第9話
もっと望むものがあるの?
それ以上に?
「そうなの?」
「そうなの。俺の妻、麻矢っていうの」
「…………へ~ぇ」
興味ないけど。
「うわぁ、興味ないって返事の仕方。そういう時は可愛い名前ですねって言うの」
「可愛い名前ですね」
これでいい?
「凄く言いました!って感じだねぇ。は〜ぁ………………俺の妻ねぇ。子供が産めない体なんだ。子宮癌で、摘出するしかなかった。だから、子供が欲しくても無理なんだよね」
それは、とても残念ね。
実子が望めないって。
「養子でも頼んだら?厳しい審査があるらしいけど。赤子なら扱いやすいと思う。記憶がある年齢の子を引き取ると面倒らしいから。だけど、マスターは子供の面倒を見るタイプには見えないけど」
「そんなことないよ。好きだよ。大きくなって彼氏が出来たらソイツのこと調べて真っ白なのか確認しちゃうくらい溺愛するから。真っ黒だったら全力で別れさせるけどね。可愛い子供の未来は常に明るいものじゃないと安心できないからね。だから、凛ちゃんどう?」
………………。
旅行に一緒に行きましょう的な言い方だ。
そんなにニコニコ笑顔で言われても。
どうしようもない。
「………………」
「あれ?無視された?また、無視されちゃった?」
最近、マスターは私に娘にならないか?とか言ってくる。
始まりはプリンアラモードを食べているときに『今日はずっと雨だねぇ。なんだか気分も暗くなるなぁ。明るくなるためには、そうだなぁ。ねぇ?凛ちゃん。突然だけど娘にならない?』だった。
それから、ちょこちょこ会話の中に出るように。
「育児放棄されちゃったんだから、家出ても大丈夫でしょ?」
育児放棄とはまた別ものだと思うけど。
「凛ちゃん?嫌なの?」
「………………家を出ていいのか分からない。教えられていないことだから」
「そっか。自分じゃ判断できないか。欠けてる部分だから」
「………………それ本気じゃないでしょ?というか、私には理解できないの。その部分の感情は考えられない」
「考えられない、ね。俺は冗談でこんなこと言うタイプじゃないんだけどな…………今日は、夕ご飯食べるの?」
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