第38話 雪と氷の洞窟(2)- Side:獅子喰 光輝(星影山:ダンジョン)


「あーら、よっとっ!」


 威勢いせいのいい掛け声と共に、空中で一回転。アクロバティックな動きと同時にモンスターをりつけるのは、獣人種アニマ狼人族ウルフィン


 白銀はくぎんの髪にするどい青の瞳。小柄で少年のような姿をしているが、中身はれっきとした高校生である。黒と青を基調とした装備。


 防御力よりも身軽さを優先しているため軽装だ。寒そうに見えるが――獣人種アニマだからなのか――本人いわく「ぜんぜん、寒くないぜ!」とのことらしい。


 獣人種アニマ特有のフサフサの尻尾をらしている。

 武器は炎の属性を持つ2本の短剣ダガー


 自分よりも大きな『フロストワーム』数体を相手に――ノーダメージのまま――確実にきざんでゆく。


 フロストワームは人を飲み込めるほど巨大で、蛇に似た見た目だが、翼を持たないドラゴンである。全身が氷でおおわれているため、魔法の攻撃が有効とされていた。


 もっと深く潜ると姿も巨大になり、氷の翼が生える。

 しかし、第60階層付近では、そこまで成長はしない。


 少し離れた場所では、


「きぇーっ、はぁっ!」


 と気合の入った声を上げ、槍を振り回す魔人種デモン鬼人族アスラの青年。

 長身痩躯そうくで、赤銅色の髪と明るい金色の瞳をしている。


 ひたいからはえた2本の角が特徴的だ。こちらは黒と金を基調とした装備で、しっかりとした鎧で全身を守っていた。


 炎の属性を持つ槍を器用に使って、アイスゴーレムにも似た氷の巨人『グレイシャージャイアント』をほふっていく。


 巨大な氷の体を持つ巨人で、力強い腕を持っている。

 青年は振り下ろされた攻撃をかわしつつ、的確に急所を狙った一撃を放つ。


 狼人族ウルフィンの青年とは対照的な戦い方だった。

 そんな彼らの様子を見て、


「これでは、ボクの出番はなさそうだ」


 とつぶやいたのは獅子喰ししくら光輝こうき。今は黄金の髪と深い緑の瞳を持つ人間種テランのアバターを使っている。


 そして、名前を『コーキ』と名乗っていた。身にまとう漆黒の鎧は暗黒騎士を連想させる。当然、その強さも本物だ。


 彼の後ろには『フロストファングウルフ』の群れが横たわり、万応素マナの光となって消えかけている。白い毛並みを持つ大型の狼だが、コーキの敵ではない。


 また、彼がコーキであるのなら、狼人族ウルフィンの青年は美火みかこと『ミカ』を名乗り、鬼人族アスラの青年は羽隆うりゅうこと『ウリュー』を名乗っていた。


 探索者シーカーをスカウトする仕事も行うが、実際にダンジョンへ潜る方が彼らの得意分野である。


 コーキの手には武器である炎の剣の他、精霊を捕獲ほかくするためのアイテム『クリスタルランタン』がかかげられていた。


 対象は透明な氷の体を持つ精霊『アイスレイス』。

 すでに魔法による攻撃で弱らせている。


 アイスレイスは万応素マナに似た光の粒子となって、クリスタルランタンの中へと吸い込まれ消えた。するとランタンは美しいかがやきを放つ。


「さあ、早く終わらせよう」


 とコーキ。彼らの目的は精霊の捕獲である。

 アイスレイスは、この1体だけではない。


 また、小さな氷の翼を持つ妖精『スノースプライト』も捕獲対象だ。

 ここは『雪と氷の洞窟』と呼ばれるエリアにある『氷の大広間』。


 巨大な氷の柱が立ち並ぶ広間で、光が反射しているため、美しい光景が広がっている。そこに「モンスターが集団で待ち構えていた」というワケだ。


 この他にも『雪と氷の洞窟』には『氷の橋』と呼ばれる場所があった。

 深い谷を渡るための氷の橋で、滑りやすく、慎重に渡らなければならない。


 橋の下には氷の川が流れていた。落ちれば一溜ひとたまりもないだろう。

 また『雪の迷宮』と呼ばれる場所もある。


 その名の通り、雪でおおわれた迷宮だ。視界が悪く、道に迷いやすい。

 隠された宝物や秘密の通路が存在するとうわさされている。


「こっちも終わった」


 とはミカ。氷の床には羽を切り落とされ、飛べなくなった氷の妖精『スノースプライト』がいる。


 彼はランタンを取り出すと、先程のコーキと同様にスノースプライトを捕獲した。


「次は『氷のたき』だったか?」


 とはウリュー。グレイシャージャイアントは巨体であるため、倒れた残骸ざんがいが氷のつぶてとなり、白銀の霧のように舞っている。


 コーキもミカも、彼の姿を目視でとらえることは出来なかった。

 近づいてくる足音で、居場所を特定するしかない。


こおってたら、滝じゃなくね?」


 とミカ。凍った滝が光に反射し、美しい場所ではあるのだが、氷の壁のようでもある。彼の言い分は、間違ってはいないかった。


