第33話 生態系調査部門(3)- Side:天霧 星霞(回想)


 ダンジョン高校こと『北海道ダンジョン防衛大学附属高等学校』へは、桃藤とうどうさんへ頼み、会社経由で連絡をしてもらった。


 あれだけの反響があったのだ。動画を観て興味を持った人たちが――カリンとフーカに対し――問い合わせがあるだろう。


 学校側には、その辺をリストアップしてもらわなければならない。本来なら「学校へ迷惑をかけてしまって申し訳ない」と思うところなのだけれど――


(ダンチューバーとして活躍している生徒も多いからな……)


 学校側は対策をしっかりとしてくれる。

 すでに僕と同じで、会社へつとめながら学校へ通っている生徒も多い。


 むしろ授業よりも、生徒をサポートすることの方が学校側のメインの仕事と言ってもいい。


 教育現場の在り方としては間違っているかもしれないけど――ダンジョンの数に対して――それだけ人手が足りていないのも事実だ。


 また、若い人材の方が「ダンジョンに対して、適応能力が高い」のだから、仕方ないともいえる。いわば芸能活動に近いだろう。


 税金を多く徴収ちょうしゅうできる日本政府や、ダンジョンを提供してもらえる企業側としては嬉しい機関だ。しかし、そういった在り方に反対する団体もある。


 その筆頭が反ダンジョン連盟『ダンジョン安全保護協会』だ。

 表向きは「ダンジョン探索の危険性をうったえ、若者を守る」という理念で活動しているのだが――


(支援している団体の中に、新興宗教の名前があるんだよな……)


 探索者シーカーの間では「胡散臭うさんくさい」とうわさされている。

 もし、物理的に危害を加えてくるのなら、こういった団体だろう。


 そういった理由から、歌鈴のダンジョン高校への転入は急いだ方がいい。

 ダンジョン適合者であることも分かったので、その辺はスムーズに行くハズだ。


 問題はタイミングである。

 すでに根回しは済ませているけれど、取りえずは――


(もう一度、彼女の学校へ連絡をしておこう……)


 O市はダンジョン災害の多い地域なので、探索者シーカーには協力的な人が多い。

 懇意こんいにしておけば「優先的に対応してくれる」という思惑もあるのだろう。


 けれど、高齢の人ほど、災害のトラウマから抜け出せていない。

 そんな状況の現れでもある。


 彼らは探索者シーカーと関わることで、安心を得ているようだ。

 歌鈴の通う『青嶺あおみね高校』の教師陣にも、そういった人たちは多い。


 また、学校という場であるため、生徒の安全には気を使わなくてはならないようだ。


 地域の探索者とは、交流を積極的に行っているのだろう。

 ウチの会社もその一つだ。


 歌鈴の勧誘について、事前に報告していたことが功を奏したらしい。

 校長の方から直接、僕へ連絡が入った。


 『EGセキュリティ株式会社』という会社から、さっそくコンタクトがあったようだ。『EG』は「エレメントガーディアンズ」の略である。


 エレメントガーディアンズグループの傘下の会社だ。大手企業として有名なのは勿論もちろんだけれど、僕からすると別の意味で知っていた。


 防衛省や官僚と結びつきが強い会社だ。

 つまりは天下り先である。


(相手の内部事情を知るにはいい機会かもしれないけれど……)


 今、接触するには面倒な会社である。うわさでは『エレメントリバイバルスクール』という施設で、ダンジョン災害による孤児を引き取っているらしい。


 EGグループの施設で、表向きの理由は「安全で充実した教育環境を提供し、社会に貢献するため」とある。けれど、それにしてはお金を使い過ぎのようだ。


 孤児たちに希望と未来を与える施設として宣伝し、企業の社会的責任を強調する――という印象操作だけが目的とは思えない。


 EGグループにおける探索者の数も充実していることから「その孤児たちを私兵として育成している」という見方もできた。


(現段階では、推測でしかないけれど……)


 支援してくれた会社に施設の子供たちが就職するのは自然な流れだ。

 少なくとも、世間は美談として受け入れるだろう。


 孤児たちへの支援は企業のイメージ向上になると同時に、国民への理解と共感を得ることにつながる。


 世論を敵に回す可能性もあるため、現状は下手にれない方がいい。

 防衛省の官僚だけではなく、政治家も味方についているハズだ。


 施設で育った子供たちに対し――


(教育によって、高い忠誠心を植えつける……)


 というのは十分に可能ではないだろうか?

