第23話 どらごんメイド召喚!(2)- Side:天霧 星霞(ダンジョン:星空橋)


 第49階層――ここが最後の難所なんしょとなる。

 ダンジョン協同組合によって、規定が改定された。


 探索者シーカーは3名以上のチームを組まなければならない。

 そんなルールが適用されてしまった。


 一見、安全性を考慮した決まりごとのようだけれど――


(高位の探索者にとっては、足枷あしかせでしかないな……)


 低レベルや興味本位で探索者となった人たちの数をふくめると「ダンジョンの数に対して、探索者の数は多い」と言えるだろう。


 しかし「第50階層へ潜ることができる探索者」という条件に変えた場合、その数は極端きょくたんに減る。


 今後は自分のように――低レベルの探索者を連れ出し――人数合わせとする探索者が増えるハズだ。


(この方法も、いつまで通用するかは分からないけれど……)


 現場を知らない、数字だけを見て考えた『机上きじょう空論くうろん』というヤツなのだろう。

 このルール改訂によって、ダンジョンの管理機能はいちじるしく低下する。


 今回、僕が受けている依頼は「第120階層に出現したボスの討伐とうばつ」だ。

 ダンジョンでは定期的に、ボスが復活することがある。


 踏破クリアしたことにより、ダンジョンの管理は可能になるのだけれど――


(『万応素マナ』の対処までは、完璧とはいかないか……)


 魔法やアイテム、動植物の他、ダンジョン自体を構成するためのエネルギーでもある。ダンジョン内に万応素を循環じゅんかんさせないワケにはいかない。


 当然、万応素はモンスターの発生源でもあった。

 濃度が高くなれば、それだけ強力なモンスターが出現するようになる。


 第50階層までなら、観光ダンジョンとして利用するなど、万応素の濃度を人工的に制御することも出来た。けれど、それ以上の深さは定期的に見回る必要がある。


 でなければ、今回のように「ボスが再び出現する」というワケだ。

 けれど、肝心の第50階層以降へ潜ることができる探索者となると――


(3人用意するのは、かなり効率が悪い……)


 ダンジョンを管理する会社としても、高レベルの探索者の確保に動くハズだ。

 今まで1人で足りていたモノが、3人必要となる。


 自分たちが所有するダンジョンを管理するだけで、手一杯になるだろう。

 それは、ダンジョンの攻略や管理に回せる人材が減ることを意味する。


 結果、このままだと「ダンジョンからモンスターがあふれ出す」というワケだ。

 そして、大きな被害が出る。


 政治家や官僚が失脚するのは構わないが、民間人に被害が及ぶのは看過かんかできない。

 それに、失脚した官僚には「別のポストが用意されている」というのが日本という国である。


 いたくもかゆくもない――というワケだ。


(責任の所在も、有耶うや無耶むやにされるに決まっている……)


 政治家としては解散総選挙だろうか?

 アレを行った場合、約600億円を使うそうだ。


 友達に換算すると約6万人が犠牲になる計算である。

 さらに国民には、直接総理大臣を選ぶ権利はない。


 与党内から新しい総理大臣が選ばれたところで、国民の生活は何も変わらないだろう。いや、それよりも、国会運営費だ。


 以前、1日あたり「約3億3,600万円も使う」というのを聞いたことがある。


(友達が毎日33人も減っていく計算だ……)


 ボスの出現は、ダンジョン災害の一つである『モンスターの大群暴走スタンピード』を加速させる。


 そんな、最悪の未来の可能性をつぶすためにも、今回の依頼は急いで達成する必要があった。


「やっぱり、大きいね」

「モンスターの大群暴走スタンピードに備えての防壁だからね」


 とは、カリンとフーカ。第49階層から第50階層へと転移するための場所は、巨大なドームで囲まれていた。


 フーカの発言通り、下層からのモンスターの出現を食い止める意味合いが強い。

 ダンジョンを破壊したとしても、基本的には再生する。


 災害初期の頃は、転移の魔法陣を破壊しようとこころみたようだけれど――


(他の場所や別の階層に、新しい魔法陣が出現するだけだったと聞く……)


 よって、現状は『囲む』というのが、もっとも有効な防衛手段である。


「おっと、そうだった」


 聞こうと思っていたんだけれど――とカリン。僕が第49階層から第50階層へと転移するための申請をしていると、何か言いたそうに声を上げた。


 現在のカリンとフーカのレベルは10。

 ここからは「一気にレベルを上げる」という方法はひかえる予定だ。


 自分と相性のいいスキルを模索もさくしながら、創意工夫でダンジョンを探索するのがいい。スキルというのは、仲間のスキルとの組み合わせも重要である。


 そのため、モンスターとの戦闘はけ、ここまで走ってきた。

 まあ、基本的に僕と一緒なら――


(襲われることはないのだけれど……)


