第三章

Side:黒猫 歌鈴

第28話 変わる現実(1)- Side:黒猫 歌鈴(青嶺高校)


(大変なことになってしまった……)


 ダンジョンへ行った記念!――的な感覚で、アップルパイを始め、第30階層で買ったスイーツを風奏ちゃんと一緒に食べた。


(美味しかった♡)


 じゃなくて、


(その動画を配信しただけなのに……)


 何やら、とんでもないフォロワーの数になっている。

 更に読む気が失せる程のコメントが付いていた。


 再生数と視聴時間も増える一方だ。

 最初は嬉しくて、はしゃいでいたのだけれど、今は逆に怖くなってしまった。


(よし、見なかったことにしよう……)


 これで安心!――とはならないけど、心の中にいくばくかの平穏へいおんおとずれる。

 それよりも、心配なのは学校の皆に「これが私だと気付かれないか」という点だ。


 今日は眼鏡めがねを掛けて、大人しく過ごすとしよう。

 本を読んでいれば、見た目だけなら文学少女である。そんな私に対し、


「もうすぐ、ハロウィンだね。歌鈴、ネコ耳付ける?」

「付けないよ!」


 と友人。彼女から装着させられたネコ耳カチューシャを慌てて返す。黒猫くろねこという苗字なので、この時期は皆、私に猫の格好をさせようとしてくるのだ。


(危ない、危ない)


 まあ、流石さすがに仮装用のネコ耳カチューシャで、正体がバレることはないだろう。

 けれど、念には念を入れる必要がある。


 昼休みも終わり、午後の体育はバスケだった。

 この時期は寒いので、女子は体育館、男子は武道場だ。


 バスケットボール、バレーボール、バドミントンなどの室内スポーツを行う女子に対して、男子はたたみかれた部屋で柔道となる。


「わぁ、歌鈴、すごい!」「運動神経良かったっけ?」


 と同じチームの女子たち。


(しまった……)


 ダンジョンでレベルを上げたため、身体能力が向上しているらしい。

 通常はダンジョン内と同様で、アバターにならなければ、その能力を地上で発揮はっきすることはできない。


 探索者シーカーといっても、基本的に『万応素マナ』がない状態では、常人とあまり変わらなかった。けれど、昨日は第50階層まで行っている。


 通常よりも、遥かに万応素の濃度が高い領域だ。

 ダンジョンから帰ってきた今でも、身体からだから万応素が抜けきっていないらしい。


 その所為せいで、身体能力が強化されているようだ。

 加えて、私のアバターは獣人種アニマ猫人族フェリス


 運動神経だけなら、他のアバターと比べても高い。

 高校生が体育の授業でする動きではなかった。


 相手チームの女子バスケット部員が、くやしそうな目で私を見ている。


(これは、ボロが出るのも時間の問題かな……)


 体育も終わり、最後の授業を睡魔すいまと格闘しつつ乗り切り、放課後は真っ直ぐに家へと帰ることにした。


 転校生であるため、私は部活に入ってはいない。けれど――


「黒猫さんに『お話がある』という方が来ています。急で申し訳ありませんが、ホームルームが終わったら、校長室へ行ってもらえますか?」


 と担任にお願いされてしまった。


(バレた……)


 と私は直感する。ダンジョンへ行ったのは校則違反ではないが、配信した動画が問題になってしまったのだろう。


「はい……」


 と私は大人しく返事をした。ここは進学校である。

 注意を受けてしまうのだろうか?


 優等生という程ではないけれど、成績は悪くないハズだ。

 一応、保護者の了解も(1千万円で)得ている。


(そこまで、問題にはならないといいな……)


 ウジウジと悩んでいても仕方がないので放課後、私は校長室へと向かった。


(あっ、星霞せいかくんにも連絡しておこう!)


 まだ、SNSでのり取りは緊張するけれど、これは正当な理由だ。

 よって、やましい行為こういではない!――と自分に言い聞かせる。


【分かりました。スグに行きます】


 と星霞くん。


(はて、どういう事?)


 まさか文面通り、学校へ来るつもりだろうか?

 きっと「校門の辺りで待っている」という意味だ。


(いやいや、それはそれで困る!)


 私は急いで「絶対、目立たないようにして」と返した。

 彼はこの辺では、ちょっとしたアイドル的存在なのだ。


 そんな星霞くんと仲がいいことが知れたら――


(他の女子から、どんな目で見られるか……)


 下手をすると、この学校にいられなくなる可能性もある。

 女の嫉妬は怖い――というのは「いつ、どの時代も、どんな場所でも」変わらないのだろう。


 私は校長室の前に立つと、とびらをノックする。


「はい、どうぞ」


 と返事があったので、私は「失礼します」と言って、部屋に入った。

 ここへ来るのは、転校してきた日以来だ。


「黒猫です。失礼します」


 挨拶あいさつをする私に対し、ヒョロリとした人の良さそうな校長先生が「よく来てくれました」と出迎でむかえてくれた。


 どうやら、怒られる雰囲気ではないようだ。


(そういえば、来客と言っていたけれど……)


 中央にあるソファーに腰を掛けていた人物が立ち上がった。

 スーツ姿の男性だけれど、違和感がある。


(もしかして、私と同じくくらいの年齢?)



🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️



*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*


ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」


ฅ^•ω•^ฅ「今日は『女の嫉妬』についてです」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「オラ、見てはならねえものを見てしまっただぁ~」


ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」


ฅ^-ω-^ฅ「まあ、実際に面倒だけどね」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「感情の激しさや、陰口や悪口、他人を蹴落とそうとする競争心とか、厄介なイメージよね」


ฅ^-ω-^ฅ「今日は私もやる気でないよ。でも、頑張る!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「ちっ」(早く終わると思ったのに……)


ฅ^>ω<^ฅ「じゃあ、始めるよ♪ 嫉妬しやすい女性の特徴! まずは『自己評価が低い人』!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「自分に自信がないと、ついつい他人と自分を比較してしまうわね。」


ฅ^>ω<^ฅ「次は『完璧主義者』!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「自分だけじゃなく、他人に対しても高い期待を持っているタイプね。常に完璧を求めているわ」


ฅ^>ω<^ฅ「過去に『トラウマがある人』!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「過去の経験から、他人に対して不信感をいだきやすいのね――って、なぜ私を見る⁉」


ฅ^>ω<^ฅ「他人の評価を気にする人!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「他人の評価や意見に敏感びんかんで、常に他人の目を気にするタイプね。内向型で調和や協調性を重視する日本人に多いわ」


ฅ^>ω<^ฅ「競争心が強い人!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「他人と競争することが好きで、常に勝ち負けを意識している人ね。こっちは外向型の特徴よ」


ฅ^-ω-^ฅ「ふー、なんだか疲れたよ」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「そうね、今日はここまでにしましょう」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」


*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*

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