第10話

「………………食べる」



「了解。でも、凛ちゃん。ずっとこのままっていうのはよくないよ」



「………………うん」



今日の夕ご飯はオムライス。


マスターの得意料理だ。


家で夕ご飯なんて食べることはできない。


親から『なぜいるの?』と言われてしまう。


だから、喫茶店に来る時は食べるがそれ以外の場所では食べない。



「今日は、何時に帰るのかな?」



「21時」



「いつもより、早いね」



「うん。生け花の時間が早く終わるの」



「そっか。明日は来るの?」



「明日は、千那と買い物だから」



「分かった。気をつけて」



オムライスを食べると、コーヒーを飲んで喫茶店から出る。


外は、真っ暗になっていた。


街灯はついているが、よく見えない。


ふと、夜空見上げる。



月………………………



月の光が妙に貧しく感じる。


太陽のようにギラギラと照らすことなく、神妙なその姿でいる月。


帰らないと………………




空を見上げるのをやめてゆっくりと歩き出した。

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