第19話
そして、壁に寄りかかるマスター。
その姿がとても絵になっている。
カッコいい人がすると絵になるって本当だ。
「マスターって、ずっとここで待ってるの?いつもいいタイミングだよね」
「ううん。この時間かなぁって考えて来るの」
「それで、ピッタリなの?」
「うん」
この人、不思議な力でもあるんじゃないの?
「ほらっ。乗って!」
私の腕を掴んで、助手席に乗せられた。
「私、後部座席がいい」
「なんで?」
「前は、危険だから」
「…………事故るってこと?」
「…………マスターの運転は危ない。夜だからって信号無視しまくりだもん」
「あはは…………………あっ!今日は、もう遅いから俺の家に来る?」
「私の家までお願いします」
「…………………はいはい」
車をゆっくり動き出す。
私は、ちょっとヒリヒリする自分の手を軽く擦った。
今日のは少々多かったかな。
手首が痛い。
「…………………………今日も、重かった?」
様子を見ていたのか、声をかけてきたマスターに少しだけビクッとなる。
「…………………普通」
「嘘。手のひら、真っ赤だよ。凄く重かったでしょ?家に帰ったら、ちゃんと冷やさないとダメだよ」
「………………………」
「…………………もう少しで、暖かくなるね?眠くなる季節でもあるよね?春って」
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