第39話
「情けない。本当に情けない。あなたはその容姿をちゃんと鏡で確認しなさい。シンディ譲りの美しさですのに。そんな顔しているなんて。本当に残念だわ。その無造作に結んだ髪はなんですか?ちゃんと手入れはしてるのかしら?美しい水色の髪なのになんてことなの!さぁ!早く着替えなさい!アメリア嬢のためにドレスを準備しましたの。そんな質素なドレスでは私と楽しくお話しなんて出来ないわ!殿下の婚約者らしく美しく飾りなさい!」
ディアンナ様の嫌なところはたくさんあるけど、一番嫌なのは私を改造しようとすることだ。
本探しに王宮を訪れた時、たまたま出会したディアンナ様はそれはそれは恐ろしい形相で私を叱り付けた。
目の前に美しくない者がいるとどうしても許せないらしい。
強引に進めようとしてくるから困るのだ。
何度か会って何度も叱りつけられたら嫌にもなる。
ディアンナ様のすぐ後ろではメアリがあちゃーっと言いたそうな顔をしていた。
逃げるにしても王宮にいた時みたいに警備された書庫に逃げることもできない。
ディアンナ様は自分の侍女に指示を出して私を無理矢理部屋から連れ出した。
もう逃さないといった感じかもしれない。
ズルズルと引きずられるように辿り着いた部屋は遊び場という部屋。
部屋の中には大型のベッドとソファーとテーブルが設置されている。
そして、普通ではあり得ない物も。
人が入れる檻と鎖などもあるのだ。
そんな部屋にはディアンナ様の愛玩奴隷が10人いた。
そして夫人と夫人の愛玩奴隷2人。
まさか、この場で着替えろと?
そんな趣味ない!
掴まれている腕をブンブン振るが侍女は絶対に離さない。
「ディアンナ様。まずは入浴に致しますか?」
「そうね。まずは身体の隅々まで洗ってちょうだい。髪もサラサラになるように最高級なトリートメントを使って」
ズルズルと備え付けのお風呂場に連れて行かれ身体を隅々まで洗われる。
誰か、助けて。
今回ばかりはメアリも悩んでしまうらしい。
ここが王宮だったなら………………
「まぁ!アメリア様。とてもサラサラになりましたよ。見て下さい。この輝き。美しいです」
侍女は感激しているらしいが、私はもうクタクタだ。
お風呂を入るだけでこんなに疲れるものなのか。
これを令嬢は毎日しているのか。
なんて無駄なこと。
時間をかけて洗う必要があるの?
「まぁ!アメリア嬢。なんとか見られるようになりましたわね。次はドレスとメイクアップです」
ディアンナ様は自分の愛玩奴隷の自慢より私の改造に集中しているのか次から次へとドレスを着替えさせられる。
もう愛玩奴隷に見られようがどうでもいい。
裸を見られているわけではないから我慢はできる。
でも、早く終わってくれ。
「まぁ!アメリア嬢!とても美しいわ!顔色はメイクで隠せますからね。誕生会も近いことですし。身なりはきちんとしなさい。もちろん、出席するでしょう?今回は逃げられませんよ。毎回毎回、逃げていますが今回は逃げられませんよ。これは王命ですからね」
本当によく喋る人だ。
いつの間にか上質なドレスを着せられ髪もクルクルに巻かれてメイクをされて立たされていた。
目が回る回る。
コルセットは苦しいし。
「シンディの容姿を受け継いでいるのよ。やはり、美しいわ。私の目に狂いはないわ」
いや、ハルに目を付けたあなたは狂っているから。
そのうち殺されちゃうからね。
今すぐに計画を止めたら助かるのに。
「さぁ!みんなもそう思うでしょう?この私が手掛けたのですからね」
ディアンナ様の声に反応した愛玩奴隷は一斉に「とても美しいです。ディアンナ様」と言った。
うん、見事に揃った。
なんでこんなに綺麗に揃うのか。
練習してるのか。
「アメリア嬢。次は歩き方を練習しましょう。あなたの歩き方は酷いですわ!殿下の隣に立つのです。ビシッとしなさい!そのくらいのヒールでフラフラしてはいけません!」
いや、こんなにフラフラしてるのはあなたの所為だからね。
目が回るほどにたくさんのドレスを着せられたからこんなにクタクタでフラフラなのだ。
いつもならもっとちゃんとしてる、はず。
それから、頭に本を乗せられ歩く練習をさせられた。
横にはディアンナ様のお気に入りの愛玩奴隷が待機させられいつ転んでも受け止めてくれるように。
私は一体何をしているのかな。
なんでこんなことになったのか。
油断した。
普通は直接乗り込んで来ないはずなのに。
これまで何度も逃げていたからディアンナ様も考えたのだろうな。
「ここまでにしましょうか。とても美しくなられましたわ。これなら満足です」
もう動きたくない私は近くにあったソファーにドカッと座る。
「まぁ!アメリア嬢。なんですか!そんな座り方!公爵令嬢としてマナーがなってません。静かに座りなさい!」
誰か私を連れ出して。
「ディアンナ様。そろそろお茶にしませんこと?ケーキをご用意しましたの」
夫人はテーブルにいつの間にか置かれたケーキとお茶を見て言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます