第57話
ー 闇市 ー
暇な奴らが日中でも集会所に来て、本当にくだらない話をしながら酒を飲み楽しんでいた。
今日は集会がないから危険人物も来ないだろう。
そう思ってみんな気が抜けた状況だった。
だが、それはすぐに気を張ることとなる。
カランカランとドアが開けられる音が聞こえ、誰か来たのかとそっちを見るとローブ姿の2人を見た。
ローブからチラリと見えるワンピースで女だと分かった。
それに、立ち姿から闇市や裏の者でもないことが分かる。
依頼にでも来たのか?と誰もが思った。
もし、依頼なら早い者勝ちだ。
どんな依頼なのか知らないが楽しめるものならなんでもいい。
俺のものだ、私のものだ、とみんなが考えていた。
だが、それは次に入って来た奴を見て諦めた。
後ろから今日は絶対に見ないと思っていたハルが入って来たのだ。
フードを外したその顔は何を考えているのか分からない。
2人の女を席に案内するために少し喋ったがすぐ分かる。
機嫌が悪い。
折角、楽しく酒を飲んでいたというのに……………
ルンは何でもない日に集会所に来たハルを見てびっくりしていた。
あの2人は………………
まさかのぉ?
いやはや、ここに連れて来てしまったんか?
ハルは本当に考えないのぉ。
そんなことハルには関係ないのじゃろうが。
しかし、機嫌が悪そうじゃな。
アメリアも可哀想なことだ。
機嫌が悪いハルと一緒にこんなところに連れてこられて。
怖いというより困るっという感じかの。
『あの2人はなんすかね?依頼人?』
なんだ?
アメリアとメアリが気になるのか?
『気にするな。ハルの知り合いじゃ』
『えっ?知り合い?』
今、アメリアに声をかけるべきではないのぉ。
手が吹っ飛ぶかもしれん。
いや、頭が吹っ飛ぶかもしれん。
だが、何をしにここに連れて来た?
話をするならいつもの談話室ですればいいものを。
困ったのぉ。
ルンは困った困ったと思っているが目は楽しそうだ。
ルンと違って他のみんなは珍しそうに見ていた。
『おい、素顔出してるってことはアレだよな?』
『じゃないのか?お得意様だな。ここに乱れてないお得意様を連れて来たのは初めてだな』
『隣に座らせてるぞ。まさか、ここで商談か?』
『ダダ漏れだろ』
『いや、だってハルだし』
『………そうだな。ハルだな』
『違った遊び方でもするのか?』
『知らねぇよ。遊ばないかもしれないし』
『機嫌が悪いのはどうする?誰か犠牲になる者は?一番は依頼人になってもらいたいがな』
『あと少しで来るぞ。今日はアイツが来る日だろ。アイツ、ハルに対して興味津々だったからな』
『何だ、ナキみたいにか?』
『その逆だ。運がいいのかアイツがハルに会うときはハルの機嫌も良かったが、今回は機嫌が悪いからなぁ』
『あぁ、じゃぁ決定だな』
『だな』
一応、犠牲者になる奴が来るから解決したということにしようと、ハルの話しから全く違う話題へと変わった。
どこの誰が仕事を失敗してルンに怒られたとか、どこの誰が依頼人を殺してしまったとか、どこの誰が死んでしまったとか。
闇市の何気ないいつも通りの会話だ。
『おい、飲み物の準備を頼む。そうじゃな、果物のジュースでいいじゃろ。ハルにはいつものコーヒーでいい』
『えっ!?今っすか?』
『死にたいのなら今でもいいが。事が終わってからでいい。お前がもっと優秀になりたいのなら止めんが』
『終わってからでいいっす!』
若者を弄るのはとても楽しい。
此奴は可愛いからの。
ルンが楽しそうにしていると、カランカランとドアが開く音が聞こえた。
どうやら誰かが入ってきたようだ。
『馬鹿が来よったのぉ』
『嬉しそうに言わないで下さいっす。掃除するの大変なんすから』
『掃除は己の心を綺麗にするぞ』
『闇市の心が綺麗になるわけないっすよ』
ー 闇市 end ー
いつまでこうすればいいのか。
黙っているハルにどうしたものかと考える。
話しかけてもいいけど、何を話せばいいのか。
間違ったこと言って意地悪されるのも嫌だな。
これは話してくれるまで目の前の壁を見ているしかないか。
なんか、かなり傷んでる壁だけどね。
何度も修復したって感じだけど。
………………。
何かが起こった感じがする。
事故というより事件だろう。
今、一番気になるのは私がここにいていいのかってことだ。
こんなに闇市がいるところにいていいのだろうか?
それに、今のハルはお面を外している。
ハルが依頼人の前でお面を外しているということは依頼人がハルの提示したものをクリアしたということ。
つまり、私はハルの素顔を知りたくてたくさん依頼をした上客ということだ。
だけど、他の依頼人と違って私は最初からハルの顔を見ている。
そんな提示もされていない。
ディアンナ様みたいに多額の依頼料を払っているわけでもない。
勘違いされるの嫌だな。
モヤモヤとしたものが頭の中に浮かんでいた頃、カランカランと音がした。
「リア」
「えっ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます