第12話 探索の前に(3)- Side:黒猫 歌鈴(ダンジョン:星空橋)


 無事に着替えも終わった。

 とは言っても、私の場合は――


(コートをハンガーに掛け、貴重品をロッカーに仕舞っただけだけれど……)


 一方でパジャマ姿だった彼女の方は、


「ジャージ、似合いますね」


 と星霞せいかくん。「めている」というよりは「小馬鹿にする」といった態度だ。

 えて、いつもと変わらないさわやかな言い方に、私は笑いそうになってしまったのだけれど――


(ここは我慢がまんよ……)


 急いで口許くちもとを手で隠す。


うるさいわね」


 そう言って、ジャージ姿のまま、彼女はほほふくらませると、そっぽを向く。


 ジャージ自体はダンジョンハイスクールこと『北海道ダンジョン防衛大学附属高等学校』のモノだ。この辺では『ダンジョン高校』と呼ぶのが一般的らしい。


 あの学校は授業へ出なくても「ダンジョンへ行っていれば単位が取れる」と揶揄やゆされていた。それは事実でもあるのだろう。


 ただ、星霞くんみたいに高校生の内から凄い額のお金を稼いでいる生徒もいるので「半分くらいはやっかみだ」と考えた方がいい。


「それでは改めて自己紹介をしますね。僕は『天霧あまぎり星霞』。探索者シーカーであり、ダンジョン高校の3年です」


 と星霞くんは簡単に挨拶あいさつを済ませる。それから、視線を私へと送った。

 れている感じだ。そんな風に感心していた私だけれど――


(どうやら、次は私の番みたいだね……)


「えっと、『黒猫くろねこ歌鈴かりん』です。家は食堂で青嶺あおみね高校2年生です」


 と返す。星霞くんの前だと、別の意味で緊張するから困る。


「へー、偏差値の高いところね」


 ダンジョン高校じゃなかったの?――とジャージ少女。星霞くんは、


「――と言いつつ、風奏ふうかの行きたかった学校ですよね」


 横から口をはさむ。風奏と呼ばれた少女は「うっさい!」と星霞くんをにらみつつ、


「合格していたのに、ダンジョン高校にされたのよ」


 ジャージ姿のまま、腕組をしつつ、イライラとした態度で再び頬を膨らませた。


(やっぱり、美少女は何をやっても可愛いな……)


 私がそんなことを考えていると、


「私もやらなきゃダメ?」


 と彼女は首をかしげた。「当たり前です」と星霞くん。

 キミのためにやっているんですからね――と付け足す。


 そんな風に言われてしまっては、彼女もやらざるを得ない。

 渋々といった態度で、


「私は『白兎しらと風奏』」「美少女です」

「家族は全員、ダンジョン関係の仕事をしているわ」「お嬢様です」

「ダンジョン高校の2年よ」「不登校です」


 風奏という少女が何かを言うたびに星霞くんが余計な一言を付け加えるので怒ったようだ。ムキーッ!といった態度で星霞くんをポカポカと叩く。


 ハハハ――と星霞くん。ここがダンジョン内だからだろうか?

 風奏の攻撃は、まったく効いていないらしい。


 布団ふとん簀巻すまきにされたうえ、顔に紙袋をかぶせられていた時点で分かってはいたのだけれど、風奏は完全に彼の玩具おもちゃにされているようだ。私はといえば――


(仲が良くてうらやましいな……)


 そんな事を考えながら2人を見ていた。

 風奏は、そんな私の視線に気が付いたようで、


うらやましいなら、こんな奴、あげるから持って帰って!」


 と声を上げ、星霞くんから距離を取る。

 叩き疲れたのか、両手をぷらんとさせ、肩を落とした。


「こんな奴とはひどい言い方ですね。昔みたく『お兄ちゃん』と呼んでくれてもいいんですよ」


 そんな星霞くんの言葉に、


「うっさい! 誰が呼ぶものですかっ!」


 と今までで一番、声を荒げる風奏。余程、言いたくないらしい。

 星霞くんは楽しんでいるみたいだけれど、


「あのー、2人はどういった関係ですか?」


 私は申し訳なさそうに手を上げながら、気になっていた事を質問する。

 ここへ来るまでのり取りから、お互いに昔からの知り合いで、家族のことも知っているようだった。先に口を開いたのは星霞くんで、


「残念ながら従妹いとこなんです」


 と言って「困りました」そんな感じで肩をすくめる。

 そんな彼の言葉と態度に対し「はあっ!」と反応する風奏。


 残念なのはこっちだ!――と言わんばかりの表情だ。


(話は、だいたい分かったわ……)


