第27話

ルン爺は例の山賊の件で新しい情報を持っていた。

どうやら人数が増えているそうだ。

そして闇市の人数も減っている。

闇市から抜け出して山賊になっているということだ。

しかも、結構腕がいい闇市が加担しているそうだ。

ターゲットは主に貴族や大商人など権力があるもの。

その時一緒にいた奴隷も殺している。

お金になるものは全て剥ぎ取り、奴隷以外の人を嬲り殺すのが定番らしい。

容姿のいい人だったら奴隷商人に売りつけたり、調教して自分の飼い犬にしたりとやりたい放題。

好きなように行動できる。

好きなように快楽を得られる。

闇市と違って処理は面倒だがきっと堪らなく楽しいだろう。

最近、活発に動き出したのは首領が戻ってきたからだと言う。

団長が言っていたこの首領がとんでもない奴だった。

元闇市の人で闇市の中でも危険視されていた男。

赤髪で瞳がオッドアイらしい。

容姿は驚くほど綺麗で女性のような肌の滑らかさ。

首のところには切り傷があるらしい。

服装にも特徴があり、薄い一枚の羽織りを着て腰のところを帯で縛って留めているらしい。

どこかの民族衣装で目立つから分かる、と。

名前はアサ。

ルン爺は見た目に騙されるな、と言った。

細身で全く力がないように見えるがとんでもない力を持っているらしい。

闇市にいた時は幼女誘拐・殺人・用心棒(守らないといけない人を殺してしまったこともある)・愛玩奴隷調教・賄賂・恐喝・奴隷誘拐。

最後に王族殺し・王族の拉致。

前に王族が愛玩奴隷で売られたと聞いたことがある。

まさか、それをやった男が首領になっているとは。

ルン爺の話だとアサという男はかなり狂っているらしい。

快楽を異常に求めて彷徨う姿が亡霊だ、と。

幼女を誘拐した後間違って殺してしまったこともあったそうだ。

殺してしまったので正直に依頼主に謝ったが許してはくれなかった。

アサは依頼主に殴られ蹴られ切りつけられて酷い有様だったらしい。

だが、それはワザと。

アサは自分が殴られることにも快感を得られる。

そして、自分を殴った奴を倍返しで痛めつけて殺して快感を得る。

依頼主を殺してしまうのは日常的だったらしくルン爺も苦労したそうだ。

一番大変だったのは王族拉致。

攫った王族が殺されないように他の闇市の人がアサを見張っていたそうだ。

闇市が闇市を見張るなんて聞いたことない。

また、自分の容姿を活かして愛玩奴隷として貴族の夫人に飼われたこともあったらしい。

その夫人は反対に調教されてアサの愛玩奴隷になってしまった。

最後は性に飢えている男の中に放り投げ入れて見殺しにした。

また、気に入った令嬢や子息などがいれば攫って自分好みの愛玩奴隷にしてしまう。

女とか男とかあまり関係ないらしい。

自分の欲求に抑えが効かないからその場で襲うこともしばしば。


「アサはハルにだけは手を出さなかったんじゃ。ハルも相当イカれてるからのぉ。似た者同士でアサもつまらんのじゃろう。手は出していないが話はしていてのぉ。これが過激な内容でアメリアには教えられんが。同じ思考らしい。だが、一緒に行動をしたりはしなかったの。仲がいいとも言えん。微妙な距離での。アサとハルが激突していたら闇市は崩壊していたかもしれん。そのくらいヤバイ奴だ。アメリア。よくお聞き。もし、アサに合ったら絶対目を合わせるなよ。食われるぞ」


ルン爺の目は本気だ。

本気でアサを警戒している。

全く、とんでもない奴が野放しになっている。


「アサは重罪をいくつも犯しておる。騎士団もアサが首領をしていると気がつけば本格的に動くはずじゃ。もし、上位の騎士が動くことになったらアメリアは国から出れん。その前に早く出国しなければならん。今はまだ大丈夫のようだがな。アサもセーブしているらしい。アレで」


闇市のセーブって何?

ハルのセーブは全くセーブしてなかったよ。

誰か、彼らにセーブの意味を教えておけで。

危険人物なのは分かった。

後ろにいるメアリの顔はなんとも言えない感じだ。

それはそうだろう。

ルン爺にここまで言われてしまう男だもの。

ルン爺の話はまだ続く。

本来、山賊は仲間意識が強く団体で動くものだ。

だが、元闇市の山賊なのでそんな面倒なことしないらしい。

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