第18話 猫と兎の買い物(3)- Side:黒猫 歌鈴(ダンジョン:星空橋)


「こ、これが……『シーカーズガイド アルティメット』!」


 と言って、私は買ってもらったばかりの新しいスマホをかかげる。

 ジャンジャジャーン♪――私の脳内で効果音が響く。


 高度な魔法スキル管理、AIアシスタント搭載、4K動画撮影が特徴である。

 耐水性にも優れていて、お風呂や水中でも使える。


 色はシルバーとブルーの2種類。

 私が選んだのはシルバーで、スタイリッシュなデザインが人気だ。


 これでもう、友達からバカにされることもないだろう。

 今までは安いスマホを使っていたけれど――


(人前でも、堂々とスマホを出すことができる!)


 大抵の場合、スマホを選ぶ基準は「友達や家族が使っているから、同じデバイスを選んだ」というのが多い。


 でも、最近の若者は『ダンジョン世代』と呼ばれることもあり、無駄に高性能な探索者シーカー用のスマホを選ぶ。


 特に『ダンフォン』の愛称でお馴染みの『ダンジョンマスターフォン』が人気である。高度なダンジョン解析、リアルタイムマップ表示、魔法エンハンスメントの機能を有しているのだけれど――


(日常生活で、どんな役に立つんだろう?)


 しかし、使いやすさ(直感的で使いやすいインターフェース)やエコシステム(同じメーカー製品同士の連携がスムーズ)。


 また、そのデザイン性から親世代にも人気があった。特に高いセキュリティ機能が備わっているため「子供に使わせても安心だ」と保護者からは思われている。


 ブランド力という点においも、日本では頭一つ抜きん出ていた。

 つまり、スマホはダンフォンと同程度か、ダンフォン以上の性能を持つ最新機種を持ち歩かなければ、マウントを取られてしまうのだ。


(嫌な世の中だよね……)


 ダンフォンはそのデザインやブランド力、機能性から日本では人気が高く、特に若い世代からは『ステータスシンボル』とされていた。


 ダンジョン世代は他者からの評価や承認を求める傾向けいこうが強く、自己肯定感を高めるために、様々なものでマウントを取ってくる。


 正直、スマホの新機種は10万円以上もするので、私のような貧乏人には生きづらい世の中だった。


(けれど……これでもう、その心配はないよ!)


 困った人を見るようなフーカちゃんからの視線は痛いけれど、今の私は平気である。


「ありがとう、セーカくん♡ 大好き!」


 と今だから言える私の素直な言葉に「喜んでもらえて良かったです」とセーカくん。口許くちもとに軽く握ったこぶしを当て、微笑ほほえむ姿もカッコイイ。


「いや、これは小動物をでるような瞳よ……」


 そんなフーカちゃんのツッコミも気にならない。


(今なら、結婚してもいい!)


 そんな私の様子を見て、フーカちゃんは「これ以上、話をしてもムダね」と思ったのか、溜息ためいきく。そして、


「で、何でドローンを買ったの?」


 とセーカくんに質問をした。そういえば、色々と買っていたような気がする。


(ここは早速、スマホの出番ね!)


 なんと、チームメンバーが所有しているアイテムを確認できるのだ。

 アイテムリストを確認すると――


 1)探索ドローン:


  高解像度カメラ、長時間飛行、リアルタイム映像送信が特徴。

  ダンジョン内の広範囲探索、危険エリアの事前確認が可能。


 2)マジカルドローン:


  魔法エンハンスメント、ホログラム投影、AIナビゲーション機能が特徴。

  魔法使いのサポートや魔法の効果確認が可能。


 3)クエストドローン:


  3Dマッピング、リアルタイムデータ解析、耐久性機能が特徴。

  ダンジョンの詳細マッピング、データ収集が可能。


 4)アドベンチャードローン:


  ライブストリーミング、4K動画撮影、耐衝撃性が特徴。

  リアルタイムでの冒険配信、動画コンテンツ作成が可能。


 5)シーカードローン:


  高速飛行、バーチャルリアリティ対応、音声指示が特徴。

  探索者のサポート、VR体験の提供が可能。


 とあった。なるほど――


(何か、撮影でもするんだね!)


 高性能カメラにスマホ用の三脚、マイクや照明セットもある。


「秘密です」


 とセーカくんは人差し指を立て、口許くちもとにもっていく。


「なーんだ、秘密なら仕方がないよね♪」


 そんな私の台詞セリフに対し、


「いや、絶対、何かたくんでいる顔よ!」


 とフーカちゃん。セーカくんに人差し指を向ける。

 気にしすぎではないだろうか?


ひどいですね。僕はただ、2人の逃げ道をふさごうと思っただけなのに……」


 そう言って、しゅんとするセーカくん。可哀想だ。

 ちなみに、私のレベルは5から6になっている。


 あの後、レストランで夕食だったのだけれど、ダンジョン産の食材を使った料理とデザートで経験値が手に入ったらしい。


(ある意味、モンスターを倒すよりも効率がいいのかもしれない!)


