第21話 目指せ!50階層(3)- Side:黒猫 歌鈴(ダンジョン:星空橋)


「順番が大事よ、ずは私がやるわ!」


 そう言って、もこもこウサギのフーカちゃんはジャンプする。

 スキル〈ハイジャンプ〉を使用したようだ。


 要は物凄ものすごく高い位置までジャンプするスキルである。

 筋力は関係ない。獣人種アニマ兎人族ラビナが得意とするスキルでもあった。


(私も習得しているけど、そこまで高くは飛べない……)


 種族による適性があるのだろう。フーカちゃんは10メートルほどの高さまで飛び上がると、武器をロッドから大槌ハンマーに換装する。


 そして、そのまま――マンション3階ほどの高さから――自由落下。

 地面には先程、セーカくんと衝突しょうとつし、ほぼ半壊状態となっている『アイスゴーレム』がいた。


 名前がしめす通り「氷の巨人」といった風体ふうていである。


おそってこなければ、綺麗なのに……)


 第21階層から、ここ第41階層に来るまで、何度も見掛けたモンスターだ。

 水色に近い氷のブロックが組み合わさり、光に反射してキラキラと輝いて見える。


 最初は私の腰の位置程度の大きさだった。

 人型ということもあって、小さな子供くらいのサイズだ。


(人形のようで可愛かったのだけれど……)


 それが今では3メートルを優に超える巨体となっている。

 他のモンスターと同じで、階層が増すことに、強く大きくなるらしい。


 当然、手足も太くなっていた。

 あんなモノで殴られたのなら、ただの怪我けがでは済まない。


(本来なら、脅威きょういなんだけれど……)


 今はセーカくんと衝突した結果、右足が何処どこかへ飛んでいってしまったようだ。

 行方不明である。同時に片足を失ったことで、巨体を支えることが難しくなったのだろう。


 バランスをくずし、地面へ尻餅しりもちを突いたところに「丁度いいです……ねっ!」と言ったセーカくんに蹴飛けとばされる。足の裏を使った飛び蹴りだ。


 第41階層からは、今まで通ってきた階層と違って、草行そうこう露宿ろしゅく――道なき道を行く――といった状況となった。整備された道はない。


 氷の塊でもあるアイスゴーレムを使い、セーカくんは地面をならしたようだ。


地均じならしには、巨人を使うのが常識ね」


 とはフーカちゃん。どうやら、世界をつぶす気のようだ。

 トドメは2人にお願いしますね――とセーカくん。


 その台詞セリフが、現在の流れにつながっている。

 私たちの経験値用にと、手加減をしていたらしい。


 フーカちゃんの大槌ハンマーが直撃すると――振り下ろしたいうよりは、ただつけただけだったけれど――黒い魔力の力場が、大槌ハンマーを中心にして、球状に発生する。


 彼女の武器は『おカネの力』――


(じゃなかった……)


 彼女の武器は『グラビティハンマー』……いや、カスタマイズされた『グラビティピョンマー』だ。


なにそれ?)


 真っ白な大槌ハンマーにウサギの耳とピンクのリボンが付いていて、顔まで書いてある。

 観賞用としても使える可愛らしいデザインの武器だ。


 そして、発生した黒い魔力の力場は、そこだけ重力が強くなっていた。

 かすかな地面のれと、アイスゴーレムを中心に土がえぐれる。


 ただでさえ、半壊状態のアイスゴーレム。

 そのボディひびが広がり――バリンッ!――と完全にくだる。


 重力攻撃は相手が大きいほど、相手が重いほど、ダメージが大きい。

 全身が氷でできている巨人とって、かなり効果的な一撃といえる。


 一方で、フーカちゃんのふわもこ装備は、重力攻撃の影響を受けにくいらしい。

 見た目と違って――


随分ずいぶんと凶悪なウサギだね……)


