章間
Side:羊川 芽莉
第25話 中堅ダンチューバーの苦悩(1)- Side:羊川 芽莉(自宅)
中堅ダンチューバー
視聴者数の停滞である。
20代の頃に副業のつもりで始めたダンチューバーだったけれど、思いのほか楽しかった。そんな彼女の仕事は結婚相談所の社員だ。
比較的安定した職業といえる。
彼女が仕事で習得したスキルや知識を活かした恋愛相談は特に人気だった。
基本的には、ダンジョン内にあるホテルへ泊まり、部屋から行うゲームの実況配信や探索者らしくモンスター
視聴者数は少しずつ増えてきたのだけれど、最近はコンテンツのマンネリ化に悩んでいた。
(婚活ブームやオンラインサービスの普及で仕事が
趣味とはいえ、それなりの誇りを持って配信している。
仕事でのストレス解消も兼ねていた。
(やっぱり、新規視聴者の獲得が課題かしら……)
大きな箱(多数のダンチューバーが所属するプロダクション)に入るのも手だったが、活動内容やスケジュールに制約がある。
仕事をしながらでは無理だろうし、近しい人には自分がダンチューバーだとバレてしまうだろう。特に、今付き合っている彼氏の反応は予想できない。
彼女は悩みながらも、自分の動画をチェックする。
作成したハイライト(長時間の配信から特に面白い部分や重要なシーンを抜き出して、視聴者が観やすい形にした動画)の確認である。
「メェーメェー、みんな! ようこそ『小悪魔メェリィのダンジョン恋愛相談室』へ!」
と
羊川芽莉のアバターである。
見た目通りの『小悪魔』といったところだろう。
名前は『メェリィ』。衣装は少し
髪の色は
いつもはメガネをかけていて、知的で落ち着いた印象を与えるように心がけている。この動画配信を観ただけでは、誰も彼女だとは思わない。
「今日は人気のコーナー! ダンジョンデートのアドバイスをするよ、メェー」
🟡メェリィ、ありがとう!これで安心してデートできる!
🟢メェリィ、いつもありがとう!
🔵メェリィのアドバイス、いつも的確で助かる!
🟣ダンジョンデートの計画、しっかり立てなきゃね、メェー
視聴者からの反応も良いようだ。
「今日は『息をするのもメンドクセェ』さんからの質問に答えていきます。ダンジョン初心者みたいだから、皆も優しい気持ちで見守ってあげてね、メェー」
🟡メェー
🟢メェー、メェー
🔵分かった、メェー
🟣シープ!
【視聴者『息をするのもメンドクセェ』さんの質問:ダンジョンデートで、トイレに行きたいときはどうすればいいの?】――というテロップが出る。
「これは良い質問ですね! ダンジョンデート中にトイレに行きたくなることは、誰にでも起こり得ることです。次の3つの方法を
① 事前に計画を立てる
「ダンジョンに入る前に、トイレの場所を確認しておきましょう。デートの途中でトイレに行くタイミングを計画しておくと、スムーズに行動できるよ、メェー」
② 正直に伝える
「デート相手に対して、正直に『ちょっとトイレに行きたい、メェー』と伝えましょう。自然なことなので、相手も理解してくれるハズです、メェー……あっ、メェーは
🟡分かってる
🟢言わないよ
🔵そんなの語尾につけるのメェリィだけ
🟣おもしれー女
③ 休憩ポイントを利用する
「ダンジョン内には休憩ポイントがあることが多いです。休憩ポイントで一息つきながら、トイレに行く時間を確保しましょう、メェー」
🟡トイレ問題、私も気になってた!助かる~
🟢正直に伝えるのが一番だよね、ありがとう!
🔵休憩ポイントを利用するの、いいアイデア!
🟣トイレの場所、事前に確認するの大事だね
「以上、ダンジョンデート中のトイレ問題についてのアドバイスでした!『息をするのもメンドクセェ』さん、参考になりましたか? 他にも恋愛相談があれば、どんどん送ってくださいね!」
🟡メェー
🟢メェー、メェー
🔵メェー、忘れてる
🟣シープ!
「メェーメェー、みんなの恋愛を応援してるよ!」
ここで動画は終わる。
(特に問題はなさそうね……)
芽莉はダンチューブに動画をアップした後、人気の動画をチェックした。
最近の
「ティーダンジョン?」
見慣れない動画を発見する。
(
🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️
*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*
ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」
(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」
ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」
ฅ^•ω•^ฅ「今日は『植物の温度記憶』についてです」
(˶ᐢ. .ᐢ˵)「私はダンジョン育ちの野菜人だ!」
ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」
(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」
ฅ^-ω-^ฅ「で、植物の温度記憶って何?」
(˶ᐢ. .ᐢ˵)「植物は中枢神経系を持たないにもかかわらず、過去に経験した温度を『覚える』ことができるそうよ」
ฅ^-ω-^ฅ「記憶? 植物が? 例えば?」
(˶ᐢ. .ᐢ˵)「冬の寒さを経験した植物は、春に花を咲かせるタイミングを調整することができるそうよ」
ฅ^>ω<^ฅ「なるほど、温度記憶のメカニズム🧬だね」
(˶ᐢ. .ᐢ˵)「文法おかしいわよ。分かってないでしょ! 主に以下のような分子メカニズムによって実現されるわ」
1)エピジェネティクス🧬:
DNAのメチル化やヒストン修飾などのエピジェネティックな変化が、温度情報を『記憶』する役割を果たします。
2)タンパク質の変化🧪:
特定のタンパク質が温度変化に応じて構造を変え、これが信号として伝達されます。
ฅ^>ω<^ฅ「おお、なんか
(˶ᐢ- -ᐢ˵)「いや、絶対に分かってないわよね」
ฅ^>ω<^ฅ「教えて、ゴロニャン♪」
(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ダンジョン内の過酷な環境に適応できる植物や、特定の温度で毒を生成する植物、温度記憶を活用して、効率的に
ฅ^>ω<^ฅ「ダンジョンは色々な可能性があるね!」
(˶ᐢ. .ᐢ˵)「じゃ、今日はここまで」
ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」
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