第36話 フロストシーアクアリウム(3)- Side:黒猫 歌鈴(水族館)


 私たちはロッカーへ荷物を置き、装備を整えた。


(とは言っても、アバターに変身しただけなんだけど……)


 そして、再び転移装置のある部屋へと戻る。

 部屋にある大きな扉を開けると、今度は幅の広い通路が続いていた。


 しばらくは、この広い通路を歩くことになるようだ。

 ダンジョンで捕獲した動植物を運ぶため、広く作られているのだろう。


 通路の途中には部屋が用意されていて、研究室として機能しているらしい。

 けれど、そのすべての部屋に明かりがあるワケではなかった。


(人が足りないんだね……)


 ここでは『生態調査』がメインだと思われる。ダンジョン内の水棲生物の生態を調査して、食物連鎖や繁殖はんしょく行動を解明するらしい。


 すべての存在がモンスターというワケではない。

 基本的に敵対行動をとってくる存在を、私たちはモンスターと呼んでいる。


 黒い『万応素マナ』をまとっているので、分かりやすい。

 本来は『エネミー』とするのが正しいのだけれど――


(初期に起こったダンジョン災害のイメージから……)


 モンスターと呼ぶのが一般的だ。

 私たちは広い場所へと出る。どうやら、ここから外へと行くらしい。


 星霞せいかくん――いいえ、セーカくんが機械にスマホをかざして認証すると、扉が開いた。私のスマホにも通知が来たので、画面をタップする。


 情報はスマホのアプリを通じて連動しているらしい。

 データがダンジョン協同組合の方へ送られるようだ。


 前回は観光用ダンジョンだったから、その辺はゆるかったのだろう。

 移動には10階層ごとにゲートを使用するので、そこで情報が取られていた。


(今回は細かくチェックされるみたいだ……)


 私の装備は変わらないけれど、フーカちゃんはモコモコ仕様をやめたらしい。

 随分ずいぶんとスリム――いいえ、軽装になっていた。


 防水仕様というよりは、水属性の攻撃に耐性の高い装備だ。

 今回は、白と青を基調とした可愛らしい聖職衣である。


 魔法防御に特化したと思われる神官服。

 一方で、セーカくんは前回と変わらない。


(まあ、クラスが騎士だからね……)


 そして、私は相変わらずの全身黒尽くろづくめだ。

 今回は防水用の外套マントを装備している。


 セーカくんの話によると、第1階層から第10階層まではモンスターが出現しないらしい。


 ただ『水の洞窟どうくつ』と呼ばれている場所で、入り組んだ形となっている。

 しかし、明かりは必要ないようだ。


 天井てんじょうから水がしたたり落ち、場所によっては、水溜みずたまりが星空のように輝く場所もあるらしい。


 岩はなめらかで、長い年月をかけて水にみがかれたような質感。

 青みがかった灰色で、光が当たるとかすかにかがやく。


 地面には湿った土が広がっていて、足元が少し柔らかく感じられた。

 深い茶色で、水分を含んでいるため、少し光沢がある。


 また、洞窟の一部には細かい砂が堆積たいせきしている場所があって、色は淡いベージュから白にかけてのグラデーションとなっていた。


 砂は水が流れている場所の近くにあって、その形を変えているようだ。

 幻想的な模様を作り出していた。


 ただ、のんびり観光しにきたワケではない。例のごとく、私たちは別の施設へと移動した後、そこにある転移装置で一気に第10階層まで潜った。


 第10階層は『水の神殿』で、セーカくんの話によると第20階層や第30階層も同じような作りらしい。


「ここからは『水の庭園』です」


 とセーカくん。「モンスターが出ますので、気を付けてください」と続ける。

 しかし、基本的には彼が相手をしてくれるらしい。


 私たちはゆっくりと着いて行くだけで良かった。

 第21階層で『アウレリーナ』ことリーナちゃんを召喚してくれるそうだ。


 逆に言うのであれば、そこまではダンジョン協同組合に監視されているのだろう。

 向こうとしても、異常を探知するのが仕事なので仕方がない。


 フーカちゃんはセーカくんから荷物を渡され、文句を言うのかと思ったけれど、そうでもないようだ。


(まあ、荷物と言っても『お菓子』だからね……)


 むしろ、楽しみなのだろう。

 また『水の庭園』というだけあって、綺麗な場所だった。


 先程までは洞窟だったのだけれど――どういうワケか――日の光がある。水路が張りめぐらされた庭園で、水の流れに沿って花や植物が美しく咲きほこっていた。


 水面に浮かぶ美しい花は白やピンク、青などの色をしていて、まるで睡蓮すいれんのようだ。大きな葉と美しい花が特徴のはすに似た植物もある。


 青や紫、ピンクの花はアジサイだろうか?

