第18話
「林崎君、帰りましょう」
なぜか、中八木さんに出待ちされた。俺が反応するより先に
なんで、お前隣にいるんだ。隣は家だけでいいだろ。
「確か……
いや、柚香。お前こそ俺に何の用だ。
「はい。もしお邪魔ではないなら、一緒に下校しようかと」
「お邪魔」
ホント
「林崎君を見るも無残に捨てたあなたに言われる筋合い、ないですよね?」
ぐはっ……ちなみにいま吐血したのは俺だ。すみません、中八木さん。もう少しソフトに表現して貰っていいですか?
まだ生傷なんで。
あっ、すいません。陰キャ
例のいわくつきの尻尾の取り扱いを考えないと、ふたりで。
あと、柚香。おまえ、ホントちゃんと
「じゃあ、行こうか中八木さん」
「はーい」
「おい待てや! って、聞こうね、おーいお二人さん?」
完全スルーで向かうは風紀委員室。罪悪感がないわけではない。この場合、藤江先輩に対してだ。先輩にはカメラを置きたいと頼んだ。実際、カメラは風紀委員室に置いてるのだけど……
「林崎君。これって初めての共同作業なのでは?」
中八木さん。そんな甘い感じなの? 呑気なの? いわくつきの尻尾。しかも、その尻尾は直接お尻にドッキングする仕様。細かい表現は
風紀委員以前に、中八木さんの人生を揺るがしかねない、情報
「そうそう、林崎君。委員長にはコスの件はご内密に」
口の前できれいな指をピーンとして「シー」とした。残念ながら、なんていうか――ちょうどいい可愛さだ。
中八木さんには失礼だけど、手の届く限界ギリギリの可愛さ感はある。実際は届かないけど。
「わかった。えっと――」
「なに?」
「いや、実は例のいわくつきの尻尾なんだけど」
「そうだった! 今どこ?」
まさか、忘れてたの? 呑気なの?
「先輩、藤江先輩に頼んで風紀委員室のロッカーを借りてる。中八木さんのお兄さんにカメラ借りたからって。貴重品だから預かって欲しいって」
「尻尾もある意味貴重品ですからね?」
まさかとは思うけど、中八木さん。状況楽しんでない? 気のせいかなぁ……
「そうそう、ロッカーを使わせて貰う条件で――」
「委員長、条件なんて出したんだ。めずらしー」
そうなんだ。確かに人が困ってたら。無条件で協力してくれそうだよなぁ。それを思うと少し寂しい。
仲良くなった気でいたけど、先輩的には違うのかなぁ……
「――で、どんな条件なんです?」
「ん? えっと、欠員が出てる風紀副委員長をして欲しいって」
「えっ?」
中八木さんが立ち止まったことに気付かないで、俺は数歩歩いて振り向く。固まった表情。口元をピクピクさせた。よく見たら目が点だ。
「まさか……受けたんじゃ……」
「受けたよ。こんな言い方したら先輩には失礼だけど、なり手がなくて、
「う、受けたんですか⁉」
「だから受けたって。確かに風紀副委員長って
実は先輩との接点が増えるかもって、下心はある。中八木さんもいるし。
どうしたんだ。中八木さん、口元を押さえてわなわなしてる。
「た、大変……こ、殺されますよ、林崎君」
そんな大げさな。確かに先輩は仕事に厳しそうだけど、優しさも兼ね備えた人だよ。それに、まあまあなポンコツだし。抜け道はあるんじゃないかな。
俺、そういうの見つけて、サボる――息抜きするの得意だし。
いや、待てよ。先輩の人気からすると男子生徒に殺されるって意味だろうか。
「中八木さん、その男子にって話? 先輩、人気ありそうだもんね」
「林崎君。どうしてそうなるの? 君さ、呑気なの?」
いや、中八木さんにだけは言われたくないけど……
想像以上に男子の人気が凄いとか? 毎週のように告白されてるとか? それありそう。
「甘く見てない? 委員長の百合人気‼」
なぜか中八木さんは「だから言ったでしょ」みたいな顔をした。聞いてませんが?
***
「やあやあ! 林崎! 熱心だな、早速委員会に顔を出してくれたのかい?」
どうしよ? 俺は中八木さんの顔を見る。実はここに来るまでに、何が何でも断るように言われた。
命が惜しいなら、そう付け加えられた。
確かに、そういう目でみたら――先輩の
首を傾げる俺に中八木さんは更に付け加えた。
「私、そっちの住人じゃないです」
まぁ、そうか。実際のところそんなにそっちの住人の方っていないんじゃないの? なーんて呑気に、まさに呑気にとらえていた。
しかし――
「そっちの住人じゃない私でもです!」
「はい……?」
「委員長、私じゃないんだって、今思ってますよ? 風紀副委員長‼ 声かけてくれないんだって、めちゃくちゃざわざわしてます! そっちじゃないのに!」
涙目でキッと
□□□作者より□□□
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