第18話

聖女が死ぬと国も衰退?

聖女と国は一心同体のようだ。

なぜ、衰退してしまったのか。

そこの部分は書かれていない。

だが、聖女が行った政策は細かく書かれていた。

どこで得た知識なのかどれも成功を収めるものだ。

この歴史書を見ると相当古い時代のはず。

古い時代でこの政策を提案できる知識を得ていた。

………………。

前にも似たような歴史書を何冊か読んだことがある。

それも最後は衰退していったはず。

あっという間に隣国に吸収されたのも同じ。

やはり【アレ】だろうか。

可能性はある。

だが、確信がない。

やっぱりこの国では限界だ。

外に出て探すしかない。

この国では情報収集に問題がある。

外との繋がりが少なすぎる。

歴史書を本棚に戻し隠し部屋も元通りにした。

部屋から出るとすでに辺りは暗くなっておりかなりの時間がすぎてしまったようだ。


「アメリア様」


「メアリ。ごめん。どのくらい経った?」


「4時間ほどでしょうか」


「ごめん」


「いいえ。何人か来ましたが追い払いましたので。司書様が勝手に読書部屋にするなとお怒りでした」


「いつものこと」


来てよかった。

今日、知ったことは新たな発見でもある。

時代に合わない知識が存在する。

私はそれを見つけたい。

書庫から出ると少し冷たい空気を感じる。

この時間に王宮にいるのはあまりよろしくない。

いつものように隠し通路から帰るか。

メアリと一緒にいつものように隠し通路を使い王宮から出る。

外は暗くなっており街灯の周りにはたくさんの虫が飛び交っていた。


「馬車はすでに回しております」


「うん」


いつもの場所には馬車が止まっておりその馬車に乗り込むとゆっくり動き出した。


「どうでした?」


「同じようなものが見つかった。可能性はあるはず。あり得ないもの。古い時代にアレだけの知識を得るなんて無理。他の国と比べると明らかにおかしい」


「そうですか。やはりこの国では限界がございますね」


「早く国を出ないと。山賊が大きく動かないうちに」


「それにしてもハル様がなかなかいらっしゃいませんね。これでは話ができません」


「そのうち来るから大丈夫。ひょっこり来るはず。いつもそうだもん」


馬車は予定通り公爵の屋敷に到着。

なかなか帰らない私を心配してかバルは屋敷の入り口でずっと待っていたようだ。

いつものことなのに。

屋敷の中に入るとなんだか綺麗になっている。

どうやら大掃除中らしい。

新しい公爵夫人のために準備をしている様子。

ここも変わるのか。

壁紙も張り替えてカーテンも新しいのに交換。

お母様が好きだった絵画も取り外されて新しい絵画が飾られていた。

また、お母様お気に入りの家具も全て処分される。

この屋敷にはもうお母様の思い出はなくなってしまう。

何も残らず新しいものへと変わっていくのだ。


「寂しいものね」


「アメリア様」


「お腹空いちゃった。何か食べようかな」


「では簡単なものをお作りしましょう」


「ありがとう。出来たら部屋までお願い」


「かしこまりました」


メアリと別れて自室に向かう。

一番奥にあるからちょっと歩くのが面倒ではあるがしょうがない。

自室に着くとソファーに倒れ込み目を閉じる。

サーカスのみんながお膳立てをしてくれて、それで急接近してくれたらいいけど。

周りには大貴族と陛下に王妃もいるはず。

逃れることなど無理だ。

神官がそこにいれば尚更のこと。

王族と貴族の結婚はいろいろ面倒ばことばかり。

責任は取ってもらおうではないか。

この屋敷も着々と準備している。

そして、私の身の回りの物も。

お父様は絶対に気づいていない。

私の荷物が少なくなっていることに。

誕生会までには完了予定だ。

だらんと手を落とす。

身体が重い。

ちょっと無理しちゃったかな。

眠さには叶わないか。

次第に眠さが強くなり夢の中へと消えていった。

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