第08話 冒険の仲間(2)- Side:黒猫 歌鈴(O市桜ヶ丘)


(家政婦さんが感動しているところ、悪いのだけれど……)


 私は、別のことが気になっていた。先程から、こちらを見詰める双眸そうぼう

 家の奥。廊下の先にそれらは存在している。


 一つは大きな体に、白くてふわふわの被毛。

 笑顔が特徴的なサモエドだ。


 アーモンド形の目と上向きの口角こうかくが「サモエド・スマイル」と呼ばれる表情を作り出していた。


 ロシアのシベリアを原産地とする犬の品種の一つで、シベリアン・スピッツとも呼ばれる。


 毎日、朝晩30分以上の散歩が必要なので、飼うのは大変なのだけれど――


(それも家政婦さんの仕事なのかな?)


 ソリ犬だったため、運動欲求が強く、スタミナもある。

 散歩の他にも、ドッグランなどで思いきり走らせることも必要だ。


拙者せっしゃと遊んで欲しいでゴザルよ♪』 ※歌鈴の妄想です。


 と廊下の先から、私へ視線を送っている。

 そして、もう一つは長毛で柔らかい毛を持ち、青い瞳が特徴のラグドールだ。


 名前の通り『ぬいぐるみ』である。人間が抱っこした時に、ぬいぐるみのように抱かれることから「ラグドールという品種名になった」と言われている。


 その性格は「愛情深く穏やかだ」と聞く。人間に限らず、他の動物に対しても寛大かんだいな心を持つ傾向にあるようだ。多頭飼いに向いている品種である。


 こちらもサモエドの横に並んで、廊下の先にちょこんと座りつつ、


『あっしも抱っこして欲しいですニー』 ※歌鈴の妄想です。


 といった表情で私を見詰めていた。


(もう、今日はこの子たちと遊んで帰りたい……)


 2匹ともブラッシングが必要な品種なので、ブラシを貸してもらえないだろか?

 しばらくの間、ブラッシングしていたい。


 気が付けば、すでに私の緊張は解け、動物相手になごんでいた。

 その一方で星霞くんは、


「早く降りてきてくださーい」


 と2階に向かって声を上げた。しかし、反応はない。

 引きこもりのようだ。きっと最初から、こうなることは分かっていたのだろう。


 星霞くんは「はぁ」と溜息をいたのだけれど、それは落胆らくたんというよりも、気持ちを切り替えるためのモノだったようだ。


 顔は笑っているけれど、目は笑っていない――というヤツである。

 私に対しては笑顔をくずすことなく、


「では、連れてきますので、その子たちと遊んで待っていてください」


 と告げた。どうやら、私の興味がペットの方へ向いていたことに気が付いていたらしい。お恥ずかしい限りである。


 不思議なことに、星霞くんが手招きをするとサモエドとラグドールがトコトコと寄ってきた。


『拙者と遊ぶでゴザルよ、わん♪』 ※歌鈴の妄想です。

『あっしのことも可愛がってださいですニー』 ※歌鈴の妄想です。


 と2匹。私はラグドールを抱っこした後、サモエドをわしわしする。

 もう、ここが今日のゴールでいい。もし「ダンジョンへ行け」と言うのなら――


(この子たちも連れて行けないかしら……)


 そんな私の妄想を余所よそに、星霞くんは靴を脱いで家に上がる。

 ついて行こうとした家政婦さんを手で制して、真っ直ぐに2階へと向かった。


『いってらっしゃいでゴザル、わん』 ※歌鈴の妄想です。

『お気を付けてくださいですニー』 ※歌鈴の妄想です。


 2匹はそんなことを言って星霞くんを見送る。

 しかし、2階からは人がいるような気配を感じない。


(連絡はしたハズだけれど……)


 どうやら目的の人物は、部屋から出てくるつもりはないようだ。

 それどころか、こちらを無視している。


 やがて、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

 星霞くんが部屋の前まで辿たどり着いたのだろう。


「キミには選択肢が2つあります。素直に出てくる未来と強制的に連行される未来です」


 あまり良く聞こえなかったのだけれど、多分そんなことを言っている気がした。

 私は家政婦さんが持ってきてくれた猫じゃらしでラグドールの相手をし、片手でお腹を見せているサモエドをわしわしする。


(これが二刀流というヤツね……)


 悪くない――と私が感動をめていると、


「お姉さんからの許可はもらっています。ドアを壊してもいいそうですが、どうします?」


 次の瞬間、2階でドタドタと足音が響き、ガチャッと金属音がする。

 きっと、解錠かいじょうの音だろう。そして、再びドタドタと足音がひびいた。


 急いで、ドアから離れたようだ。自分で鍵を開けておいて、ちょっと間抜けな感じもする。続いてドアの開く音がしたので、星霞くんが中に入ったのだろう。


「ちょ、まだパジャマ……」


 という声が聞こえたのだけれど、それ以降、音は聞こえなくなった。

 いったいなにがあったのか気になる私だけれど――


(今は目の前のモフモフの方が重要案件よね!)


