、正座をする。



「遅かったな」



「はい」



「仕事はどうだ?」



「問題はないです」



「千那との買い物は楽しかったか?いつも、暗い場所にいるからな。たまには、いいだろ?」



「はい」



「……相変わらず、無表情だな。少しは笑え」



「…………………ご用件は?」

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