第22話
「初めまして。やっと会えましたね。話はよーく聞いてますよ。お父様を困らせる達人見たいね」
喧嘩を売っているのだろうかこの夫人は。
買うつもりないけれど。
「そうですか。私は一番奥の部屋で過ごしてます。一日中、読者をしていることが多くたまに屋敷から出て徘徊をします。目的は本です。本が大好きで部屋は本だらけです。私から本を取り上げることはできません。本があれば何も入りません。私には専属侍女が一人だけです。他の侍女は必要ありません。一人で全て補えますので。夜会やお茶会の参加も控えてます。こちらに住むのは誕生会が終わった後だと聞きましたけど、気にしないでこちらに住まれてはどうでしょうか?誕生祭までには正式に公爵夫人になるのですから問題ないかと思います。この屋敷もいつまでも公爵夫人がいないのは世間的にも悪いでしょうし。お父様どうでしょう?私は早くこちらに移ってもらったほうがよろしいかと思います。早く仲良くなるためにも必要だと思いますけど。あぁ、お父様が何か考えているのならいいのですが」
「いや、そう、だがな。いや、お前よく話すな。こんなに話すのは久しぶりだな」
「それは早めに移っていいということですか?」
「そうなるな」
「まぁ!それはいいことですね!ではそういうことで。顔合わせはこれで終わりですよね?私、本が読みたくてウズウズしてますの。もう抑えられません!この欲求は本で解消させなくては治まらない!あぁ!今日の本は冒険の本でして。一人の青年が海賊の捕まるのですが無事に逃げ出してお宝を見つけるという物語。もうワクワクが止まらないのです!この作者も冒険が「もういい!!!分かったから部屋に戻れ!!落ち着け!落ち着いて部屋に戻りなさい」
あら?
ちょっとやりすぎた?
チラッと夫人と兄と言われた青年を見るがどちらもポカンとした顔をしていた。
どうやらびっくりしている様子。
「では、失礼します」
よし、これで対面は終わった。
あとは引っ越し完了を見届ければいいだけだ。
応接室を出るとメアリが待っていた。
「部屋に戻るから。あと陛下に書状を出さないと」
「はい。アメリア様」
主人公を応援するような文面と私のバカさを前面に出せばいいよね。
ちょっと小説を書いてるみたいで楽しいかもしれない。
お父様には悪いけど勝手に判子借りちゃお。
自室に戻り机の引き出しにしまっているレターセットを取り出す。
「アメリア様。判子です」
「いつの間に!」
「仕事は早めにするものですよ」
メアリが何気なくポケットから取り出したのは公爵家の当主が使う正式な判子だ。
私が応接室で対面しているときに取りに行ったのだろう。
「さて、文面を考えましょう。いいですか?婚約破棄します、などは書いてはいけませんよ。仮にもアメリア様は公爵令嬢です。身分は王族が上になりますから」
「分かってる!そうならないように考えるから大丈夫。メアリも一緒に考えてね」
「はい」
最初は陛下のご機嫌取りから始まる。
あの陛下は褒められるのが大好きだ。
褒めれば調子にのる。
ルン爺はそんな陛下を呑気な王と呼んでいる。
呑気というわけではないけどね。
記録画を見ながら文書を考えること2時間。
「出来た!最高じゃない!」
「はい。これで追い込めるかと。書面を送らなくても破棄はするでしょうけどこちらは時間がございません」
「記録画を見たから確信出来たね。ンフフ」
「アメリア様。悪女の顔です」
「………………」
今度は悪女の顔なのね。
まぁいい。
紙と封筒に判子を押せば完成だ。
「メアリ。これ、お願いね」
「はい。出しておきます。それからあの本ですが。処分しておきますか?」
「お願い。じっくり燃やして」
「かしこまりました。あと、アメリア様」
「ん?」
「寝て下さいね。その目の下のクマ。なんとかして下さい」
はいはい。
分かってる。
メアリに促されてフカフカなベッドに横になる。
「おやすみなさいませ」
このドレスのままでいいのかと考えたけど、メアリが何も言わないから問題ないのだろう。
これから長い旅が始まるのだ。
今からちゃんと寝る習慣をしないと駄目だから。
目をゆっくり閉じるとすぐに眠りについた。
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