第41話
ディアンナ様はハルの美しい容姿に惚れ込み、本当に自分の愛人にしてしまいたいところまで考えているようだ。
私も初めて会った時は驚いた。
殿下も国一番の美男子と言われているが、ハルを見てしまったら絶対にそう言えないだろう。
私は騙されないけどね。
あの顔で甘い言葉を囁かれても絶対にクラッとしない。
またもや、2人の会話を聞き流していたらいつの間にか夫人がいないことに気づいた。
そして、夫人が戻って来ると爆弾発言をしたのだ。
【許可を取りましたからトキにお願いしました】と。
そのあとすぐにトキが入って来た。
トキは私を見て驚いた顔をしたが瞬時に平常に戻り何事もなかったかのようにディアンナ様の近くに立った。
「お呼びでしょうか?」
「えぇ、お願いしたいことがあるの。私、どうしても欲しい人がいるの。その人を攫ってくれないかしら?」
「どのような方でしょうか?」
「闇市ですわ」
「………闇市?」
トキの目が鋭くなる。
ディアンナ様は気づいてないの?
「特徴はございますか?」
「珍しい特徴だからすぐに分かると思うわ。白い髪よ。髪は短いわ。陶器のような白い肌と瞳は赤。身体は細身ね。身長は170㎝は超えていると思うけど180㎝まではないかしら。あとは、爪が真っ黒だったわ。黒のピアスもしていたわね。名前はカナリア。どう?分かる?」
「………………いつもお面を付けていましたか?依頼数と依頼料をクリアすると顔を見せるとか言ってませんでしたか?」
「まぁ!知っているの!?」
「はい」
「私、彼の美しさを見て決めたのよ。必ず私のものにすると。依頼料は5倍にするから。闇市は危険ですものね。危険手当てですわ。お願いできるかしら?」
「………………かしこまりました。少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ。あなたなら必ず攫ってくれることでしょう。前金はいつも通りの場所に準備しておきます」
「………………では」
終わった。
完全に終わった。
トキの目は最後まで鋭かった。
トキも相手が誰だか気づいているはずだ。
身震いしちゃうじゃない。
これから起きることが本当に恐ろしい。
「あら?アメリア嬢?どうかしたの?寒いの?顔が真っ青よ!」
ディアンナ様に言われたことで私の顔が酷いことになっているようだ。
想像しちゃ駄目なのに考えてたからか。
「少々気分が悪いので退出してもよろしいでしょうか?」
このチャンスを逃すはずがない。
これ以上ここにいるのは無理だ。
どうせ、これから愛玩奴隷で遊ぶのだろう。
「えぇ、いいわ。どうやら詰め込みすぎたみたいね。ゆっくり休みなさい。そのドレスは差し上げるわ」
「はい。ありがとうございます。では失礼いたします」
そそくさと部屋から出る。
出た瞬間にメアリが私の肩を掴み支えてくれた。
「アメリア様。よく頑張りましたね。助けられなくて申し訳ございません」
「メアリ。次は町に出掛けるから。絶対に」
「はい。前触れもなく部屋に押し掛けられるのはコレっきりにしましょう」
部屋に戻り着せられたドレスを脱ぎ捨てる。
そしていつもの動きやすいドレスに着替える。
「伯爵夫人のあと少しの命ね。トキに依頼をした。もう後戻りは出来ない」
「そうですか。次の伯爵夫人はどなたになるでしょうか?」
「伯爵様の愛人じゃない?男爵家の娘だったはず」
「まだ13歳ですね」
「子供は産めるから問題ないって考えだからね」
ソファーに倒れ込むように座ってから大きく深呼吸をする。
1週間分の体力を使ったかもしれない。
もう今日は休みたい。
「アメリア様。お休みになられるならベッドでお願いいたします。首を痛めますよ。まだ曲がらないと大騒ぎにならないように」
「んー、よく喋る人だ。くだらないことばかり」
「普通の令嬢はドレスの流行を気にするものですけどね」
「ごめんなさいね!普通じゃないので!」
「そんなに怒らないで下さい」
あ〜っ、夕食を食べないで寝ちゃおうかなぁ。
「アメリア様。ベッドでお願いしますね」
「んー」
「アメリア様?」
「………………」
「………………アメリア様。寝るの早いです」
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