Side:天霧 星霞

第22話 どらごんメイド召喚!(1)- Side:天霧 星霞(ダンジョン:星空橋)


 ここまでの道程は順調といっていいだろう。少し強引な手段で連れてきた彼女たちだったけれど、問題なくダンジョンに適合しているようだ。


 それが分かっただけでも、拾い物である。アイスゴーレムを倒した後、順調にスノーハーピーとフロストスライム、アイススピリットを退治した。


 レベルも10へと無事に到達できたので、まずは一安心だ。


「やったよ、セーカくん! レベル10になった」


 と喜ぶカリン。意識しているワケではないのだろう。

 彼女の感情に合わせて、勝手に三角のネコ耳がピコピコと動く。


 立てた尻尾もユラユラと揺れた。最初は遠慮えんりょをしているのか、ぎこちなかったカリンだったけれど、今では普通に会話ができている。


 ここはさらに好感度を上げておくべきだろう。


「カリンが頑張ったからですよ。おめでとうございます」


 そう言って、彼女の手を取った。

 僕は曲げた人差し指で猫人族フェリスであるカリンの喉元のどもとをなぞる。


「ふみゃあっ」


 と声を上げ、顔を真っ赤にするカリン。反応が面白い。

 怒っているワケではないようなので、今後も適度なスキンシップをためしていこう。


 一方、そんな僕たちの様子を見て、


「別に食事をしていれば、レベルが上がったんじゃないの?」


 とはフーカ。嬉々ききとして戦闘に参加していたクセに「宿で引きこもっていれば良かった」そんなことを言う。僕は彼女にゆっくり近づくと、


「フーカも、おめでとうございます」


 そう言って、フーカをき上げる。

 そして、小さい子供と遊ぶ時のように、その場でグルグルと回った。


 モコモコしているうえ、異様に軽い。

 もう少し、食べた方がいいだろう。


「やめっ! 目が――」


 きゅーっ――といった感じでフーカはフラフラになる。

 やりすぎたようで、目が回ったらしい。まあ、彼女の姉からは――


(少し乱暴にあつかってもいい――と許可はもらっているし……)


「問題ないですね」「大有おおありよ!」


 かさずフーカは文句を言ったようだけれど、いつものことなので放置。

 第50階層で待っていてもらう予定なので――


(これで「一緒に行く!」とは言わないだろう……)


 なんだかんだ言って、かまってちゃんなところがある。

 逃げ出すチャンスはいくらでもあったのに――


(ついてきたのが、その証拠しょうこだ……)


「では、予定通り――『クラス』に【スタイル】を設定してください」


 と僕は告げた。【スタイル】とはクラスにおける方向性だ。

 レベルを10へと上げたことで「本来の能力が解放された」ともいえる。


 例えば、『破砕者ブレイカー』であるカリンは『フォロワー』『スカウト』『マーチャント』のいずれかを設定できるようになっていた。


 また『聖職者クラージ』であるフーカは『ヒーラー』『オラクル』『ジハード』の選択が可能だ。


 今までは、破砕者なら破砕者用の『共通コモンスキル』と獣人種アニマの『種族スキル』のみの習得が可能だったのだけれど――


「【スタイル】を選択することによって、ステータスに補正が入るんだよね!」

「より専門的なスキルの習得が可能となるわ」


 とカリンとフーカ。破砕者の場合、フォロワーならサポート系のスキルが充実し、スカウトなら探索系のスキルの習得が可能となる。


 マーチャントならば、アイテム関連の取り扱に特化したスキルが習得できるだろう。どれも探索者なら「欲しい!」と思えるスキルだ。


「ここは人気のあるスカウトを選択するね」


 とカリン。一度、選択した【スタイル】は変更できないのだが、探索者としての今後を考えるのなら「無難ぶなんな選択」と言えるだろう。


「フォロワーを選択して、私につかえるネコ耳メイドになる予定だったのでは?」


 とフーカは首をかしげた。サポート特化も悪くはないが、色物になってしまいそうだ。いや、それよりも――


(どうして、フーカに仕えなくてはならないのだろうか?)