 何らかの理由で不登校になった風奏を心配して、彼女の姉が星霞くんへ、家から連れ出すように頼んだのだろう。


 丁度、星霞くんも学校の先生から、同様の件で相談されていたようだ。


「つまり、仲良しなのね」


 と私は解釈する。「違うわよ」そう言って、怒って星霞くんに飛び掛かろうとした風奏だけれど、星霞くんに顔面をつかまれて動けなくなる。


「やっぱり、仲良しなんだね♪」


 私は微笑ほほえんだ。「だから違うって」と言い訳している風奏の姿は、じゃれている仔猫を連想させる。


「さて、自己紹介も済んだので、次は【ログイン】して『アバター』に切り替えましょう」


 と星霞くん。確かに、このままの姿で外に出ると――


(知り合いに見つかった場合、言い訳に困るよね……)


 星霞くんはスマホを操作し、アプリからステータス魔法を起動させ、姿を変える。

 万応素マナの光が彼を包み込み、数秒で姿を変えた。


 その姿は銀髪の人間種テランだ。雰囲気はあまり変わってはいなかったのだけど、身長も伸び、大人びた顔立ちになっている。


 要は星霞くんの大人バージョンで、カッコイイ!


(これはこれでありね……)


 私は「うんうん」と勝手にうなずいた。

 私服姿から装備も変わり、白を基調とした戦闘服姿になっている。


 背中に剣があるのでクラスは『武人ウォリアー』? いや『騎士ナイト』だろうか?

 前衛職のようだ。『白銀の騎士』といった印象を受ける。


 一方で風奏もスマホを操作する。

 そして、彼女も変身した。装備もジャージから神官服に変わっている。


 クラスは聖職者クラージだろう。

 けれど、着目するのはそこではない。


 頭からピョコンと生えたウサ耳である。

 どうやら、彼女は獣人種アニマ兎人族ラビナを選択したらしい。


 そして、私はといえば――


(2人みたく、シーカー専用のスマホがないから、スグにはログインでいないのだけれど……)



🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️



*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*


ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」


ฅ^•ω•^ฅ「今日は冬季における北海道の女子高生について」

(˶ᐢ. ▮ᐢ˵)「喜べ男子ども」


ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」


ฅ^>ω<^ฅ「冬の女子高生のファッションだよ♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「作中でも触れているみたいだけれど、寒さ対策とおしゃれを両立させるため、年々進化しているようね」


ฅ^>ω<^ฅ「まずはアウター!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「2022年から紹介するわね」


🔴2022年:ダウンジャケットが主流。防寒性が高く、軽量で動きやすい。

🟠2023年:ボアコートが流行。見た目も可愛く、保温性も抜群。

🟡2024年:パファージャケットがトレンド。軽量でありながら暖かい。

⚪2025年:ハイブリッドコートが登場。防風性と保温性を兼ね備えた最新素材を使用。


ฅ^>ω<^ฅ「やっぱり、アウターは流行があるね!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「次はカバンよ」


🔴2022年:リュックサックが人気。機能性とデザイン性を兼ね備えたものが多い。

🟠2023年:トートバッグが増加。シンプルで使いやすいデザインが好まれる。

🟡2024年:ショルダーバッグが流行。コンパクトで持ち運びやすい。

⚪2025年:クロスボディバッグが流行。両手が自由になり、便利。


ฅ^>ω<^ฅ「カバンは流行よりも年々、機能が進化している感じだね!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「最後はブーツよ」


🔴2022年:ムートンブーツが定番。暖かくて防水性も高い。

🟠2023年:スノーブーツが人気。滑りにくく、防寒性も高い。

🟡2024年:アンクルブーツが人気。スタイリッシュで防寒性も兼ね備えている。

⚪2025年:チェルシーブーツが人気。防水性が高く、デザインもおしゃれ。


ฅ^-ω-^ฅ「冬でも生足! お洒落は気合だ!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「登校する距離にもよるけれど、上半身と足元をしっかり防寒することで、寒さを感じにくくできるわ」


ฅ^>ω<^ฅ「可愛くお洒落して、星霞くんをメロメロにするぞ!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「あーはいはい、頑張って――じゃあ、今日はここまで」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」


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