第38話

本当に狂っているから扱いには気をつけないと。

取扱説明書はないのかってルン爺に聞いてしまったほどだ。

ルン爺は爆笑していたが笑えるどころではない。

最初の出会いでそのヤバさを体験済みだし。

本当にヤバかった。

本当の本能剥き出しって凄く危険だ。

あの時、本がなかったら殺されてしまっていただろう。

本好きで良かった。

本に命を救われた。

だけど、あの出会い方だったからハルとこうしてなんとか依頼のやり取りが出来ているわけで………………

良かったのか悪かったのか。

用がないのにフラフラと会いにきてはお茶を飲んで帰るとか、お茶友じゃないんだからさ。

こっちはハルの様子に気をつけながら接しているのに。

まぁ、ハルは凄く強いし仕事はちゃんと熟すし仕事対応は悪くないけどね。

ルン爺も団長もロウさんもハルを凄く推してくるし。

ルン爺は慣れれば便利だ、とか言ってるけど。

団長は慣れれば気が合う、とか言ってるけど。

ロウさんは意外と可愛いところもある、とか言ってるけど!

凄く狂ってるから!!!

首を締めたり緩めたりを繰り返して苦しそうな表情を見るのが好きだし。

相手のお腹の上に乗って薬で蠢く姿を見るのが好きだし。

少し少し痛みつけて相手が「殺してくれ」と言ってもなかなか殺さず、ギリギリなところを行ったり来たりするの好きだし。

我慢できないと派手に殺しちゃうし。

男も女も関係ないのか自分の欲求を爆発させながら痛めつけて優しくして痛めつけてを繰り返して最後は苦しむ姿をじっとりと見つめながら殺すの好きだし。

こんなことを知ってるから最終的には凄く狂っているに行き着く。


「あの出会いがなかったらハルとは関わらなかったかなぁ」


「それはどうでしょう。団長様もルン様もロウ様もみんな闇市関連ですからね。最終的には繋がったはずです。私は、あの出会い方をしなかったらアメリア様は今よりずっと危険なことになっていたのではないかと。もしかしたら、もう殺されていたかもしれません」


「………………否定は出来ない」


「強い興味を持たれてしまえば、あとは簡単だとルン様も言ってましたし。見事クリアしましたねぇ。お見事です」


「全く、そんなつもりなかったけどね。もう、私の本に何するの!ってだけだから。あの本は凄く貴重なの。まさか、地面に埋められていたとはね。一生懸命掘っていただけなのに。わぁ!本だ!って喜びながら手に取っただけなのに。なんでそのタイミングであの人達がいたのか。びっくりして本を落としてしまうし。メアリは近くにいないし。本は踏まれるし!血で汚れてしまうし!!所ところ読めなくなったし!文字が滲んで何書いてあるのか分からなくて」


「本へと想いだけは素晴らしいです。恐怖より本の想いが強いとはびっくりしました」


「普通に怖かったから。今でも鮮明に思い出すことが出来る」


夢にまで出るからね。

もう見たくないのに。

ハルと最初に出会った頃は毎日のように見ていた。

睡眠薬がないと眠れないほどだ。


「で?ディアンナ様はいつ頃までいるのかな。まさか、夜までいるとか言わないよね?」


「かなり盛り上がっている様子です。ある程度のお喋りを楽しんだ後はお遊びをするので………………そうですね、夕食が終わった頃までかと」


「いや、それは夜でしょ。もう!!自分の屋敷でやって!まさか、血だらけにしないよね?」


「ディアンナ様は自分の屋敷以外では致しません」


「欲求が強い人は我慢できないものだからね。侍女に頼んで包帯の準備をしておいて。本当はあって欲しくないけど」


「かしこまりました。そのように伝えておきます」


メアリは侍女に指示するため部屋から出て行った。

私はパクパクとサンドイッチを食べる。

もっと違う友達を選んで欲しいものだ。

本当になんであの女を選んだのか。

ハルに繋がる者はどの人も異常性が凄く高い。

死体愛好家って人もいたっけ。

内臓愛好家とかもいた。

それと比べると私ってずっとマシだと思う。

バタバタバタ!バタンッ!!


「アメリア嬢!あなた、私が来たというのに挨拶をしないなんてどういうことですか!?あなたも私の素晴らしい話を聞きなさい!」


急に現れたディアンナ様をポカンとした顔で見てしまった。

いや、これは考えてなかった。

まさか、自分でここまで来るなんて。


「まぁまぁ!そんな質素なドレスを着ているなんて!あなたは殿下の婚約者ですよ!そんな質素なドレスなど殿下に失礼ではありませんか!もっと美を磨きなさいと言ったでしょう!!!顔色が悪いわ!ちゃんと寝ないと駄目じゃないの!!!まぁ!本当に嫌だわ。この部屋も何?何も美しくない!こんな部屋で過ごしているなんて信じられないわ!」


うるさい。

大声でそう言いたい。

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