 そう仮定するのなら、EGグループの傘下にあるEGセキュリティ株式会社へ、施設で教育を受けた子供たちが入社し、私兵として働く流れは自然である。


(そもそも、行動が早すぎる……)


 昨日の今日で風奏への接触。この時点でダンジョン協同組合がEGグループへ情報を流しているのは明白だ。


(今はまだ、こちらの行動を悟らせるワケにはいかないか……)


 僕は姉さんの無茶振りで、ご当地ヒーローとして活動したことを思い出す。

 こういったキャラクターはO市観光協会が推奨している。


 観光客向けのイベントやプロモーション活動に活用されていた。

 色々と面識もある。


(こういう時のために、利用させてもらおう……)


 正体を隠し、行動することができる。

 風奏をミズウサギの着ぐるみの中に押し込んでいると、歌鈴から連絡があった。


 どうやら、EGセキュリティ株式会社の社員と接触したようだ。


(丁度いい、このまま乗り込むとしよう……)



🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️



*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*


ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」


ฅ^•ω•^ฅ「今日は『日本で戦闘用ロボットを開発する際の妨害』についてです」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「決闘よ。この学園ではね。生徒同士が大切なものを賭けて決闘するの……」


ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」


ฅ^>ω<^ฅ「ダンジョンも人がもぐらないで、ロボットでこうバーンとっ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「そう簡単でもないでしょう。爆弾を搭載したドローンが有効でしょうけど『万応素マナ』が多い場所だと、上手く飛べないわよ……」


ฅ^-ω-^ฅ「そっか、モンスターに銃とか有効じゃないもんね」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「まあ、そもそも……日本で戦闘用ロボットを開発する際には、妨害や課題に直面する可能性が大きいわ」


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🤖 日本で戦闘用ロボットを開発する際の妨害 🤖


📘 法的規制:


 戦闘用ロボットの開発には、国内外の法的規制が大きな障害となります。

 特に『武器輸出三原則』や『国際的な軍事技術の規制』がきびしく、開発や実験が制約されることが多いです。


📕 倫理的問題:


 戦闘用ロボットの使用に伴う倫理的な問題も大きな課題です。

 AIが自律的に攻撃を行うことに対する懸念や、誤った判断による民間人への被害リスクが議論されています。


🛠️ 技術的課題:


 高度な技術を要する戦闘用ロボットの開発には、膨大な資金とリソースが必要です。

 また、実際の戦闘環境での運用に耐えうる信頼性や耐久性を確保するための技術的課題も多く存在します。


🗺️ 国際的な競争:


 他国との技術競争も激化しており、すでに軍事大国が先行しているため、日本が独自に戦闘用ロボットを開発するには多大な努力が必要です。


//////////////////


ฅ^-ω-^ฅ「うーん、上手くいかないんだね」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「そもそも、ダンジョンでは魔法が使えるのだから、そっちを使った方が有効でしょ」


ฅ^>ω<^ฅ「魔法ロボだね★」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「はいはい……」


ฅ^>ω<^ฅ「HRP-5P!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「産業技術総合研究所(AIST)が開発したヒューマノイドロボットね。土魔法が使えるといいのかしら? 開発や製造にかかるコストが非常に高いため、一般的には約1億円から2億円程度とされているわ」


ฅ^>ω<^ฅ「ASIMO!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ホンダが開発した二足歩行ロボットね。回復魔法が使えるといいのかしら? 市販はされていなくて、レンタル費用としては1日あたり約200万円、1年間で約2,000万円」


ฅ^>ω<^ฅ「T-HR3!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「トヨタ自動車が開発した第3世代のヒューマノイドロボットね。水魔法が使えるといいのかしら? 価格は不明だけれど、開発や製造にかかるコストが非常に高いため、数億円程度と推定されているわ」


ฅ^-ω-^ฅ「高いね。探索者を雇った方が良さそう」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「だから、まだ実用的じゃないのよ……じゃあ、今日はこれで終わりね」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」


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