第55話

 1年生校外学習当日。

 1泊2日のテント暮らし。男子も女子もテントで寝泊まりする。もちろん、男女は別のテントだ。とは言え……


「なに、泰弘? 今日はよろしくね」

 にこやかに笑う、ショートカット。塩屋しおや希信きしん。通称のぞみちゃん。聞いての通り、希ちゃんなのである。いや、何が言いたいかと言えば、男子なのに、男子ではない。声も低めの女子より高いトーン。


 なにより、同性なので普通に遠慮なく、バンバンボディータッチとかしてくる。その都度ドキドキしてる俺はおかしいのか?


「ごめん、林崎君。ポケティ予備ある?」

 よかった。おかしい人がもうひとりいた。中八木那奈。同じ風紀委員で『男子×男子』に目がない。チャンスがあれば『男子×男子』の妄想で鼻血を流してる。貧血で倒れないか祈るばかりだ。


 いや、待て。俺たちの合同班は男子2名。つまり今夜は俺とのぞみがふたりっきりになる訳で――そんな状況、中八木さんの妄想を搔き立てないワケがない。

 近くに救急病院がないか調べておこう。


「おい、林崎‼」

 山間のキャンプ場。大自然の中、担任の西新町にししんまち先生の声が鳴り響く。相変わらず『3―B西新町』の体操服だ。学年主任が同行しないことをいいことに、高校時代の体操服に身を包み、体力の無さを杖代わりにしてる竹刀で補っていた。


「なんです、まだカレー出来ませんよ」

「来たばっかだ、そんなことは分かってる! それよりあれはなんだ⁉ 中八木兄率いる写真部のダイナマイト爆乳女子オサゲ眼鏡は? あんな奴写真部にいたか? っていうか、林崎‼ お前風紀副委員長だろ! 高校生の分際であの爆乳は校則違反だ! 注意して来い‼」


 もう発言が無茶苦茶だ。俺はちらりと西新町先生の西新町先生な部分を見た。安定のAカップは健在だ。


「あっ、だから先生『1―A』の担任なんですね?」

「おまえ……いま私『Aカップ』って決めつけただろ⁉ おまえ、現国の期末覚えてろよ~~‼ この馬鹿チンが~~‼」

 泣きながら逃走した。よかった、これで少しは静かになる。


希信きしん~悪い。俺知り合いにあいさつしてくるわ」

 そう言って塩屋希信に手を挙げた。希信はにこやかに手を振り、柚香をはじめ合同班の女子と昼食の準備に取り掛かった。おかしい、女子4名と男子1名のハズなのに、女子5名にしか見えん。中八木さんの気持ちも少しわかる。


 それはさて置き。

 シュン兄さんが写真部の活動の一環で、1年の校外学習に参加するのは聞いていた。

 聞いていたのだけど、写真部の部員が体調不良で野戦病院状態だとも、聞いていたので心配だった。

 幸い、あさ遠目で見た時、シュン兄さん以外に2名の写真部の姿があった。ギリギリ間に合ったのだろうか。でも、そのふたりは深々とマスクをしてるし、本調子じゃないのに強硬参加したのかも。


 そうなるとシュン兄さんの負担は大きいんじゃないのだろうか。手伝えることがあればと思い、シュン兄さんの所に顔を出すことにした。


「おかしいなぁ……シュン兄さんいない。すみません、写真部の方、ですよね?」


 シーン……


 あれ、聞こえなかったのかなぁ……確かに西新町先生が言うだけはある、校則違反級の爆乳。しかもオサゲで眼鏡。界隈かいわいでは人気が……


 ん……? んんん? おかしい。この爆乳。なんと言うか、見覚えがある。いや、不思議と顔に感触の記憶が……


 まさか……嘘だろ?


「なにやってるんですか、藤江先輩?」

 シーン……

 聞こえてない、ワケないか。無視? いや、まさかこんなベタな変装で俺をだませたと思うのか? その時、俺の背中がツンツンされた。

(なにやってるの?)

(中八木さん。実はこの人なんだけど、先輩じゃない?)

(先輩って、藤江委員長? そんなのいるわけないでしょ! 眼鏡してないわよ、委員長)

 んんん……先輩の見分け方って眼鏡の有無なの? 仕方ない、ちょっと本人を揺さぶってみるか。


「すみません。シュン兄さん知りませんか? 先輩、じゃない、えっと伊澄いずみちゃん?」


「⁉」


 声にならない叫び声。ちょろい。やっぱ先輩だ。しかし、このベタな変装先輩。この期に及んでも、知らん顔する。目を逸らす、そっぽを向こうとするし……仕方ない、これだけはしたくなかったのだが……


「スミマセン、伊澄ちゃんもっとデブでした(ぼそっ)」


「で、デブ~~ッ⁉ わ、私はデブではないぞ! 林崎‼ 根拠もある! 先日AIに相談したんだ! 世間的には私のこと『豊満』とか『ふくよか』とか呼ぶらしいじゃないか!」


 メガネとマスクを脱ぎ捨てた。だから、先輩の先輩な部分はデブじゃないって言ってるじゃないですか。変な質問してAI困らせないでください。


「あと……いま伊澄ちゃんって……呼んでくれた! イエイ‼」

 あっ、聞いてたのか。でも、喜び方がなんか昭和‼ あの背中つねらないで貰えます、中八木さん。君は君でこのベタな変装見抜けなかったでしょ? 仕方なくない? あぶり出すためだよ。


「ダーッ‼ 何やってんだ、藤江‼ 誰がマスク取っていいって言った⁉ おまっ、滝の茶屋に代返頼んで、学校に無断で来たの忘れたか⁉ 江井ヶ島! ちゃんと見てろよ、何やってんだ、このは⁉」


 声を荒げて現れたのはシュン兄さんだった。俺と中八木さんを見て軽く手を挙げて――


「おっ、弟夫婦も来てるな」

(どうしましょ、林崎君‼ シュン兄が弟夫婦だって‼)

 確かに言ったね、弟夫婦って。でも中八木さん。シュン兄さん、もっと不穏でヤバいキーワード言いましたよ?

 なに先輩、学校に言わずに来たの? 代返って、それ大学とかじゃないと通じないのでは? しかも1泊2日ですが?

 あと……あの木の陰に隠れてる日焼け眼鏡……まさかの……


「江井ヶ島先輩、ですよね?」

「チガウヨ、全然江井ヶ島ジャナイよ!」

 おい、柚香‼ 江井ヶ島先輩ってこんななのか⁉ なんだ、このベタベタな片言は⁉ 江井ヶ島先輩もまさか、学校に言わないパターンですか⁉ まさかとは思いますが、江井ヶ島先輩の代返も滝の茶屋先輩ですか⁉


 □□□作者より□□□

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