第34話

夫人は調教されている姿も好むのね。

なかなか、凄い趣味だ。


『止まるな!歩け!!』


トキはナイフを散らせつかせながら攫ってきた青年を歩かせる。

目的地は夫人の部屋か。

部屋で調教される姿を見るのだろう。


「さっきの愛玩奴隷は部屋で夫人を待っているはずです。そうなると、考えたくはないですが調教されている青年を見ながら愛玩奴隷と楽しむということをするつもりかもしれませんね」


「キツイ。キツすぎる。おかしくなる」


「ですが、ここでは普通ですよ。きっとトキも混ざるでしょうし」


「お父様はそれも許可してるの?」


「はい」


「ハゲてしまえ」


本当に愛している人を迎えたのよね?


「アメリア様。悩んでも解決しませんよ。さぁ、お部屋に戻りましょう。アップルパイが焼き上がる頃です」


「えっ、アップルパイ?食べたい!」


笑顔で答えた私は急いで部屋に戻った。

出来立てのアップルパイはとても美味しい。

食べながら読書をするなんて最高じゃない!

ワクワクしながらアップルパイが焼き上がるのを待った。

その日の夜。

みんなが寝静まった頃、夜の散歩を楽しんでいた。

庭のベンチに座り月を眺める。

心地よい風を感じられここの空間が特別なものに感じる。

なんて気持ちが良いのだろうか。

ジャリッ!

砂を踏む音がした。

横を振り向くと手首を鎖で巻かれた青年が立っていた。


「あっ、あぁ、はっ」


息がとても荒く走ってきたのが分かった。

青年は私がいることに気づく動くことを止めた。

檻の鍵は外れてしまったのか逃走しているところだろう。


「アメリア様」


少し離れたところでメアリの声がした。

私は片手を上に上げて何もするなと指示をする。


「逃走はしないほうがいい。あなたはもう逃げられない。ここであなたが逃げれば家族のみんなが殺されてしまう。あなたの婚約者もその家族も。逃げ場などないのだから。檻に戻りなさい。辛いでしょうけど、コレがこの国の現状。誰にも助けてもらえない。私もあなたを助けることができないの。ごめんなさい」


私が言ったことが理解できたのかその場で座り込んでしまった。

もし、無事に逃げたとしてもすぐに捕まる可能性が高い。

それに逃げたということでもっと酷いことをされるかもしれない。


「アメリア様。彼は夫人の部屋から逃げました。地下牢ではございません。また、トキは夕方から別件で仕事に出ており帰ってきておりません」


なるほど。

それなら大丈夫だろう。


「そこのあなた。いつまで座り込んでいるの?逃げたことが見つかったらもっと酷いめに合うのに。休んでいる暇はないから。今ならまだ間に合う」


ベンチから立ち上がり屋敷に向かう。

後ろからは逃げたした青年がついてくる。


「静かに歩くの。出来るだけ音を立てないで。分かった?」


「は、はい」


よろしい。

気配を気にしながら屋敷の中を歩く。

夫人の部屋の前に着くとゆっくりドアを開けて中に入った。

部屋の中は酷く甘い香りがする。

これ、お香?

ベッドの上には裸の夫人と裸の愛玩奴隷が寝ていた。

青年を檻に入れてドアを閉める。

だが、鍵はかけない。


「この鍵はこのままにするから。きっと驚くはずよ。何か聞かれたら逃げられないことくらい分かっていると答えるの。いいわね?」


青年はコクリと頷く。

私はゆっくり歩き部屋から出た。

部屋から出て廊下を歩いているとメアリはスッと現れた。


「お部屋に戻りますか?」


「戻る」


部屋に戻ってソファーに座る。


「部屋の中に甘い香りが充満していた。あれって薬?」


「そうですね。きっと催淫剤絡みでしょう。ですが、もう効果はないでしょう。使い終わった後だと思いますから」


「そう」


夫人の隣に寝ていたあの愛玩奴隷。

少し痙攣していたかもしれない。

………………。

何かしたのだろうか。

もっと強力な薬?


「アメリア様。お休みになられるならベッドでお願い致します」


「分かってる」


ちょっと考え事していただけだもの。

だけど、今日はもう遅い。

もう休むか。

はぁ、疲れる。

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