第10話 探索の前に(1)- Side:黒猫 歌鈴(ダンジョン:星空橋)
星霞くんとタクシーで向かった先は『
O市の中心部には
かつて、大規模なダンジョン災害の発生源となってしまった場所なのだけれど――
(現在はダンジョン観光の象徴のような場所になっているんだよね……)
あれだけの被害があったのに、人間とは
意識しないと、その存在を認識することすら出来ない。
よく例えられるのが、隠し絵(ダブルイメージ)だ。
同じ絵を見ているハズなのに、人によって違うモノが見えている。
気が付かない人間は、その存在にずっと気が付かないままなのだろう。
そのため、ダンジョンの出入り口の説明は、月に例えられることもある。
月はいつも地球に対して同じ面を向けている――という話は有名だ。
それなのに、国によっては月の模様がウサギだったり、女性だったり、カニだったりするのだから、不思議である。
(地球から見た月の模様は同じなのにね……)
星空橋はダンジョン災害によって、一度壊されている。
現在、架けられている橋は新しく作り直されたモノだ。
以前の橋よりも強度は増し、広く、大きくなっていた。また、観光地ということもあり、デザイン性も重視され、
しかし、海へと伸びていた運河は、当時の形を変えてしまった。
ダンジョンの出入り口となる球体の形に合わせ、この地域の運河だけ、大きな円を描いた形状となっている。
もし、モンスターがダンジョンから出現した際、この運河が堀の役割を果たし「進行を遅らせる」というワケだ。
観光地であるため、ダンジョンに対して「高い壁を築くのは反対意見が多い」という理由からである。
(まあ、そんな心配、今となっては誰もしていないけどね……)
観光客の場合、周辺には複数の駐車場があるため、車を停めてから徒歩で観光するのが一般的だ。
また、
星空橋から少し離れた場所に専用の転移装置があり、そこから移動できた。
管理されているダンジョンでは、よくあるパターンだ。
なので、車でも行ける。
専用施設の敷地内に入ると、駐車場とは別方向にある建物へと向かう。
そこには地面から壁が出現するタイプの本格的な遮断機式ゲートがあって、車を一時的に止められたのだけれど、星霞くんが窓を開け、スマホを
すると
同時に通行許可が下りたようだ。
観光客用ではなく、
簡単に言うと魔法陣である。
地面に描かれた
ただ、ダンジョン内での出現場所は地下駐車場のような造りになっていた。
これではダンジョンという感じはしない。
星霞くんがスマホで決済をし、私たちはタクシーを降りる。
タクシーはそのまま転移したようで、一瞬で消えた。
「さあ、行きますよ」
と星霞くん。その肩には相変わらず「むー、むー」と唸る
私は周囲をキョロキョロとしながらも――迷子にならないように――彼の後に続く。
(百貨店というよりは、飛行場ね……)
地下1階といったところだろうか?