「調理系のスキルなら、ダンジョン以外でも役には立ちそうですね」


 と無難な回答をする僕と違って、


「その顔、絶対『面白い!』って思っている顔だよね……」


 そう言って、あきれたような表情をするカリン。

 短い時間ではあるけれど、フーカの性格を把握はあくしたようだ。


 フーカ自身、メイド服でも着せて、カリンで遊ぶつもりだったのだろう。


「えっ⁉ ダメなの?」


 とはフーカ。口に手を当て、おどろいている。

 断られるとは思っていなかったらしい。


折角せっかく、私のメイドになれるチャンスだったのに……」


 とつぶやいた。あまり有難ありがたくないチャンスである。

 どうやら、少なからず、カリンのことを気に入っていたらしい。


 別の回答を期待していたようだ。


(色々と間違っている気もするけれど……)


 しゅんとするフーカに対し、


「私たち、友達でしょ?」


 とカリン。落ち込んでいるフーカの手を取り、ニコリと微笑ほほえむ。

 一方でフーカは、


「と・も・だ・ち?」


 何故なぜか、初めて聞いた言葉のような反応をする。恐らく、不登校である彼女の頭からは、忘却ぼうきゃくされてしまった言葉らしい。


 フーカは「友達か……何もかも、みななつかしい……」そんな表情をかべた後、


「仕方がないわね。そこまで言うのなら『ともだち?』にしてあげるわ」


 フフン♪――と嬉しそうに胸を張る。カリンは戸惑とまどいながらも、


「えっと……よろしくお願いします?」


 そう言って、ぺこりと頭を下げた。


「フフフッ……どう、セーカ? 私の友達よ!」


 余程、嬉しかったのだろう。自慢してきた。

 一部始終見ていたので、特にコメントするようなことはないのだけれど、


「良かったですね」


 と僕は言った後「でも、カリンは僕の所有物ですから」と断っておく。

 どういうこと?――といった感じでカリンへ視線を送るフーカ。


 困った表情をするカリンの代わりに僕は、


「1千万で買いました」


 と教える。ポカンと口を開け、間の抜けた表情するフーカだったけれど、次の瞬間には、


「その手があったか!」


 そう言ってくやしそうに、その場にしゃがみ込む。


「お金さえ払えば、友達の1人や2人、簡単に買えますよ」


 僕は従妹いとこに世界の真実を告げた。


「いや、人として間違ってるよ!」


 カリンはそう言った後「うーん、でも、セーカくんの専属メイドということなら……」とつぶやく。


(どうして、友達から従者にランクを下げるのだろうか?)


 僕はそう思ったのだけれど、2人の姿が面白かったので、しばらくの間、だまってながめていることにした。



🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️



*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*


ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」


ฅ^•ω•^ฅ「今日は『エゾナキウサギ🐰』についてです」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「見た目はネズミよね。東京でスーパーラットを見れば?」


ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」


ฅ^>ω<^ฅ「小さくて丸い耳と短い足が特徴で、ネズミのような外見をしているけれど、ウサギの仲間だよ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「その愛らしい姿と高い鳴き声が人気よ。スーパーラットと違って、殺鼠さっそ剤に耐性はないみたいね」


ฅ^>ω<^ฅ「エゾナキウサギは、北海道の高山帯に生息する小型の哺乳類だよ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「体長は約10-20cm、体重は60-150gで、夏毛は赤褐色せきかっしょく、冬毛は灰褐色はいかっしょくになるらしいわ」


ฅ^>ω<^ฅ「岩場に巣を作って、植物を食べて生活するよ! 冬眠はしないで、夏から秋にかけて食料をたくわえるんだって!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「鳴き声が特徴的で『キィッ』や『ピュー』といった高い音を発するそうね……」


ฅ^>ω<^ฅ「キィッ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「ピュー!」


ฅ^-ω-^ฅ「残念ながら、動物園での飼育は難しいみたい……」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「私みたく、非常にデリケートな環境でしか生息できないみたいね。低温環境が必要で、人工的に再現するのは難しいらしいわ」


ฅ^>ω<^ฅ「キィッ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「ピュー!」


ฅ^>ω<^ฅ「然別湖周辺や十勝岳望岳台、大雪山国立公園など、色々な場所で観察できるみたい!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「私と同じでデリケートだから、双眼鏡を使って静かに観察してね」


ฅ^>ω<^ฅ「キィッ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「ピュー!」


ฅ^>ω<^ฅ「多くの場所ではガイドツアーが提供されているみたいだから、利用するのが良さそう!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「登山とか面倒……」


ฅ^>ω<^ฅ「キィッ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「ピュー!」


ฅ^>ω<^ฅ「体力もそれなりに必要だけれど、しっかりと準備をすれば大丈夫!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「エゾリス🐿️、エゾシマリス🐿️、エゾフクロウ🦉にも会えるかも……」


ฅ^>ω<^ฅ「キィッ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「ピュー!」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」


*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*

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