第21話
【闇市】
奴隷市場とは違った組織のこと。
奴隷制度が設立してから裏で勝手に作られた組織だ。
殺人・人攫い・用心棒・奴隷の調教・賄賂隠蔽。
危険なことをなんでも請け負う。
たまに慈善活動もしているらしいが。
大きな組織で影響力もあるため国も簡単に手が出せない。
団長はその闇市出身。
だから闇市に関することはとても詳しい。
闇市に関することを教えてくれたのも団長だ。
闇市の人は殆ど頭がイカれてる。
人を殺すことに快感を感じたり、奴隷を調教する時に興奮したり、危ないことでしか快楽を得られない者がたくさんいる。
弱者はすぐに死んで強者は生き残る世界だ。
お客で取り合いをして殺すことなどいつものこと。
一応、頭であるルン爺がいるが殺し合いを止めることはしない。
強くないと闇市では生きていけないのだ。
「今日は泊まるの?ユエは双子と一緒に遊びに行くからいないけど」
「ううん。帰る。この本も処理しないといけないから」
「それ、本当に凄いよ。本当にどうやって手に入れたんだか。騒がなかったの?」
「これは一つじゃないから。いくつかあるよ。これって、前陛下のものだから」
「………………完全に俺たちの影響だね。ルン爺に何か言われたでしょ!?」
「うーん。秘密」
「全く。困った子だね」
確かにルン爺に相談した。
そしたら、これを教えてくれた。
でも依頼はしていない。
ちゃんと私とメアリで手に入れたものだ。
ボロボロになっていたこの本をつなぎ合わせたのも私とメアリだ。
「アメリア様。そろそろここで失礼されては。公爵様がお帰りになられる時間です」
「そうだね。帰ってくる前に部屋にいないとうるさいし。団長。またね」
「あぁ、気をつけてね」
テントから出て表側に向かう。
表側に回るとまだたくさんの人がいた。
こちらも興奮が治まらないようだ。
その中には裕福な人たちもいた。
そして、その近くには愛玩奴隷が立っている。
大きな通りにはボロボロな服を着て買い物を手伝っている労働奴隷が見える。
首に鉄の首輪をつけられ逃げられないように鎖で繋げられている。
私は知っている。
奴隷は逃げるつもりなどないのだ。
逃げても生きていける保証などない。
まだ、少しでもご飯にありつける今のままがマシだと。
愛玩奴隷も同じだ。
逃げて家に帰ってもまた売られてしまう。
繰り返されるのなら逃げないほうがいい。
奴隷をたくさん見られるこの光景もあと少し。
他の国ではこのような光景はあまり見かけないという。
親を亡くした子供のために養護施設も作られ、奴隷として売られることもないらしい。
里親探しも積極的で厳しい審査を行い育ての親を探すとのこと。
本で得られる知識も大事だが自分の目で見ることも必要なことだ。
そしてそれが正しいものだと改めて認識したい。
屋敷に着くとバタバタと慌ただしいのが分かった。
「あぁ!アメリア様!全くどこに行っていたのですか!」
バルが怒りながら近づいてきた。
どうやら間に合わなかったようだ。
「いらしたの?」
「はい!急いで応接室に!」
「この姿で?」
「着替えて下さい!」
だよね。
町娘の姿で出たら怒り狂うでしょうね。
「メアリ。白のドレスにして」
「はい」
公爵夫人に敵意はないことを示さないと。
面倒だなぁ。
自室に戻るとメアリはドレッサーから白のドレスを取り出した。
早着替えもおてものだ。
私の特技の一つに早着替えを入れておこうかな。
こんなに早くドレスを着ることが出来るのは私くらいではないだろうか。
「完成です。では参りましょう」
応接室の目の前に着くとバルがドアを開けてくれた。
よし、行くか。
ゆっくり応接室に入ると黒い髪の女性と黒い髪の青年が3人掛けのソファーに座っていた。
黒い髪の女性はとても妖艶さを身に纏っている。
真っ赤な口紅ととても似合う。
身体のラインがよく分かるドレスの所為なのかとても豊満さを強調されていた。
黒い髪の青年な女性に似て丹精な顔をしているが、目はお父様に似たのか少々つり目。
「アメリア。こちらに座りなさい」
遅れたことに怒ってはいるがここでは叱るつもりがないお父様は自分の隣に座れという。
座る場所はそこしか空いてないからしょうがない。
私が座ったのを確認するとお父様が話し出した。
「こちらの女性がお前の新しい母親になるルビアだ。そしてその隣にいるのがお前の兄のエリックだ」
紹介された夫人はニコリを微笑む。
それがなんだか気持ち悪くて不気味だ。
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