自動ドアを
観光用のダンジョンの中にはホテルやショッピングモールなどもあるので、このような場所は珍しくない。
『ダンジョン探検ツアー』や『ダンジョンスポーツアリーナ』、『ダンジョンリラクゼーションスパ』に『ダンジョンアートギャラリー』など、休日はダンジョンで過ごす人も、今では多いようだ。
星霞くんはエレベーターの方へと、
「まずは着替えてから、装備を買いに行きましょう」
そう言って、エレベーターのボタンを押した。近くにある「エスカレーターを使わない」ということは「1階ではなく、上層階へと向かう」ということなのだろう。
(ちょっと、ワクワクする……)
すぐにエレベーターが来たようで、扉が開く。
私たちがそれに乗り込んだ後、星霞くんは再びスマホを
止まる階のボタンはついていないので、どうやら、専用のフロアにしか行けないらしい。
「フガー、フガー」
簀巻きの少女が暴れたので、
「ああ、紙袋と口を
と星霞くん。私は言われた通り、紙袋を外し、口を塞いでいたテープを
髪の長い美少女だった。
彼女はプハーッと息を整えると、キッと星霞くんを
それでも、星霞くんは彼女の反応が見えているかのように、
「ここは
この意味が分かりますよね――と静かに告げる。
彼女は、その意味を理解したのか、再び黙った。
(えっと……)
つまり「
ダンジョン内での能力は次の9種類の値で決まる。
① HP:体力。ダメージを受けると減少し、0になると昏倒する。
② MP:スキルや魔法を使うためのポイント。スキルや魔法を使うと消費する。
③ STR:物理攻撃力。近接武器のダメージに影響する。
④ VIT:体力や耐久力。HPや防御力に影響する。
⑤ DEX:器用さ。罠の解除や命中率に影響する。
⑥ INT:魔法攻撃力や知性。魔法の威力に影響する。
⑦ MND:精神力。魔法防御や回復魔法の効果に影響する。
⑧ AGI:敏捷性。行動速度や回避率に影響する。
⑨ LUK:運。クリティカルヒットやアイテムドロップ率に影響する。
この辺は一般的なゲームと変わらない。
専門家が言うには、私たちが理解できるように、世界の法則が変化したとか――
(よく分からないや……)
確か『結果集束論』とか言っていたような気がする。
魔法が存在する世界なので、私なんかが気にするだけ無駄なのだろう。
それよりも、気を付けなくてはいけないのは「出現するモンスターにも、この法則が当て
つまり、見た目通りの強さではない――ということだ。ダンジョンでの戦闘は、相手の見た目で強さを判断すると、手痛いしっぺ返しを食らう。
(
それは今、考えることではない。
今対処すべきは、私を
(えっと、悪いのは私じゃないのだけれど……)
🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️
*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*
ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」
(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」
ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」
ฅ^•ω•^ฅ「今日は隠し絵(ダブルイメージ)についてです」
(˶ᐢ. .ᐢ˵)「人間も頭の中では、何を考えているのか分からないものね」
ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」
(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」
ฅ^-ω-^ฅ「えっと……隠し絵は、一見すると普通の絵に見えるけど……」
(˶ᐢ. .ᐢ˵)「よく見ると別の絵が隠れている――というアートの一種ね」
ฅ^>ω<^ฅ「美術館や現代アートの展示で見ることができるよ。観客に驚きや発見の喜びを提供し、アートの楽しさを倍増させてくれるんだって♪」
(˶ᐢ. .ᐢ˵)「見た目通りではない――という点で、サイコパスとの共通点を見出すこともできます」
ฅ^>ω<^ฅ「例えば『サルバドール・ダリ』の作品は、隠し絵の要素が多く含まれていることで有名だね♪」
(˶ᐢ. .ᐢ˵)「表面的には魅力的で普通に見えることが多いけれど、その内面には異なる一面が隠されている――まさにサイコパス」
ฅ^>ω<^ฅ「隠し絵は、現代の暮らしにも役立っているよ!」
(˶ᐢ- -ᐢ˵)「例えば、教育現場ね。子供たちの観察力や集中力を養うために使われているわ」
ฅ^>ω<^ฅ「デザインや広告業界でも、視覚的なインパクトを与えるために利用されているよ♪」
(˶ᐢ- -ᐢ˵)「
ฅ^-ω-^ฅ「えっと……ちょっとこっちきて」💢🐾
(˶ᐢ. .ᐢ˵)「なに?」
🐱 😸 😹 😻 😼
😽 🙀 😿 😾 🐱
😸 😹 😻 😼 😽
ฅ^>ω<^ฅ「お待たせしました! 隠し絵はあくまでアートの一種であり、サイコパスとは根本的に異なるものです」
(˶ᐢ- -ᐢ˵)「くすん 🥹……隠し絵はあくまでアートとして楽しむべきものです。皆さんも興味があれば、隠し絵の世界を楽しんでみてください 🎨✨」(棒読み)
ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」
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