第61話
「………………本物かよ。まさか、ハルと繋がっていたとはな。どっかの闇市と繋がっているとは思っていたが。ハルかよ」
こんな小娘がハルと知り合うなんて思ってなかった?
気になるのはハルが素顔でいることだ。
勘違いされたくない。
「俺だったんだよねぇ。この子はちょっと変わっててねぇ。提示してないんだぁ」
「例のノルマを?」
「うん。本物のお得意さんだねぇ。気付いてると思うけどぉ、俺そのままでしょぉ?」
「………………そうか」
あっ、言ってくれた。
勘違いされないよね?
「ちゃんと無事に帰すから問題ないよぉ」
「その子に質問してもいいか?」
「いいよぉ」
「あんた、なんであの時止めなかったんだ?止めていたらディアンナは死ななかっただろうに」
その質問か。
「楽しみを奪ったら怒るから。それに、ハルのことは内緒」
「………………理解してるのか。コイツのこと」
「多少」
「あだ名に相応しいというかなんというか。ハルと付き合えるということは、それなりの知識があるってことだな。分かった………………上手く誤魔化しておく。それでいいか?」
「よろしくね」
トキは納得したのか出て行った。
上手く誤魔化してくれると嬉しいけど。
「あの、これどうぞっす」
テーブルに置かれたのは見た目が悪い料理だ。
本当に見た目が悪い。
一応、ハンバーグだと分かるけど。
なんでこんなに形がおかしい?
「飲み物もどうぞっす」
料理を置いてまたバタバタと急いでルン爺のところに帰っていく。
そんなにビビらなくても。
「食べてみて」
ハルに言われて一口食べてみる。
「確かに味はいい」
「でしょ?やる気がない料理人だけどねぇ」
普通に美味しい。
見た目が悪いけど。
「リア。最初は結構いいもん食べれると思うけど、王都から離れるにつれてどんどん質が落ちるからねぇ。治安も悪いしぃ。今のうちに食べたいもの食べててねぇ」
アップルパイはたくさん食べておこうと思ってる。
あそこのお店は必ず。
意外と美味しい料理を食べた後はハルに送ってもらった。
ハルは裏口まで送ってもらってその場で別れた。
姿を消すのはいつも早い。
透明人間になってしまったのでないかと思うほど闇に紛れてしまうのだ。
変な関心をしながら気づかれないように自分の部屋に戻る。
「アメリア様。すぐお休みになられますか?」
「うん。疲れちゃった。メアリは?」
「疲れていないと言ったら嘘になりますね」
「明日は何か言われると思う?」
「帰って来ていることが分かっていれば大丈夫でしょう。いつものことだと思うはずですから」
「そっか」
「それより、ハル様からいただいたこのワンピース」
ん?
寝巻きに着替えてソファーに置いてしまったワンピースをメアリは広げていた。
「これ、プレゼントだと思うますよ。旅用にピッタリですね。破れにくく速乾性もあります」
「それ、着せたいからシャワーを浴びろってことじゃないよね?」
「ついで、かと。臭いがしたのは確かですから」
プレゼントか。
何も言わなかったけどね。
あとでお金を払ってねって言われたらどうしようかな。
ハルだから言いそうだけど。
ベッドに入り掛け布団を被る。
「では、お休みなさいませ」
メアリは礼をしてから出て行った。
久しぶりに奴隷市場に行ってみたけど。
相変わらずだったなぁ。
今日も何人売られてのだろうか。
そして、明日は何人死んでしまうのだろうか。
労働奴隷は1日に何百単位で売れているらしい。
そんなに毎回売れているということは死んでしまっている数も相当だということだ。
国はそれをなんとも思っていない。
自分の国民だと思っていないのだ。
ただの道具か家畜以下の存在。
こんなの間違っていると誰も言わない。
やはり、昔からのことだから不思議に思わないのだろう。
昔からそれに洗脳されて奴隷は虐げるもの、だと。
他の国だと人権というものがしっかりあるというのに。
だから、この国は発展が遅れているのだ。
育てるということをしないから他国からの輸入も多い。
作物だけじゃなく違うことにも挑戦したらいいのに。
この国の政治がアレでは無理か?
………………。
誰か、暗殺してくれないかなぁーー………
物騒なことを考えながら目を閉じた。
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