「回復役って言ってなかったっけ?」


 そう言って、私は作戦通りむちるう。

 電気をまとった鞭『エレクトロウィップ』である。


 通常は「敵の防御力を低下させる効果」があるのだけれど、相手は氷のかたまりだ。

 フーカちゃんの攻撃でき出しとなったコアである『青い球体』に当たった途端とたん――バンッ!――とショートしたような音が鳴った。


「上手いじゃない」


 と感心するフーカちゃんに対し、


「ビギナーズラックだよ」


 と私は返す。実際には、命中率は『DEX』(器用さ)の値が影響するので厳密げんみつには異なる。『結果集束論』というヤツだ。


 うろ覚えだったので、セーカくんに確認したところ「ダンジョン(異世界)での事象は先に結果が決まっていて、それに対して集束するようにすべてが動いている」という説らしい。


 スキルや魔法があり、ゲームのような世界観なのは、それが理由だとされている。

 簡単に言うと「王道のゲームであれば、勇者が魔王を倒す」のが結果だ。


 プレイヤーはその筋書きに向かってプレイ(集束)する――ということらしい。

 ステータスがあって、レベルが上がって、スキルや魔法が存在するのは「その法則が働いているから」ということの証明なのだとか――


(じゃあ、レベルが30前後までしか上がらない人たちは……)


 結果へ向かうためのアプローチである『何か』を間違えているのかもしれない。

 まあ、今は余計なことを考えずに――


(目の前の敵を倒そう……)


 私の鞭が再びアイスゴーレムの核に当たると、今度は巻き付いた。

 MPを消費してしまうのだけれど、私はそのまま電撃攻撃を開始する。


 やがて、核は砕け散り、万応素マナの粒子となってアイスゴーレムは消失を始める。

 レベルは完全にアイスゴーレムの方が上なのだけれど、無事に核を破壊することができた。


 戦闘においては、相性というのが大事らしい。

 私とフーカちゃんのレベルが上がる。セーカくんも満足そうだ。


 最初は私なんかが戦えるのか心配だった。

 けれど、弱い相手をたくさん倒すよりも――


(このり方は、効率がいいのかも……)


 レベル10も第50階層も問題なく、到達できそうである。



🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️



*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*


ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」


ฅ^•ω•^ฅ「今日は『北海道の代表的な森林🌳』についてです」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「北海道の森林における多くの問題は、人間の活動が原因だけどね」


ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」


ฅ^>ω<^ฅ「人間は森林を保護し、再生するための重要な役割も果たしているよ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「森林伐採に気候変動、外来種の持ち込みに観光客の増加、開発と都市化よる森の分断……やはり、地均じならしが必要なようね」


ฅ^>ω<^ฅ「――はいはい! まずは知床国立公園🌳」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「春は新緑、夏は豊かな緑、秋は紅葉、冬は雪景色」


動物:ヒグマ🧸、エゾシカ🦌、オジロワシ🦅。

植物:トドマツ🌲、エゾマツ🌲、ミズナラ🌳。


ฅ^>ω<^ฅ「次は大雪山国立公園🏔️」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「春は花々、夏は登山、秋は紅葉、冬はスキー」


動物:エゾシカ🦌、キタキツネ🦊、エゾナキウサギ🐰。

植物:ハイマツ🌲、ウラジロナナカマド🌳、エゾノツガザクラ🌸。


ฅ^>ω<^ฅ「そして、支笏洞爺国立公園🌊」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「春は桜、夏は湖水浴、秋は紅葉、冬は氷上釣り」


動物:エゾリス🐿️、エゾフクロウ🦉、エゾモモンガ🐹。

植物:ミズナラ🌳、イタヤカエデ🍁、カツラ🌲。


ฅ^>ω<^ฅ「最後は阿寒摩周国立公園🌋」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「春は花々、夏は湖水浴、秋は紅葉、冬はスキー」


動物:エゾシカ🦌、エゾフクロウ🦉、タンチョウ🦢。

植物:トドマツ🌲、エゾマツ🌲、ミズナラ🌳


ฅ^>ω<^ฅ「まだまだ、いっぱいあるけど、今日はここまで!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「豊かな自然を守るには、持続可能な森林管理と地域社会の協力が不可欠ね」


ฅ^>ω<^ฅ「人間は害悪なんかじゃないよ! 共に自然を守って育てる存在だよ!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ダンジョンにとっては、探索者が害悪かもね……」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」


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