第31話
「アメリア様!お目覚めになられたのですね!」
「メアリ。もう大丈夫。体調は回復したから」
「素晴らしい回復力ですね」
「メアリ。一体どういうこと?なぜ闇市が?」
「………………会いましたか?」
「さっき、応接室に案内した。夫人が?」
「はい。依頼を頼んだそうです。情報収集のため離れてしまいましたが、離れるべきではなかったですね」
「いいの。情報収集が先だから。それで?何を頼んだの?」
「それが………………愛玩奴隷の確保です。町を馬車で走っているときに見つけてしまったらしく。愛玩奴隷にしたい男性を」
は〜ぁ。
権力を手に入れてしまったら好きに出来るってね。
まさか、闇市に依頼するなんて。
もっと違うところがあったでしょうに。
「どこの誰を?」
「商人の息子です。年齢は18歳。婚約者がおります。夫人が好む容姿をしております」
「商人?商人なの?あーっ、なんで商人なのに闇市に頼むかなぁ」
馬鹿だ。
馬鹿過ぎる。
もっと大きな獲物を攫うなら分かるけど。
「今夜にでも行動するでしょう。調教は約1週間ほど。まだ話し合いが続いているため他に何かお願いするかもしれませんね」
「………………」
「公爵様も了承済みです」
「頭が痛い。あの夫人、闇市は初めて?」
「はい」
考えが甘い。
甘過ぎる。
あの夫人は何も考えてない。
『アメリア様。お粥をお持ちしました』
どうやらさっき頼んだお粥を持って来たらしい。
メアリはドアを開けてお粥を受け取る。
「キッチンに行かれたのですね?」
「お腹空いちゃったから」
「空腹を感じるのならもう大丈夫でしょう」
お粥は塩味でシンプルだった。
病人だから消化のいいものをと思って作ったのだろうけど。
『アメリア。ちょっといいか?』
お父様?
「メアリ。開けてあげて」
「はい」
メアリはドアを開けた。
部屋の中に入って来たのはお父様とエリック。
そして先ほどの闇市。
なんでここに?
「どうだ?具合は」
お父様は心配そうに言ってくれたが、今の私はお父様のことなどどうでもいい。
これは一体どういうこと?
なぜ、私の部屋に?
………………。
まさか、何か違うことを頼んだ?
用心棒として?
「公爵様。アメリア様はまだ本調子ではございません。手短にお願い致します」
メアリはお父様に早く出ろと言わんばかりの態度だ。
「分かっている!アメリア。お前にも伝えておこうと思ってな。この者を我がエヴァンズ公爵家の専属にしようと思う。お前の本探しにも使えるだろう」
専属?
「先程はありがとうございました。俺はトキと申します。奴隷の調教、拉致、用心棒から物品の買い出しまで幅広く請負ますのでよろしくお願い致します」
「なんだ、会ったのか?」
「はい。先程、応接室まで案内してもらいました」
「そうだったのか!娘のアメリアだ。娘からも何か依頼をするかもしれない。よろしく頼むよ」
「かしこまりました。どんな依頼でも請負致します」
………………。
この闇市とはどこで知り合ったのだろうか。
誰かから紹介?
「お父様。現在、彼に頼んでいる依頼はどのようなものでしょうか?」
「実はな、商品を町から町へと運ぶときに山賊にやられてな。用心棒も依頼することになった。まぁ、始まりはルビアのお気に入りの愛玩奴隷からだったが」
「まぁ!山賊に!それは恐ろしいですね」
話をしているうちにその話になったのか。
商品の流通は止められないから継続的に依頼をすることになる。
だから、専属か。
「公爵様。もうよろしいでしょうか?」
「分かった。分かった。そう睨むな!全く。ゆっくり話も出来ないな」
メアリに促されてお父様とトキという闇市は出て行った。
残ったのはエリックのみ。
なぜ一緒に出て行かなかったのだろうか。
「あの、どうか致しましたか?」
「不公平だと思った。だから、説明しておこうかと思って。体調が悪い時に申し訳ないが明日から忙しくなる。あのトキという男は闇市の者だ。母さんの友達から紹介されたらしい。その友達というのは最近知り合った伯爵夫人だ。美しい愛玩奴隷をたくさん持っていることで有名な夫人らしい。欲しいと言えば簡単に攫ってくるから一流と聞かされている」
エリックはそれだけ話すと部屋から出て行った。
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