第20話
「さすがにこれは、いただけんな」
すべてを自白するために、例のブツを藤江先輩の前に出したが、先輩は珍しく難しい顔して、こめかみを押さえた。どうやらこの尻尾が「どういうものか」察しが付いたらしい。
そりゃ、10数年生きてりゃ見た感じ、これエログッズじゃないの? 知らんけど。みたいになる。そういう意味では中八木さんは
「すみませんでした……」
「うむ……」
難しい顔で頷く先輩だが、ここである疑問が浮かぶ。
――この人。こんな勘がいいか?
失礼を
「先輩、これ何に使うかわかりますか?」
背中では中八木さんが人差し指で鬼連打する。
(き、君って子は、委員長になに言わせる気なの⁉)
(なにって、聞きたくないの?)
(それは……その……聞きたい……かも)
あぁ……俺のせいとはいえ、女子が女子にこんなに、はにかむ顔みせるんだとほんの少し罪悪感を感じた。
「これは――あれだろ?」
「あれとは?」
「キーホルダーみたいな?」
背後で中八木さんが倒れた。やっぱりだ。今日も先輩は正常運転。
「先輩。じゃあ、なんでキーホルダーで難しい顔してたんです? 別にいいじゃないですか」
「それは、あれだ。校則には過度なキーホルダーは控えるようにとある。目印程度なら許されている。それを風紀委員自らとなると……」
大きすぎるから難しい顔してたってことか。
先ほど背後でずっこけた、中八木さんが俺の身体を支えに立ち上がった。この子、ボディータッチ激しくないか?
陰キャ的にはもう友達以上、ほぼ恋人なんだけど。
「それになんだ。このボコボコとした部分は。
中八木さん、俺を見られても……俺は
「そ、それはですね、委員長――」
言いかけたが、俺の腕をいきなり
「林崎君、言えない……そのボコボコが、お〇にドッキングするなんて。林崎君お願い! あと、仮にの話、もしそうなったら、私どうなっちゃうの!?」
知らんがな。
いや、なんでもかんでもお願いされても。だから、俺としては先輩にバレずに内密に撤去しようと……
まぁ、仕方ない。ここは知らずに買ったって、本当の理由を言うか。本来の使用用途を知った先輩の
先輩の「もうやめてくれ~~っ‼」と恥じらいながら頭を抱える姿を想像し、口を開きかけた時――
『ガラガラ……』
「あ……っ」
中八木さんが小さく悲鳴を上げた。
(誰?)
(滝の茶屋先輩。2年生。古参の風紀委員で1番副風紀委員長に近いって言われた人)
ん? 誰もなり手がなかったから、空いてたんじゃないのか、副風紀委員って。実際先輩困ってた感じだし。
「中八木。そちらは?」
「おう、滝の茶屋か。私から紹介しよう、林崎だ。お前たちにいくら頼んでもどーしてもやりたがらなかったから、林崎に頼んだんだ」
「頼んだって、藤江。何を彼に?」
「副風紀委員長だ。いつまでも空座では格好つかんしな」
ぎろりと睨まれた。あれ、俺余計なこと引き受けました? いや、ロッカー借りる交換条件だったんですけど……自己紹介と、軽く言い訳をしようとしたその瞬間――
「⁉」
さっきの中八木さんと同じ、生き物が何かに踏みつぶされたような悲鳴。滝の茶屋先輩だ。
そして
(き、貴様‼)
(林崎です)
(は、林崎‼ 貴様か⁉ 私の藤江に――)
私の藤江? またやばいの来たなぁ……なに、風紀員って全員
風紀委員が
わなわな震える指先が指したのは――いわくつきの尻尾だった。しかも、先輩、例のボコボコした部分を何も知らずに、指先で触れてた。いや撫でていた。
これはアレだ。
(き、貴様があのような物を、ふ、藤江に⁉)
(えっと……諸説ありなんですけど、まぁ俺です)
これは間違いなくビンタ確定だな。誤解とはいえ、説明しても誤解が解ける気がしない。若干めんどくさくなってきたし、ビンタでいいやと思いきや。
(グッジョブだ、林崎……よくやってくれた)
さめざめと泣かれた。しかも俺の肩にもたれ掛かって。どうなってる風紀委員。実質、副風紀委員長がこれでいいのか?
しかし、噂には聞く。百合の中に男子がひとり。シネばいいのにとか。
「滝の茶屋先輩。その……藤江先輩はあぁ言ってますけど、いいんですか、副委員長。実のところ、俺は交換条件で頼まれただけなんで」
どっちでもいいです、みたいな感じ。
「林崎。私からも頼む。藤江の傍にいて、近くで調教――協力してやってくれ」
今しっかり調教って言いましたけど。ホントに大丈夫なのか、風紀委員会。あれから――柚香の寝取られた事件から、なんか教室に居場所がない。
それは俺が勝手にそう思ってるだけで、誰も
だから、委員会に入って居場所を確保するのもいいかも、くらいのノリなんだけど、藤江先輩もいるし、中八木さんもいる。
滝の茶屋さんは――ガチガチの百合っぽいが、敵対しそうな感じでもない。寝取られからの再出発には上々だ。
後は例のやつを片付けるだけか。
□□□作者より□□□
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