「じゃあ『氷の湖』の方が良かったかな?」


 とはコーキ。その台詞セリフを聞いて「いや、どー違うんだよ……」とミカは肩をすくめる。文字通り、凍った湖が広がるエリアだ。


 氷の下には神秘的な生物が住んでいると言われているが、凍っているため、確かめた者はいない。



🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️



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ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」


ฅ^•ω•^ฅ「今日は『適応障害』についてです」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「連休明けは学校へ行きたくないわ……これは急性のメンタル不調ね!」


ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」


ฅ^>ω<^ฅ「もー、いつも行きたくないって言ってるでしょ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「連休明けは特に行きたくないのよ」


ฅ^•ω•^ฅ「はいはい、じゃあ、メンタル不調の代表格『適応障害』について教えて」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ストレス反応として起こる急性のメンタル不調ね。」


ฅ^>ω<^ฅ「環境の変化やストレスに対する反応だから、適切な治療さえ受ければ、比較的短期間で改善するんだって!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「軽んじてはいけないわ! 放置すると他の精神疾患に移行するリスクもあるんだから……」


ฅ^>ω<^ฅ「どういうこと?」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「学校を休むことは『権利』であり、学校にとっては『義務』なのよ」


ฅ^-ω-^ฅ「はいはい、そだねー。今は多くの企業がメンタルの不調でも休めるようにルール設定をしてるって聞いたよ」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「例えば、厚生労働省が公表しているモデル就業規則には、体調不良で働けない場合、休職することが定められているわ」


ฅ^>ω<^ฅ「メンタル不調は、ケガや病気と同じってこと?」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「そうよ、体の病気と同様に、心の病気も適切な治療と休養が必要なの。無理をして働き続けると、さらに健康を害するリスクが高まるわ」


ฅ^-ω-^ฅ「日本人はメンタルが弱くなったのかな?」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「もともと、セロトニントランスポーターのSS型の人が多くて、ストレスに対する耐性が低いとされているわ」


ฅ^>ω<^ฅ「そうそう、文化的要因もあるんだっけ⁉」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「【我慢】や【頑張ること】が美徳とされているから、ストレスを溜めやすい環境が形成されているのよ」


ฅ^-ω-^ฅ「やっぱり、高度経済成長期以降が怪しいよね?」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「競争社会が進んで、ストレスが増加したわ。現代の労働環境や教育環境もストレスの要因となっているわね」


ฅ^>ω<^ฅ「どうすればいいの!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「ストレスを軽減し、健康的な生活を送る方法を探すべきね」


ฅ^>ω<^ฅ「趣味や興味を持つことで、ストレスを発散するゾ!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「仕事とプライベートのバランスを取ることも重要よ……じゃあ、今日はここまで」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」


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