第54話
奴隷市場の奴隷は親が子供を売ったり商人が闇市やその手の者に依頼して攫った者が多い。
まぁ、恨みで売られた者もいるけど。
もし、ディアンナ様が依頼で攫われたとしたら真っ直ぐに依頼主のところに引き渡されるはずだ。
だが、ディアンナ様は若くない。
若作りしているだけで、本当の若い人には敵わない。
愛玩奴隷に望む殆どの人は若い人だ。
稀に特殊なケースがあるけど。
恨み関係だったら屋敷で殺されているか、無残な姿にされてその辺に捨てられているか、奴隷市場に売られているか。
ディアンナ様を恨んでいる者がいるのか?と聞かれると微妙なところ。
自慢話が好きでよく喋るけどなぜか好意的な人たちが多い。
………………。
ハルの件を知らなかったらどちらかだと思うけど、今回は目の前で依頼するところを聞いてしまったからなぁ。
歩き回っていれば満足するかな?
………………。
あとは、あそこか……………
『はいはい!今日はこちらの腕力自慢の奴隷がお得だよ!!道路整備や建築関係の仕事にもってこい!!』
商人のセールストークが聞こえる。
檻の中には身体がガッチリしている奴隷がいた。
体力がありそうに見えるが目は虚で生気が感じられない。
ここに来て長いのか、それとも道中に躾けられたのか。
檻の中は様々だ。
骨と皮だけの奴隷がいれば身体が大きな奴隷もいる。
年齢も様々だ。
子供から老人まで。
老人の奴隷はすぐ死んでしまうから労働奴隷としては向かないが平民や商人のストレス解消として殴り殺す道具に使われる。
殴ればすぐに骨が折れるし弱いものを痛めつける快感が人気らしい。
『おっ!旦那!旦那!この奴隷はどうだい?最近、入ったばかりで生き生きしてるよ!』
そう言っているが違う意味での生き生きだろう。
心は死んでいる。
『そうだな。この奴隷を貰おう。あと5人必要なんだ。農作業用に。一気に6人死んじまってな』
『おや、それは大変だ!』
『たく、高熱で死んじまって。他の奴隷に移したんだ!死ぬまでしっかり動いてもらったがな』
『旦那、ちゃんと隔離しないと駄目だ。全滅しちまう』
『急ぎの仕事だったんだ。人手不足で忙しい』
ここの来るといろんな話が聞こえてくる。
お母様からはその話をよく聞きなさいと教えられた。
この国の現状を把握するためには酷いところを回れと。
団長にも手伝ってもらいながら奴隷市場や労働を強いられているところを見ていた。
そのうち、段々と見えてくるものだ。
この商人はこの奴隷専門だ、とか。
この雇い主は週に一回は奴隷を玩具にして楽しんでいる、とか。
酷いものを見せられ続ければ心は強くなるものだ。
『ご婦人!これはどうだい?この子供なら遊び相手にちょどいいと思うけどな!ご婦人の子供は6歳だろう?だったらこのくらいの子がいいさ!』
『男の子がいいの』
『なら、こっちはどうかな?そんなに痩せてないから長持ちするよ』
『そうね。これなら大丈夫かも』
どうやら自分の子供相手に買うらしい。
小さい頃から奴隷に接する仕方を学ばせる。
そのための奴隷だろう。
労働奴隷のところを端からはじまで見たがそれらしい人は見ない。
なら、愛玩奴隷?
あっちはあまり行きたくないのに。
しょうがない。
愛玩奴隷の売り場はこことは違い割と綺麗だ。
こことは違い値段も高いし、買いに来る者も身分が高い。
まぁ、大商人や貴族などは屋敷に商人を呼んじゃうからここで見て買う事はしないけど。
檻の中に入れられてるのは変わらないけど、綺麗に着飾り身体も綺麗だ。
食事もしっかり出されており商品としても価値を下げないため手入れはしっかりされている。
売り場の入り口にはまた大きな門がある。
金色に塗られた門でここから先が特別な区域だと言われているようだ。
『奥さん!この子はどうだい?肌も滑らかだよ。細い身体だが、とても美しさはある!』
『そうねぇ、もっとガッチリした人がいいの』
『なら、こっちだね。これはオススメだ!男らしいだろ?』
『そうね。これにするわ』
『毎度あり!』
チラッと夫人を見る。
は〜ぁ、やっぱり興味が出るよね。
夫人は自分の好みである奴隷の前に立っていた。
メアリはそれに気付き、夫人の腕を掴み歩かせる。
せめて、ちゃんと貴族が使う商人とやりとりしてほしいところだ。
ここでは、お試しということでお触り体験もできる。
しっかり躾されているのか確認できるのだ。
だが、傷を付ける事はできない。
ちゃんと商人が見張り勝手な事は出来ない。
試したい奴隷を檻から出してすぐ近くにある個室に移動し、そこで商人に見られながら試す。
個室ではしっかり防音加工されており声が漏れる恐れはない。
だから、お客さんも声を出して試すことができる。
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