第39話 雪と氷の洞窟(3)- Side:獅子喰 光輝(星影山:ダンジョン)


「おっ! またバズってるぜ……」


 と『ミカ』。今の彼は銀色の髪にするどい青の瞳を持つ狼人族ウルフィンだ。

 小柄なため、実際の年齢よりおさなく見える。


 スマホを操作していても、周囲からはただ遊んでいるように映ってしまうことが多々あった。


「まだ、仕事中だぞ」


 とたしなめたのは『ウリュー』。赤銅色の髪に明るい金色の瞳を持つ鬼人族アスラだ。

 こちらはひたいから2本の角が生えているためか、怒っているように見える。


 実際は「まだ、モンスターが出現する区域エリアなので気を抜くな」と心配したに過ぎない。


「分かってるって」


 いつものことなので、ミカは軽く返す。

 彼の役割は、このチームの目と耳だ。


 油断しているように見えるが、警戒だけはおこたっていない。

 しかし、調子に乗りやすい性格でもあった。


 仕方なく、ウリューが小言を言うのが、いつものパターンである。『雪と氷の洞窟』での作業も終わり『コーキ』をリーダーとする3人は帰路きろの途中だ。


 モンスターはすでに狩りくしている。

 ミカの態度からも分かる通り、そこまで心配する必要がないのも確かだった。


「フーカさんですか?」


 とはコーキ。ミカに質問する。

 先日『探索者シーカー』として、スカウトしようとした少女の名前だ。


 彼女の通う学校まで出向いたのだが、思わぬ邪魔じゃまが入り、失敗してしまった。

 ただ、それ自体は良くあるケースだ。


 スカウトが成功する確率自体は高くない。

 むしろ、スカウトすること自体に意味がある。


 スカウトの際、好条件を提示することで――以降その人物は――通常の条件でのスカウトを断るようになるのだ。


 彼らの行動には、他の企業へのスカウトを妨害する意図いともあった。

 彼女フーカも「その一人に過ぎない」と思っていたのだが、違ったらしい。


 正確には、3人の中でコーキだけが納得していなかった。

 気になった彼は、フーカのことを再度調べたのだが――


「あの後、すぐにダンジョン高校へと転校してしまったそうだな」


 とウリュー。「手際てぎわが良すぎる」とコーキから聞いていたので、スグに思い出すことが出来た。当然、上へは報告したのだが「捨て置け」と言われてしまう。


 下手へたに相手をつついて、裏に別の組織が隠れていた場合、コーキたちのねらいを探られる可能性があったからだ。黙っているコーキに対して、


「逃がした魚は大きい――という事か?」


 とウリューは続ける。コーキとしては「気にしていない」という体裁ていさいよそおっていたようだが、彼には見抜かれていたらしい。


「どちらかと言えば、警戒けいかいかな……」


 コーキはつぶやく。すると今度は、ウリューの方がおどろいたようだ。

 お前がそんな事を言うなんて――といった表情でコーキを見詰める。


「そういうことなら、まずは情報集だな」


 そう言って、ミカは動画のURLを送信した。


「今回は『コーラルキャッスル』でスイーツを食べるんだってよ……」


 どこだよ、そこ――と自分の台詞セリフに突っ込み、ミカはスマホを軽く振った。

 色とりどりのサンゴが広がる海底の城。


 似たような場所を知ってはいるが、コーキたちも知らない領域エリアのようだ。

 つまりは「一般向けに公開されていないダンジョン」となる。


「皆も『それ、どこのダンジョンだよ』ってさわいでるぜ」


 ミカはそう言って、楽しそうに笑った。

 単純に状況を楽しんでいる。


 一方でウリューは難しそうな顔をした。

 フーカという少女が『ダンジョン管理者マスター』とは思えない。


 それが、誰も知らないダンジョンにいる。

 少なくとも、それは彼女の後ろに企業や政府がついていることを意味した。


「コーキの勘が当たっていたようだな」


 と一言。「困ったことにね」とコーキは返すが、その表情にいつもの余裕はなかった。ウリューとしては、その状況の方に困惑する。


 それほどまでに獅子喰ししくら光輝こうきという人物は、彼の中で大きな存在だった。


美味おいしそうだな」


 ミカがつぶやいたので「なに呑気のんきに」とウリュー。

 その一方で、自分のスマホを見ていたコーキは微笑ほほえむと、


「フロストシーアクアリウム限定のお菓子ですね」


 そうつぶやいた。「調べさせるか?」そんなウリューの言葉に、彼はあごに手を当て、少しの間だけ考えた後、


「やめておきましょう……」


 今はまだ、接触すべきではない――と理由を述べる。続けて、


「それに、近いうちに会えそうな気がします」


 と告げた。ミカもウリューも、その言葉に納得する。彼らはダンジョン災害に巻き込まれた孤児で、同じ施設で育った兄弟のような関係だ。


 ただ一つ異なるのは、コーキだけは「赤ん坊の頃にダンジョンで拾われた」という点にある。ダンジョンで無力な赤ん坊が生き延びるすべなど皆無に等しい。


 けれど、彼は生きていた。

 ダンジョンに選ばれた、象徴的な存在である。



🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️



*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*


ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」


ฅ^•ω•^ฅ「今日は『フロストシーアクアリウムのスイーツ』についてです」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「お腹の脂肪か? 欲しけりゃくれてやる。せろ! この世の不条理をそこにおいてきた――世はまさにダイエット時代」


ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」


ฅ^>ω<^ฅ「今日は本作で紹介できなかったスイーツを紹介するよ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「スパチャ以外に、コラボ商品も大事な収入源だものね」


ฅ^>ω<^ฅ「はいはい、じゃあ『イルカクッキー』を紹介するよ」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「イルカの形をしたクッキーで、パッケージは季節ごとに変更されるから、全部で4種類」


ฅ^>ω<^ฅ「まずは春!🌸『春の海とイルカ』は、穏やかな春の海を背景にしたデザインだよ」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「『ハスカップとクリームチーズ味』『ラベンダーと蜂蜜味』『抹茶とホワイトチョコレート味』の3種類が入っているわ」


ฅ^>ω<^ฅ「次は夏!☀️『夏の夜空とイルカ』は、星空の下、イルカが泳ぐデザインだよ!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「『メロンとバニラ味』『ブルーベリーとヨーグルト味』『ハスカップとレモン味』の3種類が入っているわ」


ฅ^>ω<^ฅ「次は秋!🍁『収穫祭とイルカ』は、収穫された果物や野菜とイルカのデザインだよ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「『カボチャとシナモン味』『リンゴとキャラメル味』『サツマイモとメープルシロップ味』の3種類が入っているわ」


ฅ^>ω<^ฅ「最後は冬!⛄『雪景色とイルカ』は、白い雪が降る海とイルカのデザインだよ」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「『ホワイトチョコレートとミント味』『シナモンとナツメグ味』『バニラとアーモンド味』の3種類が入っているわ」


ฅ^-ω-^ฅ「うーん、これは季節ごとに水族館へ行かなくてはなりませんなぁ」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「この他にも『マンタのケーキ』や『ウミガメのマカロン』『サンゴのキャンディ』なんかもあるわね」


ฅ^>ω<^ฅ「よーし、また行こう!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「本来、魚を見るところだと思うのだけれど……じゃあ、今日はここまで」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」


*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*

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