第20話 目指せ!50階層(2)- Side:黒猫 歌鈴(ダンジョン:星空橋)


 私たちは現在、第41階層へと来ていた。セーカくんが言うには「ここからは戦闘を行って、レベルアップをしてもらいますね」ということだ。


 レベル10になるのが目的のようだけれど――


(強いモンスターが出そうな場所にきてしまって、大丈夫だろうか?)


 フーカちゃんは明らかに嫌そうな顔をする。

 きっと言葉にしてもムダなので、黙っていることにしたのだろう。


 昨夜は第30階層のホテルに泊まり、温泉と食事を楽しんだ。

 体調は万全といってもいい。


(セーカくんが一緒だと、大丈夫な気がするから不思議だ……)


 ちなみに『夜』といっても、ダンジョン内には太陽がないため、暗くなるワケではない。空は明るいままである。


 ダンジョンの種類によっては、ずっと夜の場所や、明るさが変化する場所もあるようだ。本来、このダンジョンも同じなのだろう。


 しかし、すでに踏破クリアされ、管理者がいる。

 そのため、設定を変更しているらしい。


 セーカくんの話によると、第21階層から第30階層にかけては夜がおとずれるそうだ。

 確かに、昨日は21時から22時にかけて、次第に暗くなっていった。


(私は寝ていたから、知らなかったのだけれど……)


 4時から5時に掛けて明るくなるらしい。動植物も育てているので「天候も操作することが可能」というのだから、いたれりつくくせりである。


 第30階層には、自給自足のためのダンジョンファームもあるようだ。

 可愛い動物がいるのなら、行ってみたいモノである。


 育成関連のスキルに特化した探索者シーカーやとっているのだろう。


(モンスターも出ないしね……)


 未踏破のダンジョンは本来、第20階層、第30階層、第40階層と10階層ごとにボスが出現する。その名残なごりなのか、現在の第30階層にはモンスターが出現しないそうだ。


 当然、誰かが故意こいに持ち込んだり、他の階層から迷い込んだりした場合は別である。念のため、ホテルの周辺には「モンスター除けの結界が張ってある」とのことだった。


肝心かんじんのホテルだけれど……)


 それほど大きくはない。場所がダンジョンということもあって、私たちが泊まったホテルはペンション(洋風民宿)に近かった。


 RPGにおける宿屋をイメージしているようだ。

 スマホをかざせばチェックインできるのが普通である――このご時世において――えて、フロントに受付スタッフを配置していた。


 私が「ミステリー小説だと、事件が起きそうな雰囲気だね」などとフーカちゃんにこっそりささやくと、突然、


「謎はすべて解けた」


 と彼女は得意気に声を上げる。そんなフーカちゃんに対して、


「勝手に事件を起こさないでください」


 とセーカくん。けれど、


「犯人は、この中にいる!」


 さらに悪ノリするフーカちゃん。ストレスが溜まっていたのだろう。

 引きこもりがいきなり、ダンジョンへ連れてこられたのでは仕方がない。


「すみません。私がやりました。でも、仕方なかったんです」


 とホテルの支配人は頭を下げる。


「いえいえ、犯人は私です。支配人は悪くありません」


 と今度は女性のスタッフだ。


「ノー、拙者ガ犯人デース!」


 続いて、謎の外国人観光客。手に持っているのは十手じってだけれど、突っ込むのも面倒である。この状況に一番戸惑とまどっているのは、もこもこウサギのフーカちゃんだ。


 彼女にとっても、想定外のことが起きているのだろう。

 私には見守ることしか出来ない。


「ほら、ダンジョンに来るような人は、こういうノリが好きなんですから……」


 謝ってください――とセーカくんに言われ、


「す、すみませんでした」


 フーカちゃんは素直に頭を下げる。


「いえいえ、ダンジョンに来るような子供は皆、そんな感じです」

「この年頃の子は、心に闇を抱えていますからね」

「苦シューナイ、近―寄レ」


 皆が和やかな空気になる中、フーカちゃんが一人、顔を真っ赤にしてうつむいてる。


「すみません。ウチのが、心の闇をさらけ出してしまって」


 今度はセーカくんが頭を下げた。


(もう、気の毒で見ていられないよ……)


