第24話

「どうかしたか?ユエと一緒に寝ないのか?」


「うーん。眠くない」


「それは困った。お兄ちゃんが子守唄を歌ってあげようか?」


「馬鹿にしてる?」


「してない。小さい頃はよくやっていただろ」


「いつの頃?」


「2歳か3歳か」


「昔すぎる!」


団長はお母様の依頼をよく頼まれていた。

そこには私のお世話も含まれていた。

木の登り方や隠れんぼなど教わった。

それがただの遊びじゃなかったけど。

外で生きるための遊びだったらしい。

お母様が団長に頼んで私に教えていた。

お陰様で気配の消し方も出来るようになってしまった。

本職ほどではないけど。


「アメリア。俺が教えてたこと出来るな?ナイフは忘れるなよ」


「うん」


「宿に泊まる時は気を付けること。ハルと一緒の部屋に泊まること。嫌だろうけど一人で寝させるより安心だ」


「親みたい」


「もう親の気分だよ。こっちはオムツも交換した。俺は完全に乳母役だったね。シンディも遠慮なかったし。最初のお出かけデビューも俺がさせたし。兄以上の働きだと思うけど」


「ありがとうございました。こんなに大きく育ちました!」


「本当にそう思ってる?」


「思ってる」


クスクス笑うと団長もクスクス笑った。

団長の隣に座り足をバタつかせる。

子供のような仕草だがちょっと楽しい。


「アメリア。明日、俺たちはここを出る。次、アメリアに会う時はこの国じゃないところだからね。待ってるから。だから、無事に出国してほしい」


「………………うん。私、絶対に国から出るね。絶対に」


「次はもっと大人の女性になるといいな。まだまだ子供だからな」


「失礼だ!」


「さぁ、もうおやすみ。明日は片付けで朝が早い。俺のベッド使っていいから」


「団長が寝られないよ」


「今はロニお兄ちゃんでしょ」


「………………ロニお兄ちゃんはどこで寝るの?」


「大丈夫。俺も一緒に寝るから」


「え”っ!」


「嫌そうな顔するな。誤魔化されないぞ。寂しくて寝れなく癖に」


団長はヒョイっと私を軽々持ち上げベッドに落とす。

そして、自分もベッドに倒れ込んだ。


「ほら、風邪を引かないようにこれ掛けて。お腹出して寝るなよ」


「だからいつの話?」


「18歳か。あっという間だな。本当にこんなに大きくなって。娘の成長を見られなかったシンディが本当に可哀想だよ」


………………。

団長は優しく私の頭を撫でる。

小さい頃からこうやって寝かしつけられたっけ。

お母様が忙しくて団長がよく寝かしつけていた。

大きくて温かい手が好きだった。

なんだか、凄く安心するから。

いつの間にか眠っていたっけ。

ほら、段々と眠くなってーー………………


「おやすみ。アメリア」



ー ロニ ー


ロニはアメリアが眠ったのを確認してから入り口に立っているメアリを見た。

いつの間にかテントの中に入って来ていたらしい。


「いい夜だ。メアリ」


「はい」


「8年間だっけ?」


「はい」


「寂しくなる」


「それはロニ様も同じかと。アメリア様は本当に立派になられました。獲物を狩る時のお顔は本当に悪女そのものです」


「いや、それ全然立派じゃないな。何教えてるんだ?やめろ」


「あら?ロニ様だって人のこと言えないですよね。ちゃっかり闇市の術教えているじゃないですか。私はそれを知って驚きました」


「………………」


メアリの言ってることが図星だったのか黙ってしまった。


「変な話ですがロニ様はアメリア様の母であり父であり兄でもあります。本当にありがとうございました」


「こうやって見に来るのも最後だと思うと複雑だ。俺の可愛い妹の旅たちか」


「娘でもおかしくないですけど。というか、兄より父でしょう」


「………………」


「シンディ様から伝言を預かっております。ロニ、娘のこと見ていてくれてありがとう。私のワガママを聞いてくれてありがとう、と」


メアリは出来るだけ心を込めて言った。

ロニはなんとも言えない顔をする。


「俺は簡単には動かないよ。全く、鈍感だな」


「はっきり言わないからですよ。次はシンディ様がいる国でしたよね?しっかり言ってくださいな。見ててイライラします。もどかしいというか。あと一言ですよ。邪魔だった公爵がいないというのに。あっさり引くつもりで?元闇市がこんなで情けない」


メアリはハキハキと話した。

ロニはそんなメアリを見て深いため息をする。

そして小さな声で「簡単じゃないんだよ」と呟いた。


ー ロニ end ー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る