 私はラグドールを抱っこすると、今度は家政婦さんから借りたボールを転がす。


『任せるでゴザルよ、わん』 ※歌鈴の妄想です。


 サモエドはそう言って、トコトコと歩き、廊下に転がったボールをくわえて戻ってきた。


「よしよし、賢い子ね」


 そう言って、私が頭をでると、


『得意でゴザルよ、わん』 ※歌鈴の妄想です。


 とサモエドは胸を張る。


『次はあっしとも遊ぶですニー』 ※歌鈴の妄想です。


 そう言って、ラグドールは私のほほを肉球でペチペチする。


(どうやら、ここは天国らしい……)



🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️ 🍽️



*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*:._.:*


ฅ^•ω•^ฅ「カリンと~♪」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「フーカのー」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「ティーダンジョン♪」


ฅ^•ω•^ฅ「今日も北海道の教会について」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「我々の戦争はまだ終わっていない」


ฅ^-ω-^ฅ「こらこら」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「うー」


ฅ^>ω<^ฅ「まずは『水の教会』!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「安藤忠雄氏が設計した教会で、自然の要素を取り入れたデザインが特徴ね。湖に面した幻想的な教会よ🌿」


ฅ^>ω<^ฅ「次は『聖ミカエル教会』!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「アントニン・レーモンド氏が設計した教会で、木材やレンガを使用した温かみのあるデザインが特徴ね🌳」


ฅ^>ω<^ฅ「そして『トラピスト修道院』!」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「日本初の男子修道院で、美しい並木道が特徴よ。1896年に設立されたらしいわ🌲」


ฅ^-ω-^ฅ「たしか、北海道にはプロテスタントの教会が多いんだよね?」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「理由の一つは、前回話した技術者ね。その多くがクリスチャンだったらしいわ。そして、もう一つの理由が移民」


ฅ^-ω-^ฅ「移民?」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「本格的な移民は明治時代からだけれど、江戸末期ね。幕府寄りだった人は、新政府からの迫害を避けるために移住したと聞くわ。また、新しい生活を求めて移住した人も多かったみたい。当初は幕府が東北地方からの移民を奨励していたそうよ。プロテスタントも宗教改革の影響を受けて、迫害を受けた歴史があったので共感できる部分が多かったようね」


ฅ^-ω-^ฅ「えっと、開拓精神?🌾」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「移民もプロテスタントも、新しい土地での開拓精神を持っていたと聞くわ。 困難な環境でも前向きに取り組む姿勢が共通していたそうよ」


ฅ^-ω-^ฅ「コミュニティ重視?🏘️」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「当時の過酷な環境では、互いに助け合わないと暮らしていけないでしょうからね。新しい土地での生活を支えたそうよ」


ฅ^-ω-^ฅ「教育の重視?📚」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「札幌農学校などの教育機関がその象徴ね。プロテスタントは教育を重視し、移民も新しい土地での教育の機会を求めた結果よ」


ฅ^-ω-^ฅ「宗教的信仰?✝️」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「多くの移民が宗教的信仰を持ち、プロテスタントの教会がコミュニティの中心になったと聞くわ。日本も太平洋戦争に負ける前までは、寺や神社が文化的なイベントや教育の場になっていたのよ」


ฅ^-ω-^ฅ「社会貢献?🌍」

(˶ᐢ. .ᐢ˵)「プロテスタントの教会は社会貢献活動を行い、移民も地域社会に貢献することを重視したそうよ。現代だと嫌がる人が多そうだけれど……」


ฅ^>ω<^ฅ「今日は賢くなった気がする!」

(˶ᐢ- -ᐢ˵)「学校のテストでは、何の役にも立たないけどね」


ฅ^>ω<^ฅ&(˶ᐢ- -ᐢ˵)「またね~、ばいば~い!」


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