 セーカくんの説明によると、私たちが泊まったホテルは素朴なサービスと親しみやすさが特徴らしい。第30階層には他にも、個性的なホテルが多くあるようだ。


 そのどれもが、ドラマや映画のセットなどで使えそうな造りをしていて、和風のモノや民宿風のモノ、ファンシーなデザインのモノまであるという。


 ちょっと、興味がいてしまった。

 また、温泉の方だけれど『ダンジョン温泉』と呼ばれているようだ。


 【温泉の魔石】というアイテムが存在し、MPを消費することで水がき出る仕組みになっている。よって、硫黄いおうにおいなどはしない。


 そこから湧き出た水を皆で共有し、かして使っているそうだ。

 HPとMPの回復、一時的なステータスの向上、スキルや魔法を使用する際のMP消費軽減、アイテムのドロップ率アップ――と探索者にとっては有難い効能である。


 部屋はそれぞれが個室で、朝までぐっすり眠れた。

 食事はダンジョン産の食材をふんだんに使っているそうで、ここでもレベルアップ。私のレベルは6から7になった。


 まずは夕食だけれど、丸いフランスパンがそのまま器になったチーズフォンデュだ。


 温野菜やソーセージにからめて食べるのはもちろんだけれど、チーズがしみ込んだパンも丸ごと食べられる。そのため、お腹も大満足だった。


 また、煮込みハンバーグとオムライスの乗ったプレートも美味しかった。

 うまみを閉じ込めて、ふっくらと焼き上げたハンバーグに、熟成じゅくせいさせたデミグラスソースがよく合う。


 お酒が飲めるようになったら、また来たいところである。他にもパスタやロースカツなどの多彩なメニューがそろっていて、いろいろな組み合わせが楽しめるようだ。


 母親に1千万で売られた時はどうしようかと思ったのだけれど「ダンジョン観光も悪くはない」と思ってしまった。


 朝食はビュッフェ形式で、ホテルとは別の場所での食事となった。

 好きなモノを選んで会計する仕組みだ。


(自分のペースで食事を楽しむことが出来るのはいいけれど……)


 ついつい食べ過ぎてしまいそうになる。また、朝食時は混雑するようだ。

 もう少し、早くくれば良かったよ――と私は後悔する。


 朝食後、温泉にゆっくり入りたかったのだけれど「湯冷めして風邪を引くといけない」という理由から断念する。セーカくんは情報を集めていたようで、


「ダンジョンインダストリーズの連中は泊まらなかったのか……」


 急ぎの依頼か――などと一人つぶやいていた。フーカちゃんはダンジョンファームで作られた珍しいスイーツをいくつか買ってもらえたので、機嫌がよくなっている。


 そのまま、昨日と同じく第31階層から第41階層まで「戦闘をけて走ってきた」というワケである。


 ダンジョンの規定が変わったらしく、第30階層と第40階層へいどむのに3人以上のチームが必要だったらしい。



🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️



*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*


ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」


ฅ^•ω•^ฅ「今日はアップルパイについてです」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「さっき、おやつに買ってもらったのがあるわ♪ 本編なんか無視していいわね。いただきます!」


ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」


ฅ^-ω-^ฅ「えっと……リンゴ🍎って、どうして寒い地方で育てているの?」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「休眠期間や病害虫の抑制といった理由があるのだけれど……要は寒冷な気候と豊かな土壌で育つことにより、甘味と酸味のバランスが絶妙になるのよ」


ฅ^>ω<^ฅ「じゃあ、アップルパイに向いているリンゴの種類を教えて!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「果肉がしっかりしていて、煮崩にくずれしにくいのがいいから……」


🍎紅玉こうぎょく:酸味が強く、果肉がしっかりしているため、煮崩れしにくい。

🍎ジョナゴールド:甘味と酸味のバランスが良く、加熱しても美味しい。

🍎あかね:煮崩れしにくく、酸味がしっかりしている。

🍏シナノゴールド:強い甘味と程よい酸味が特徴で、加熱しても食感が残る。

🍎サンふじ:甘味と酸味のバランスが良く、歯応えもある。

🍏きおう:果肉が硬く、加熱しても煮崩れしにくい。


ฅ^>ω<^ฅ「じゃあ、生地をサクサクにするコツは?」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「次の3つのポイントかしら……」


1)冷たいバターを使用する:バターを冷やしておくことで、生地がサクサクになる。

2)水分を控えめに:生地に加える水分は最小限にし、必要に応じて冷水を少しずつ加える。

3)生地を冷やす:生地を作った後、冷蔵庫でしっかり冷やすことで、焼き上がりがサクサクになる。


ฅ^>ω<^ฅ「あと、サクサクとは関係ないけれど……リンゴ🍎のピューレを使うと、アップルパイのフィリングが滑らかになって、リンゴの風味がより一層引き立つみたいだよ!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「全体の味がまとまりやすくなるようね」


ฅ^>ω<^ฅ「じゃあ、最後はアップルパイに合う飲み物を教えて!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「好きなのを飲めばいいと思うのだけれど……」


☕アールグレイティー:ベルガモットの香りがリンゴ🍎の風味を引き立てる。

☕ダージリンティー:フルーティーな香りがアップルパイと相性抜群。


☕アッサムティー:濃厚な味わいがアップルパイの甘さとよく合う。

☕カフェラテ:ミルクのまろやかさがアップルパイの酸味を和らげてくれる。


☕エスプレッソ:苦味がアップルパイの甘さを引き立てる。

☕カモミールティー:リラックス効果があり、アップルパイの甘さと調和する。


☕シナモンティー:シナモンの香りがアップルパイの風味を引き立てる。

☕ホットチョコレート:濃厚なチョコレートの味わいがアップルパイとよく合う。


☕ミルクティー:ミルクのコクがアップルパイの甘さを引き立てる。

☕アイスティー:さっぱりとした味わいがアップルパイの甘さを引き立てる。


ฅ^>ω<^ฅ「よし、これでアップルパイを楽しめるね🍏✨!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「そうね――って、もう時間よ……」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」


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