第28話

基本は個人行動なのだが襲っているところに気まぐれで混ざることもある。

団体様がきたら2、3人で襲うこともあるが、チームで協力するような行動は少ない。

首領であるアサは1人で行動することが多く、不特定多数の場所を転々と移動しながら行動している。

商人に紛れて一緒に行動したり、通りかかった貴族の夫人に媚びを売って遊んであげたり自由にしているようだ。

どれも最悪な末路になっているが。

現在、アサにはお気に入りの奴隷がいるらしく調教を楽しんでいる。

伯爵令嬢で婚約者と旅行を楽しんでいたところを後ろから襲い、婚約者の目の前で調教を始めて快楽に落ちていく様を見続けていた、とか。

婚約者は好みではなかったらしく近くの川で解体して川の水を飲みに来る肉食獣に食べさせた。

やることがエグすぎる。

ハルも似たようなものだけど。

アサほどではないが山賊の中で2人ほどとても優秀な人がいる。

その2人がうまく山賊をまとめているらしい。

いや、普通のまとめ方ではないが。

基本、自由なんだから。

彼らのルールがあるのだろう。

元闇市ながら情報収集はお手の物。

どんな貴族や大商人が通るのか分かるらしい。

怖すぎる。

大事になっているのになぜそこを通るのか。

まぁ、その道しか行けない町もあるし隣国にも繋がっているからだけど。

私もそこを通ろうとしているから人のこと言えない。

山賊は私が通る道以外にも出没しているとのこと。

反対側の道にも山賊が出ており大騒ぎになっているとか。

ここ最近、あちらこちらで山賊の話をよく聞く。

それを騎士団が潰し歩いているようだが。


「全員の名前までは知らんがアサとウキとサカだけ知っていれば充分じゃろ。ウキとサカも元闇市でな。まぁ、アサよりかなりマシじゃな。可愛いもんだわい」


ウキは山賊の2番手らしい。

金髪で右目に切り傷がある。

身長も大きく身体もがっしりしているからすぐに分かるらしい。

サカは山賊の3番手。

茶髪で左右の耳に赤いピアスをしている。

身長が低く小回りが得意。

山賊の中には女性もいるが大物ではないらしい。

でも元闇市だ。

普通の女性でないのは確かだ。

団長が前に言っていた。

闇市の女性も男性と変わらない仕事をしているって。

私の知り合いは全て男だから会ったことないけど。


「もし、捕まったらウキかサカの名前を連呼しろ。助かる確率が上がるじゃろ。まぁ、どちらも快楽主義者じゃがのぉ」


ルン爺。

それ、全然嬉しくないよ。

助からないと思う。


「ハルの名前連呼したほうが助かるような気もするけれど」


「………………そうじゃったな!ハルが一番いい!アレは自分の客を取られるのを凄く嫌がるからのぉ。だが、アサの前でそれが通用するか分からん」


一番は捕まらないようにハルのそばを離れないってことだけど。


「いいか?ナイフはすぐに構えられるようにしておくんじゃぞ。仕舞い込みなど駄目だからな?ロニに習った通りに使うことだ」


「はい。ちゃんと腰に付けるから」


ルン爺はうんうんと頷いた。

それから、これから用事があるとかで去って行ってしまった。

相変わらず忙しい人だ。


「寂しくなるね。そろそろだと思うと。旅には厳しいこともあるだろう。でも、諦めてはいけないよ。一歩一歩進めば確実に国から出られる。大丈夫。きっと出国出来るから」


「ロウさん。今までありがとうございました。ロウがいなかったら欲しい本もなかなか手に入らなかったもの。どれも貴重な本ばかり。本当にありがとうございました」


この国に来ない限りロウさん共もう会えないだろう。

ロウさんは高齢だ。

国を出国出来る体力は残っていない。

ロウさんとの挨拶を済ませて古書店を出ると空は曇っていた。

何やら雨が降りそうな天気だ。


「雨が降りそうね。ちょっと急がないといけないかも」


「はい。雲が厚いですね。大雨が降るかもしれません」


雨具などは持ってきていないのだ。

ここで降られてしまうと屋敷に着く頃にはビショビショだ。

ちょっと小走りで歩く。


「あっ、降ってきたみたい」


ポツポツと地面を濡らす雨のあとが見えた。

それは次第に大きくなり本格的に降り出した。

周りにいる人達は急いで走る。

その中には奴隷の鎖を思いっきり引っ張りながら走っている人もいた。

その奴隷はバランスを崩して地面に倒れてしまったが、主人はそんなことどうでもいいらしく鎖を引っ張り続ける。

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