 大抵たいていのモンスターは、自分よりも強い存在との遭遇をける。

 ただ、性格もあるのか、すべてのモンスターがそうとはいえない。


「セーカくんの『クラス』を聞いてなかった……」


 教えて――とカリン。彼女が言うには「騎士ナイトだと思って、確認するのを忘れていた」という事らしい。


「僕のクラスは騎士の『ライダー』ですよ」


 正確には、騎士は下位クラスである。この他に中位クラスと上位クラス。

 さらに上に伝説レジェンドクラスがある。


 けれど、そこまでは聞かれていないだろう。

 一般的には、知られてもいない。


「サブクラスは『武人ウォリアー』で、現在は『竜騎士ドラゴンナイト』といったところです」


 と簡単に答える。ちなみにサブクラスはレベル20になると選択できる。

 スタイルを設定することは出来ないが、メインとなるクラスの他に「もう一つクラスを持つことが可能になる」というワケだ。


 レベル30になると、メインクラスを中位クラスへ変更できた。

 なので、探索者の間では、そこまでが常識だろう。


すごーい」


 と素直に感心するカリンとは違って、


「だったら、ドラゴンに乗せてくれればいいのに……」


 とフーカ。そういう事に関しては、頭の回転が速い。


「すみません。『中深部』(第21階層から第80階層まで)で召喚すると、皆さんおどろきますから……」


 僕はそう回答した後、


「それに、別の階層に移動すると、再召喚が必要となります」


 と説明を補足する。厳密げんみつには転移装置を利用するのに、申請がいるのだけれど、間違った説明ではない。


 今までは走ってきたので、数分で各階層を突破してきた。

 いちいち召喚していたのでは「効率が悪い」というのは明白だ。


「なら、仕方がないわね」


 そう言って、フーカは納得する。


「でも、次の階層では召喚する予定です」


 戦闘能力を考えれば、彼女たちのボディガードとしては申し分ない。

 興味があるのか、カリンとフーカは目をキラキラとかがやかせた。


(どうやら、ドラゴンを見たかっただけらしい……)



🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️



*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*


ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」


ฅ^•ω•^ฅ「今日は『日本の人手不足』についてです」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「えっ? 人を減らす政策ばかりしてきた結果でしょ……」


ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」


ฅ^-ω-^ฅ「まあ、人口減少は日本だけじゃなくて、先進国で共通の問題だよ」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「政治に期待するのはあきらめて、自国の比較優位を見出みいだすべきね」


ฅ^-ω-^ฅ「比較優位?」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「他国と比べて、効率的に生産できる分野のことよ」


ฅ^>ω<^ฅ「なるほど、日本は高品質な製品や精密技術で世界から評価されているよね!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「日本の強みを活かして、イノベーションを推進させることで、競争力を高めましょう――という話よ」


ฅ^>ω<^ฅ「ロボティクスと自動化🤖!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ロボティクス技術は世界をリードしているようね。自動化技術を活用することで、人手不足を補って、生産性を向上させないと――工場の自動化や介護ロボットの開発に期待ね」


ฅ^>ω<^ฅ「グリーンテクノロジー🌱!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「環境問題への対応は急務ね。再生可能エネルギーや省エネ技術の分野でリードしないと――太陽光発電、風力発電と言いたいけれど、問題もあるのよね。最新のゴミ焼却場では、発電や熱供給も可能よ」


ฅ^>ω<^ฅ「医療技術とバイオテクノロジー🧬!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「高齢化社会に対応するため、医療技術も進化よ。皮肉かもしれないけれど、日本の医療技術は世界的で高い評価を受けているのよね――再生医療や遺伝子治療、医療機器の開発に期待しましょう」


ฅ^>ω<^ฅ「情報通信技術(ICT)📡!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「デジタル化が進む現代社会において、ICT分野での競争力を高めることは重要ね――5G技術、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)の活用……ユーザーの行動や思考パターンを模倣もほうする『分身AI』なんて面白そうね」


ฅ^>ω<^ฅ「観光と文化産業🎎」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「日本の豊かな文化や観光資源を活かして、観光産業を強化することで経済を活性化といきたいけれど――現在はやっぱりアニメ産業かしら? インバウンド観光の促進や文化イベントの開催に期待したい所だけれど……結局、人材不足っていうオチなのよね」


ฅ^>ω<^ฅ「勉強になった!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「まあ、人材不足だからこそ『みがかれる技術もある』ということね」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」


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