第43話
「さて、次は身体を整えましょう。今日から毎日マッサージをします。手加減なしです」
メアリは宣言通りに強めのマッサージを施す。
首、腕、肩、腰、お腹、足の順番で丁寧に施す。
「痛ーい!!!!」
足の裏が一番痛い!
本当に手加減なしだ。
「我慢です。毎日やれば慣れますよ」
「本当にやるの?」
「やります」
「だから痛いって!!!」
「慣れますから。誕生会までに仕上げないといけません」
そこまでしなくてもいいと思うけど!
グッと押される足の裏が真っ青にならなきゃいいけど。
入浴の時間には簡単に手入れしていた髪もしっかりトリートメントまでやることに。
ディアンナ様の時と同じまではいかないが、いつもより長い時間入っているのは分かる。
お風呂から出ると保湿液をしっかり塗る。
全ての工程が終わる頃にはメアリも疲れて椅子に腰掛けていた。
私も疲れるしメアリも疲れる。
「メアリ、今日はもう休んでいいから。私ももう寝る」
「はい。お休みなさいませ」
明日も同じことをするのかと思うと辛いな。
痛いし。
ベッドに倒れ込み手と足も大きく広げる。
大きく息を吸い込み吐く。
それを何度か繰り返してから目を閉じた。
***
チュンチュンと鳥の鳴き声が聞こえる。
目を擦りながらベッドから降りてカーテンを開ける。
きっと心地よい日差しが窓から入るだろうと思っていたが、なぜか影らしいものがある。
あれ?と思い眠たい目をしっかり開ける。
そして、すぐにカーテンを閉めた。
ちょっと待って。
朝から見る顔じゃないから。
流石に朝はやめてほしいかな。
ガチャッーーシャッ!
「ちょっと、酷いじゃんかぁ」
「うわっ!出た!」
「出たってお化けじゃないよぉ」
びっくりする登場しないでよ!
カーテンを開けて窓の外に危険すぎる闇市がいれば誰だって驚くはずだ。
しかも、その辺にいる闇市じゃない。
尋常じゃない壊れ方をしているハルだ。
なんでこんなに早い時間に来るのか………………
ハルはスルッと部屋の中に入りソファーに座る。
そして、ポンポンと軽く隣を叩く。
これは、隣に座れという合図だ。
は〜ぁ。
ハルの隣に座り久しぶりに会うハルを見た。
グレーのワイシャツと黒いズボン。
そして、黒いローブ。
シンプルな服装だが彼にはとてもお似合いだ。
ハルには飾りなどいらない。
その容姿だけで充分だろう。
ディアンナ様が本当に心から欲しいと思うほどのその容姿だけで。
「今日はお面なし?」
「んー?お面?あるよぉ」
ツンツンと自分の腰を見ろと指した。
そこにはお面が腰に巻き付かれていた。
そっか、そこにあったか。
「顔色いいねぇ。ちゃんと寝てるんだぁ?」
「顔色悪いまま出られないからね。で?何をしに?」
「うーん。どうかなぁって」
どうかなぁって言われても。
「誕生会で解消される予定。聞かなくても分かってるでしょ」
「リアの準備はどうなのさぁ」
「荷物はもうまとめておいた。家も新しい夫人と息子もいるし問題ない」
「ふ〜ん」
ハルは私の髪を少しだけ掴んでクルクルと遊びだす。
「ねぇ?なんかすごーくいい匂いがするねぇ」
「ーッツ」
急に綺麗な顔が私の顔を覗き込んできたからびっくりした。
クンクンと私の匂いを遠慮なく嗅ぐ。
「シャンプーとかの香りだと思う」
「ふ〜ん。凄くいい香り。高そうだねぇ。髪もサラサラだねぇ。急になんでかなぁ?」
………………。
さっきの髪の毛クルクルで分かったのか。
「誕生会でお母様からプレゼントしてくれたドレスを着るから、それなりに髪も肌も綺麗にしないといけなくなった。成人のお祝いのドレスだから。メアリも今回だけは本気ってこと。心を込めて作ってくれたドレスだからね。いつもみたいな感じじゃ着れないよ。一瞬で終わっちゃうけどね」
「ふ〜ん」
ハルは急に興味がなくなったのか離れた。
「ハルはどうなの?」
「う〜ん、そうだねぇ。楽しくやってるよぉ。すごーく楽しく、ね」
「………………」
ハルはニヤァと口角をあげた。
あっ、何かあったなって分かる。
目がそう訴えてるから。
今度は何をしたのか。
上機嫌なのが良く分かる。
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