 水辺にはカキツバタに似た紫や青の花が咲いていた。


 水中には水草みずくさが生えていて、水の流れに揺れる姿が綺麗だ。

 シダ植物の緑豊かな葉が庭園をいろどっている。


 岩や地面にはこけえていて、竹のような植物の姿もあった。


(モンスターが出なければ、のんびりと散策したいところだね!)


 しかし、そうはいかない。透明な体を持つ蛇『アクアスネーク』が「シューッ!」という音を放ち、一斉に飛び掛かってくる。


 けれど、セーカくんに触れる前に水飛沫みずしぶきとなって消し飛んだ。

 ドロップ品は『アクアクリスタル』。私はセーカ君の代わりに回収しておく。


 次に現れたのは青い体を持つ巨大な蜘蛛『ウォータースパイダー』。

 でも、一瞬でバラバラになった。たぶんセーカくんが剣で切り裂いたのだろう。


 毒の糸やみつき攻撃を得意とし、火属性の攻撃が弱点である。

 水面を歩き、獲物を捕らえることも可能なようだけれど――


(ドロップ品の『毒の糸』と『蜘蛛の目』は気持ち悪いかららないよね?)


 そして、青い肌を持つ鬼『アクアオーガ』。

 低い唸り声を上げていたけれど、いつの間にか一刀両断されていた。


(何もすることがないよ……)


 取りえず、ドロップ品である『オーガの牙』を回収した。



🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️



*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*


ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」


ฅ^•ω•^ฅ「今日は『ヴィーガンスイーツ』についてです」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「栄養不足になるから、結局サプリメントでおぎなうのよね」


ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」


ฅ^>ω<^ฅ「でもでも、お菓子に関してはアレルギーを持つ人や健康志向の方にも人気だよ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「卵や乳製品などの動物性食品を使用せず、植物性の食材を使って作られたお菓子だからね」


ฅ^>ω<^ฅ「みんなが一緒に食べられる! これ、大事💖」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「今回はそんな楽しくて美味しいお菓子を紹介するわ」


ฅ^•ω•^ฅ「じゃあ、呼ぶ? 呼んじゃう?」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「そうね……じゃあ、メェリィさん、手伝ってください」

꒰ ❛ꈊ❛ ꒱「メェーメェー、みんな!こんにちは、メェリィだよ!」


(˶ᐢ- -ᐢ˵)「じゃあ、お願いします」

ฅ^>ω<^ฅ「お願いします!」

꒰ ❛ꈊ❛ ꒱「任せて、メェー!」


ฅ^>ω<^ฅ「アーモンドクッキー🍪」

꒰ ❛ꈊ❛ ꒱「アーモンド粉と植物油を使ったサクサクのクッキーだよ、メェー!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「オススメの飲み物はアーモンドミルク。カロリーが高めね」


ฅ^>ω<^ฅ「オートミールクッキー🍪」

꒰ ❛ꈊ❛ ꒱「オートミールとメープルシロップで作られたヘルシークッキーだよ、メェー!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「オススメの飲み物は豆乳ラテ。食感が硬めね」


ฅ^>ω<^ฅ「カカオニブブラウニー🍫」

꒰ ❛ꈊ❛ ꒱「カカオニブとココナッツオイルを使った濃厚ブラウニーだよ、メェー!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「オススメの飲み物はココナッツミルク。甘さが控えめね」


ฅ^>ω<^ฅ「キャロットケーキ🥕」

꒰ ❛ꈊ❛ ꒱「人参とナッツを使ったしっとりケーキだよ、メェー!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「オススメの飲み物はハーブティー。保存が難しいわね」


ฅ^>ω<^ฅ「バナナブレッド🍌」

꒰ ❛ꈊ❛ ꒱「バナナと全粒粉で作られたしっとりパンだよ、メェー!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「オススメの飲み物はアーモンドミルク。カロリーが高めね」


ฅ^>ω<^ฅ「レモンポピーシードマフィン🍋」

꒰ ❛ꈊ❛ ꒱「レモンとポピーシードを使った爽やかなマフィンだよ、メェー!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「オススメの飲み物はグリーンティー。保存が難しいわね」


ฅ^>ω<^ฅ「よし、食べに行こう!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「はいはい……じゃあ、これで終りね」

꒰ꈍꈊꈍ꒱「楽しかった、メェー!」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」

꒰>ꈊ<꒱「メェーメェー、ありがとう!」


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