 と私は思ったのだけれど、そう簡単ではないようだ。

 このレベルの上げ方にも、上限があるらしい。


 次回からは「より希少で高価な食材を食べないと意味がない」という事だった。

 確かに、この方法が有効であるのなら『フードファイター』がかなりの高レベル探索者になってしまう。


「私、セーカくんに捕まっちゃったんですね♡」


 逃げられないニャン――と猫のポーズ。

 セーカくんに「いい子いい子」される。その姿を見て、


「あーっ! どうして、コイツら日本語が通じないのよ!」


 と一人、声をあらげるフーカちゃん。今にも地団駄じたんだみそうな勢いである。


「まあまあ、落ち着いてください」


 とセーカくんはなだめるのだけれど「アナタの所為せいでしょ!」とフーカちゃんは返す。すると、


「えっ⁉ 明日から、ちゃんと高校へ行く!」

「そんなこと、一言も言ってないでしょ!」


 2人の漫才が始まった。「仲がいいなぁ」と私が思っていると「全然、そんなんじゃナイから……」とフーカちゃん。れている姿も可愛い。


「いや、だから……」


 そう言い掛けて「もういい」と思ったのか、彼女は肩を落とした。その一方で、


「なるほど、警戒するのは『ダンジョンインダストリーズ』のメンバーくらいか……」


 丁度いい――とセーカくんはつぶやく。

 どうやら、話している間に第21階層へ降りるゲートへと到着したようだ。


 ここから先は普通にモンスターが出現する。


(正直、怖いのだけれど……)


「本当に怖いのは人間の方よ」


 とフーカちゃん。「今、セーカがチェックしたから大丈夫よ」と付け加える。スマホで「現在、どんな人たちがダンジョンに入っているのか」を確認できるらしい。


 セーカくんがドンドン先へと進むので、私たちも後へと続く。

 本来なら順番待ちなのだろう。


 けれど、夕方ということもあり、戻ってくる人は多いようだが、この時間からダンジョンへ挑む人は少ないらしい。


「スイーツガールズ様、どうぞ」


 と女性の機械音声が告げる。「あ、呼ばれましたね」とセーカくん。

 開いた扉へと入る。


 床には魔方陣が用意されているので、第21階層へ転移できるようだけれど、いくつか転移先を選べるみたいだ。


「いや、そんなことより『スイーツガールズ』って何⁉」


 もしかして、私たちのチーム名!――とフーカちゃん。またもやセーカくんにつかみ掛った。セーカくんは「あはは」と笑った後、


「さっき、2人ともデザートを美味しそうに食べていたので」


 と答える。それが名前の由来らしい。


「あなたはガールじゃないでしょ!」


 それに、そんな名前恥ずかしいのよ!――とフーカちゃんが怒る中、


「これから、第30階層のホテルまで行きますよ」


 とセーカくん。


(好きな男の子とまりだなんて!)


 学校が休みで良かった。

 急に顔が熱くなり、私は思わず両頬を手で押さえる。


「もう、こいつらイヤーッ!」


 フーカちゃんが、そんな悲鳴にも似た声を上げたのと同時に、私たちは第21階層へと転移した。



 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️



*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*


ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」


ฅ^•ω•^ฅ「今日は『食品ロス』🍚について」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「カリンは食べてばかりだけどね……」


ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」


ฅ^-ω-^ฅ「誰がフードファイターよ!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「思っただけで、口には出してないわよ」


ฅ^>ω<^ฅ「思ってるんかい!」🐾💥

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「はいはい……それよりも、日本では『毎日1人あたり茶碗1杯分のご飯が捨てられている』そうよ。」


ฅ^>ω<^ฅ「知ってるー! 年間で東京ドーム5杯分だよね」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「エスコンフィールドHOKKAIDOだと、球場約7.1杯分ね」


ฅ^-ω-^ฅ「えっ? それは知らない」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「そんなことだから、環境への負荷が増大して、食料資源の無駄遣いが深刻な問題となるのよ。謝りなさい!」


ฅ^>ω<^ฅ「ひーっ! ゴメンなさい」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「よし、許す。ちなみに農業生産者や食品メーカーは、次のような取り組みをしているようね」


🌾効率的な生産と流通:過剰生産を避け、需要に応じた生産を行う。


🧊保存技術の向上:食品の長期保存が可能な技術を開発し、食品ロスを減らす。


🍎規格外品の活用:見た目が悪くても品質に問題のない食品を市場に出す。


📚消費者教育:消費者に対して食品ロスの問題を啓発し、適切な消費行動を促す。


♻️リサイクルの推進:食品廃棄物を飼料や肥料として再利用する。


🏦フードバンクの活用:余剰食品を必要な人々に提供する仕組みを整える。


🤖デジタル技術の活用:AIやIoTを活用して、食品の生産から消費までの過程を最適化する。


📦パッケージの改良:食品の保存期間を延ばすためのパッケージ技術を開発する。


🕒賞味期限の見直し:消費期限と賞味期限の違いを明確にし、食品の無駄を減らす。


🌱持続可能な農業:環境に優しい農業方法を採用し、食品ロスを減らす。


ฅ^-ω-^ฅ「ふー、国民に『🦗を食べさせる』が入ってなくて良かったよ」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「この状況でよくもまあ、昆虫食を推奨できたわね。ハラール食でも、地域によって食べていいのか、解釈がことなるらしいのに……」


ฅ^-ω-^ฅ「昆虫の話はいいや」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「そうね、それじゃあ――」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」


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